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人の声がする。
とみさんかな。
起きなくちゃ と思うのに
目が開かない。
まぶたが重い。
手が重い。
脚が重い。
このだるさは何だろう?
「・・・・!!」
遠くで誰かの怒鳴り声。
とみさんじゃないの?
息苦しいし、のども痛い。
下手すると心臓も止まりそう。
なによ。
ついてないなぁ
私、ひどい風邪でもひいたかな。
「・・!?・・がうじゃないか。」
あれ?
遠くにあった声が急にクリアに聞こえるようになった。
何?
だれ?
「あなたはこんなこと言わなかった。」
「 」
「もう3日間眠りについたままだ。」
「 」
「・・そんなこと知りたいんじゃない!」
男の人だ。
誰かと話しているみたいだけど、へんなの。
片方の声しか聞き取れない。
眠ってるって私のこと?
「わかった。もう、いい。出てってくれ。」
「 」
「わかってる。ああ、とにかく今は二人にしてほしい。」
なによ。
誰。
わたるととみさんは?
人が近づいてくる気配
ああ、もしかしてこれはやばいんじゃない?
私、どこにいるの。
なんでこんなに苦しいの。
気配はもう間近。
誰かのため息が聞こえる。
やだ、やだやだ。
怖い。
どうして?身体が動かないよ
こないでよ、怖い。
苦しい。
「・・ヒュッっ」
やだ。
息ってどうやって吸うの・・・
「ーヒュっ・・ハッー・・・ッ」
苦しい、くるしい、くるしい苦しい!!
「ぅ・・ぁっ・・」
やだ、助けて!
誰か
・・・わたる??
「・・・ひめ!?姫!!」
誰かの叫び声。
ぎゅっと手を握られた。
「・・っく・・!ひゃくっ・・・。ひゅっ・・・ひゃっく・・。」
絞められていた首が急に開放されたかのように、あえぐような私の呼吸。
徐々にしゃっくりに変わっていく。
握られたままの右手は温かい。
自然に肺に空気が流れてくるようになる。
「・・・っ・・・。・・っすぅ~・・!ふぅ~・・~・。」
だいぶ落ち着いたところで、ゆっくりと重たい瞼を開ける。
そして、目に入ってきた部屋の様子にのん気に感動した。
・・うわぁ。たっかいなぁー・・
二階建ての吹き抜けのような高さの天井に大きな天窓が1つ。
外が雨降りなのか、しとしと雫が落ちては流れていく。
湿った空気は心地いい。
もう一度そっと瞼を閉じ、深呼吸をひとつする。
それにしても・・あー・・死ぬかと思った。
ゆっくり目を開け、握られた手を見るために少し頭を右に向ける。
と、頭を揺らした途端、激しいめまいに襲われた。
世界が まわる
ぐるぐる ぐらぐら
揺れて 揺れて
ぐるぐる ぐらぐら・・・
ぅ、気持ちわるいー
のどの奥に酸っぱいものを感じ、思わず目をつぶると
そのまま意識が遠のきそうになる。
えーなによーぅ
わたし、どうしちゃったのよー・・・
すぐ近くで誰かの声がしたけど、聞き取れないまま
あの暗闇に再び沈んでしまった。