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あきら

あきら

ぼくのあきら


きみのいる世界を

雨でつつむから


どうか


心配して 泣かないで

不安に駆られて 逃げないで



あきら

あきら

ぼくはここにいる


大好きだよ

愛してると


きみに伝えたい

雨音だけじゃ足りない言葉


だから


どうか お願い 


ぼくを忘れないで 待っていて











━━━



フィルが去った後二人の黒い人が来た。

医師と薬師だという彼らは白衣ではなく、教会のシスターのような黒い衣を着ていた。

双子のようにそっくりでどちらがどちらなのか見分けがつかない。


診察は妙なものだった。

直接肌には触れないため、黒い手袋をはめた彼らは布越しに不確かな脈を測っただけ。

儀式までは(だからなんの儀式??)ナツメ以外の人にヴェールをはずして顔をさらしてはいけないらしく、顔色も白い布越しに確認。


問診は意思表示をあまりしてはいけないといわれていたので、私はうなずきもせず前を見つめ続け、すべてナツメが答えていた。


どこからどう判断したのか、彼らは私を軽度の栄養失調状態と診断し、栄養価の高い食事を摂るようナツメへ伝えていた。


礼をして下がっていく彼らに一応お礼を言いたくて、ナツメに「ごくろうさま」(もっとえらそうな言い方してたけど)とだけ言ってもらった。

言葉をかけるのはフレアらしくなかったのか、ぎょっとした後ぎこちない笑顔を返し再び礼をして部屋を出ていった。彼らを見て、最後まで無口を通せばよかったかも。と軽く後悔もした。



「ナツメ・・・もう戻って良いよね。」

ぴんと伸ばした背筋も、表情を作らない顔の表情筋も、だいぶ引きつってきてる。

見上げた先でナツメがうなずくのを見て、全神経の緊張を解く。


「身体はフレア姫なんだからこんなに疲れなくても良いのにねぇ。使う筋肉間違えてんのかなぁ。」

両腕を上にひっぱりあげ伸びをする。

次いで、座りっぱなしの腰も痛いので、ベッド脇に足をおろし、立ったついでに腰に手を当て身体を後ろへ反らす。


冷めた視線を感じるが、気づかないふりをする。

姫様だってストレッチくらいするでしょう?



そうして、ある程度からだの強張りが解けたところで再びベッド脇に腰を下ろす。


目が覚めてからまだ数時間だというのに、空はもう薄暗い。


この騎士様は何をどこまでご存知なのか。

徹夜になろうがなんだろが、しっかり話してもらわなければ


無表情であったり、冷たい視線であったりするのは私に対して。

優しい顔で微笑んだり、切ない顔で見つめたり、温かみのある表情をするのはフレア姫に対して。

どんな人かはよくわからないけど、これはきっとあっていると思う。


無言でわたしを視ている。

それは一見監視者のよう。けれど、瞳の奥には熱い想いが秘められている。


器用な顔ができるのね

少し可笑しくて、口の端が上がる。


自分の準備は整った。


さて


「あなたは私を知ってるの?」




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