予兆
「同じってどう言うこと?」
「君はこの世界の住人じゃないんだろ?それと同じってこと。それに君はあの二人の・・・」
「同じって・・・まさか、じゃあ君と私は・・・」
「いや。それは違うよ。世界線が違うから君と僕には直接的な関係はないんだ。でもこの世界の住人じゃないって事は共通してるかな。」
「私は時雨ちゃんが死んでしまうあの日を変えに来た。この世界を生きる廻君の力を借りながら彼にペンダントを渡してね。でも、今の今まで一度もうまく行ってない。必ず誰かの邪魔が入る。君はマスターペンダントを持っている様だけれど君なのかい?この一連の事件の首謀者は。」
「それは違うよ。確かに僕のこれはマスターペンダントと呼んでもいい力が備わってはいるけどね。」
そう言って零時君はポケットからペンダントを取り出して見せた。
しかしそれは私に知っているものとはまるで形が違っていた。
「それ、形が・・・」
「そうだね。君が持っているものとは少し違うかもしれないね。まあ、プロトタイプ的な感じかな。」
「なら、君の目的は何なの?」
「君と同じでこの一件の首謀者を探している。おそらくマスターペンダントを持ったものの仕業で間違い無いと思う。それを確かめに来た。ある人との約束なんだ。」
「ある人って?」
「君もよく知る人物さ。僕らにとって本当に大切な人。」
「はっきりとは教えてくれないんだね。」
「そのうち分かるよ。」
「そう。まあいいや。私と廻君は時雨ちゃん自身も何度もやり直しているんじゃないかと思ってる。時雨ちゃんは時雨ちゃんで廻君を庇って何度も犠牲になっててその時雨ちゃんを助けるために私達が動く。永遠にこの繰り返しだ。」
「おそらく相手側には時雨ちゃんが犠牲にならなければいけない何か訳があるのかもしれない。時雨ちゃん自身がマスターペンダントを持っているとは考え難いけど確かめる必要はあるだろうね。僕も君と同じで二人を助けたい。そのために動くよ。」
「分かった。何があるか分からない。私達も注意しながら動こう。」
「そうだね。何か分かったらまた話そう。」
そう言って零時君は私の前から去っていった。
私は周りに注意を向けながら二人の後をまた着いていく。すると二人は立ち止まりとある親子と何か話し始めた。
よく見るとそれは私達のクラスの担任の時間先生だった。
「子供いたんだ・・・」
何だか先生と話している廻君の顔色がみるみる悪くなっている。どうしたのだろう?
しばらくして話が終わったらしく各々別々の方向へ向かって歩き出した。私も後を追う。
私の方向へ向かって歩いてくる時間先生とすれ違う。
見えているはずはないのに謎の緊張感がある。
「ねえ。君。」
「え・・・」
足が止まる。私に向かって話しかけた?
いや。見えているはずがない。だってもし見えているのだとしたら・・・
「そうそう。君に話しかけているよ。黒野すずかさん。」
「え、な、何で・・・」
「その反応、君達で間違いなさそうだね。あの工藤零時君って子もそうなのかい?」
「な、何を言っているんですか・・・」
「まあいいよ。邪魔はさせないから。」
時間先生が去って行った後も心臓の鼓動が治らない。変な汗まで出てきている。
そんな。どう言うこと?
私の事が見えていた。あの人がこの一件の黒幕?
だとしたらかなりまずい展開なんじゃ・・・
零時君と合流して今の状況を共有したいが彼の連絡先を私は知らない。
とりあえず急いで前を歩く廻君と時雨ちゃんの後を追う。
どうやら二人はそのまま映画館に入るようだ。映画が始まればしばらく二人は出てこない。
そのうちに零時君と合流しなければ。
嫌な予感が纏わりついて離れない。何か今までとは違う方向に事が動き出す、そんな気配を私は感じていた。




