第4話 健、風邪をひく
珍しく健がダウンした。
朝から声がガラガラで、顔も赤い。
「今日は寝ててね」
「うん……でもお弁当は——」
「作らなくていいから! 寝てて!」
専業主夫業も、たまには休んでほしい。
私は朝食を軽く用意して出社した。
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しかし、昼休み。スマホに通知が入る。
【玄関に弁当置いといた】
……は?
マンションの防犯カメラを確認したら、マスク・マフラー・帽子の完全防備姿の健が映っていた。
まるで銀行強盗のような格好で、玄関前に小さな保温バッグをそっと置く姿……いや、笑ってしまう。
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昼食タイム、恐る恐る中身を確認すると、
おかゆ・煮卵・小松菜のおひたし——全部、私の好物。
しかもメモが入っていた。
【食べ終わったらちゃんと歯磨きしてね。午後眠くならないように】
……この人、風邪ひいてるのに、なぜ私の午後の眠気対策まで考えてるの。
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夕方帰宅すると、健はベッドで寝ていた。
しかし枕元には、私の明日の朝食用の仕込み(パン生地発酵中)が。
もう、病人なんだから自分の心配して。
「健、ほんとに無理しないでよ」
「……でも、由紀が笑ってると早く治る気がする」
……不覚にも、ちょっとキュンとした。
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翌朝、健は少し回復していた。
しかしキッチンには、すでに私の朝ごはんプレートが完成していて——
パンの表面に、チョコペンでこう書かれていた。
【風邪より君のことが心配】
……はいはい、知ってます。
でも次は、風邪ひいても寝ててください。