干渉
「え?零時くん居たの?」
「い、いや多分気のせいだ。見間違いだと思う。」
今一瞬少し先の通路を零時が通った様に見えた。おそらく見間違いだろう。
ドタキャンしたあいつがまさか居るはずがない。
一応、零時らしき人を見かけた通路まで行ってみたがやはり零時は居なかった。
と、そんな事をしている時間は俺達にはなかった。
時雨と共に急いで映画館へ向かう。歩いている途中で後ろから声を掛けられる。
「廻!それに時雨も!」
「え!先生。」
振り返るとそこには時間先生が居た。
そしてその傍らには小学一、二年生くらいの子供がいる。そう。時間先生の息子さんだ。
「二人で今から映画か?」
「ま、まあそんなところです。」
「転校してきたばかりの時雨に仲の良い友達が出来てよかったよ!楽しんでくるんだぞ!」
「は、はい。」
「廻もな!時雨のこと頼んだぞ!」
「た、楽しんできます・・・ありがとうございます・・・」
「じゃあ俺達は行くから!ほら!お兄ちゃん達に挨拶して!」
「お兄ちゃん!お姉ちゃんバイバイ!」
そうして時間親子は去って行った。
「まさか先生に会うとはね。お子さん可愛かったね!」
「そ、そうだな・・・」
「どうしたの廻くん?顔色悪いよ?」
「え?いや、大丈夫だ!先急ごうぜ!」
時間先生に会うと言う思わぬイベントが発生してしまったが俺達はなんとか上映時間に間に合った。
ポップコーンは食べたかったが買っている時間がもうないので俺達が観る映画のスクリーンへ向かう。
中に入ると既に大勢の人達が座っていて大きなスクリーンには映画の予告編が映し出されている。
俺達が今日観るのは小説が原作の恋愛アニメ映画である。
もちろん俺も時雨も原作は読んでおり、結末は知っているのだがアニメーションになる事により今まで自分の頭の中だけで動いていたそれぞれのキャラクターがスクリーンでどのような動きをするのかとても楽しみである。
映画館でのマナーや注意事項が終わりいよいよ映画がスタートする。
上映時間二時間程の映画はあっという間だった。そして最高だった。
作画も声優さんのお芝居も音響も全てが最高だった。
エンドロールが流れ、辺りが明るく照らされ始めた。
それぞれ映画の感想などを話しながらスクリーンを後にする人達が横切る中、俺と時雨はしばらくの間何も映し出されていないスクリーンを見つめていた。
「時雨。最高だったな。」
「うん。感動した!原作へのリスペクトも凄かった!」
このままだと永遠に映画の感想を話してしまいそうだったのでとりあえずスクリーンの外に出る事にする。
映画館には上映ギリギリに到着してしまった為、見れていなかった物販を二人で見ることにする。
パンフレットはもちろん、アクリルスタンド、ぬいぐるみ、シールやペンなどさまざまな種類のグッズが販売されている。
人気のキャラクターのグッズは既に売り切れになってしまっているものもある。
時雨と俺は何を買うか悩んだ末時雨は推しキャラのアクリルスタンドとぬいぐるみ、俺は今回観た映画のパンフレットを購入することにした。
会計を済ませて映画館を出る。
そう言えば朝ご飯を食べてから何も食べていない。時雨もお腹を空かしていることだろう。
「夕飯にはまだ早いけど何か食べるか。」
「そうしよ!私お腹ぺこぺこ!」
「映画観てる時も腹鳴ってたもんな!」
「しょうがないでしょ!お昼何も食べてなかったし!」
「ごめんごめん!じゃ食べに行こう!」
二人で話し合いショッピングモール内にあるとんかつ屋さんで食べることに決めた。
店の向かう間も映画の感想を二人で言い合い、会話が途切れることは一度もなかった。
時雨も楽しめていた様で本当によかった。
とんかつ屋さんに到着し、二人で席に着く。店内には思ったよりも人がいた。
店が混む時間になる前に夕飯を済ませようとする人が多かったのかもしれない。
二人でメニューを開きどんなものがあるのか見ていく。お腹も空いているのでどれもとても美味しそうだ。
時雨はヒレカツ定食、俺はチーズとんかつ定食に決めた。
商品が届くまで俺達は映画の感想の続きで盛り上がった。
向かいの席で本当に楽しそうに映画の感想を語る時雨を見ているとどうしても思ってしまう。伝えたくなる。
またあの時の様に二人で・・・
でもその行き着く未来があの日だと言うのなら今は時雨を守ることだけを考えなければ。
そのために俺はここへやって来たのだから。
私達が注文した商品がテーブルに到着した。
ヒレカツ定食。とっても美味しそうだ。早速ヒレカツを一口食べてみる。
お腹が空いていると言うこともあるが本当に美味しい。
廻くんと一緒に買い物したり。映画を観たり、一緒にご飯も食べれて今日は本当に幸せだった。
向かいの廻くんも美味しそうにチーズとんかつ定食を食べている。廻くんも今日は楽しむことが出来ただろうか。
時折廻くんは難しい顔をしている時があった。私がはしゃぎ過ぎていたのかもしれないが何か悩み事でもあるのだろうか。今日一日が廻くんにとって少しでも楽しい時間になっていたら嬉しい。
こんなにも幸せだとつい欲が出てしまいそうになる。でも今大切なことはそれじゃない。
今度こそ廻くんを守らなきゃいけない。私はそのために今を生きている。
「ごちそうさまでした。廻くん美味しかった?」
「めちゃ美味かった!」
お腹もいっぱいになったところで私達は帰ることにした。会計を済ませてショッピングモールの外へ出る。
駐車場にはまだまだ車がたくさん停まっている。これも今日の映画の効果なのかな。
ふわりと心地良い風が吹く。
「きゃー!!!」
誰かの悲鳴が聞こえた。声のした方に視線を向ける。私達の方へ車が直進してくる。
あまりの恐怖で体が硬直して動かない。
「時雨!!!」
廻くんが私を突き飛ばす。まずい・・・このままだと廻くんが。
なぜ今なの?今までこんな事起こらなかったのに。
ペンダントを握り、強く願う。しかしペンダントは起動しない。
また守れなかった。
鈍い音が聞こえて私の視界は闇の中へと誘われた。




