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始まり

私がマスターペンダントを完成させた数日後、私は彼女を呼び出した。


「どうしたの?こんなに夜遅くに。」


「すまない。少しだけ君と話がしたくて。」


「話?」


「そうそう。輪ちゃんは?」


「もう先に寝てるわ。」


「そっか。君に見せたいものがある。」


私はそう言って彼女に私が完成させたペンダントを渡した。


「これって・・・ペンダント?でも・・・」


彼女はとても混乱した様子だった。


「ごめんね。僕はやっぱり諦める事が出来なかったよ。」


「まさか・・・あなた!」


彼女が全てを悟った時にはもう既に遅かった。私はマスターペンダントのスペアを作っていた。


彼女を排除するための計画だ。スペアを彼女に渡し、私の持つもう片方のペンダントでスペアを遠隔操作して彼女を強制的に時間の狭間に閉じ込める計画だ。


人殺しは流石にすることは出来ない。だから実験中の不慮の事故として彼女を排除することにした。


「あなたは自分が何をしようとしているのかわかっているの?そんなことをしたら過去も未来もどうなってしまうのか。」


「僕はね琴廻さん。他の人の時間なんてどうでもいいんだ。ただ僕は針平を助けたいだけなんだ。君に出会えて本当によかった。僕に知識と技術を与えてくれて本当にありがとう。さようなら。」


「・・・」


マスターペンダントを起動させ、強く願いを込める。


すると彼女は激しい光に包まれながら私の前から姿を消した。


「きっとあなたは後悔するわ。」


そう僕に言い残して。


次に私は時雨輪が眠っている研究所の休憩部屋へ向かった。


「輪ちゃん!輪ちゃん!大変だ!」


「え?何・・・どうしたんですか?」


まだまどろみから抜け出せていない彼女に私は告げる。


「琴廻さんが、お母さんが消えた。」


「え・・・」


研究室にスタッフも集め、事の顛末を説明した。


今後は時雨琴廻を救出する為という名目でマスターペンダントのさらなる性能の向上に向けてスタッフに私の研究のサポートをお願いした。


「本当に申し訳ない。お母さんは必ず僕が助け出して見せるから。」


「どの口が・・・」


そう口にし、時雨輪は私を睨みつけ研究室を飛び出して行ってしまった。


それから彼女とは一切コンタクトを取る事が出来なくなってしまった。


あの一件から数ヶ月が経過し、その後も時雨輪が私の前に姿を見せることは無かった。


まあ、私の研究に彼女がどうしても必要だというわけでも無かったので私も気にしていなかった。


そんなある日のことだった。現在進めている研究の資料として過去にマスターペンダントの試作品のデータを入れて置いたUSBを取りに保管室を訪れた時だった。


「ん?鍵が空いている・・・閉め忘れた?」


なぜか保管室の扉が開いていたのだ。


保管室の鍵は私以外には持っている者はおらず、他のどのスタッフもここには入ることは出来ないはずだ。


嫌な予感が私の足元から這い上がる。


「やはり・・・ない。」


試作品のデータを入れていたUSBが無くなっていたのだ。


私は急いで保管室を駆け出した。すると廊下ですれ違ったスタッフに声をかけられる。


「時間先生。輪ちゃんと会えました?」


「時雨輪はここにいつ来た!」


「えっと・・・二時間くらい前ですかね。」


「やられた・・・」


私の考えが正しければ彼女達は私のこの研究にずっと前から気づいていた。


そして完成させようとしている。私が作り上げたものとは違うもう一つのマスターペンダントを。



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