13
伝う、涙。
皆が欲する涙。
どうしたら、神の許しのもとそれを手に入れることができるのか。
力や権力をかさにしたとて、手に入るものではない。
では、愛し子様のご機嫌をとるか。
慈悲を請うか。
代価となるものを差し出すか。
先代の愛し子が亡くなったのはおよそ100年前。
故に、神の愛し子は語り継がれるだけの存在であった宝物。
16年前。
突然、現れた姫の存在に
皆が混乱した。
王の娘として受け入れられた、まだ幼かった姫。
その愛らしさに人々は魅了された。
誰からも愛され、望まれ、敬われた。
けれど
誰一人として
口では褒めはやしても、幼い姫の頭をなでてはやらなかった。
その涙は欲しても、泣いてる姿を認めて 抱き上げてはやらなかった。
ぬくもりを捜し求める手を、その小さな手をつかんでやる者はなかった。
姫がどんなに親しみを込めて微笑んでも、人々は一線を引く。
あれは人であって、人ではない。
決して人のものにはならない神の宝物。
それが
フレア姫
「・・・貴方の涙を見たのは何年ぶりだろう。」
そっと近づき、ヴェールをはずす。
その安らかな寝顔に安堵する。
手袋をはめたまま、その頬に触れ、涙を拭う。
ジジッと涙で濡れた手袋が焦げ、細い煙を上げる。
許しなく涙に触れると火の女神のお怒りに触れる。
「涙を拭ってやることも、許されない・・・。」
スッと手を引き手袋をはずす。
それを床に落とすとそのまま静かに炎を上げ灰も残さず消えた。
姫はわずかに眉を寄せるが目覚めることなく、安らかな寝息をたてている。
己の中にあるのは、姫への想いだけ。
欲するものは、姫の笑顔だけ。
そして、己の願い全てを奪う、火の女神への憎しみだけ・・・
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