1/19
序章
雨が好き。しとしと優しい音で包んでくれる雨が好き。
夕暮れの空気が好き。少しひんやり流れる空気が好き。
月のない夜空が好き。星がきらきら煌めく夜空が好き。
眠りにつく瞬間が好き。うとうと夢うつつでいられる瞬間が好き。
秋が好き。なんだか幸せで切ないような気持ちになれるような秋が好き。
お風呂が好き。散歩が好き。紅茶が好き。
犬が好き。チョコレートが好き。
バスケが好き。歌が好き。苺が好き。
水色が好き。
家族が好き。彼が好き。友達が好き・・・
世の中好きなものであふれてる。
まだ20歳前の、私の生きている世界では、好きというのはただそれだけで嬉しいものだった。
ドキドキした。わくわくした。
けれど10代最後の日、好きなのにただせつなくて、辛くて苦しくて、どうにもならない気持ちがあるのだと、私は知ることになる。
息ができなくなるくらい切ないのに、涙をどれほど流してもどうにもならないのに、どこか暖かくて幸せで、やっぱり嬉しいもの。
そんな気持ちがあるのだと、知ることになる。
それは好きとは違うー・・・
(あなたを愛してる・・・)