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足が真珠になった

作者: 漣猗

昔の短編小説ってこういう感じの多かったよね、と思いながら。

 足が真珠になった。


 数珠繋ぎではうまく歩けなくて、いや繋いでいる線はなんだよと思って、考えるのが怖くなった。

 蛸のように床を滑る。2本だとバランスが悪くて常にS字をキープしなければならない。視界がものすごく低い。物が取りにくい。

 車椅子というテもあるけど、いや動けるしな……お金もかかるしな……と無精して今を過ごす。


 人前にはこうなってから出たことがない。元々在宅ワークだったし、何はともあれネットがある。置き配もできるため、見られなくて済むのがありがたい。

 実際ほとんど生活的には変わらない。椅子が増えたくらいか。

 取りたい物が多い食器棚とか、箪笥の上の方を開けるため。腕の力も必要だけど、意外と絡み付けばいけるもので。

 物干しと洗濯機の前にも一つずつ。ドラム式にしたらいいんだろうけど、まだ現役だし、買い替えはネットでできても設置と廃棄がね。それだったら椅子買うよね。


 はぁ、しかし。親にも言ってないけど、本当どうしようかね。


 ビールを片手に、金額に換算したらかなりヤバい値段がつきそうな足を見やる。死んだら遺産になるな。ありがたいな。いや、死んでもちゃんと残るのかな。中までちゃんと真珠なんだろうか。確認しといた方がいいような、切ってしまったら価値が無くなってしまうからよくなさそうな。

 火葬する前には、切ってもらわないと。遺言状は弁護士に頼まなくちゃなんだっけか。

 足先をゆらゆらと動かしてきらめきを眺める。綺麗だ。変わってしまって不便はあるけれど、綺麗であったことは救いかもしれない。少なくとも、自分にとっては好きな輝きである。これが宝石とかとんと興味ない人だったらまた違うだろうから、変化先が真珠だったことは良かったのかもしれない。


 段々、腕が普通の腕なのが変に思えてきた。なぜ足だけが変わったのか。

 これからまた突然、どこかが真珠になるんだろうか。

 ずっと一生、このままなんだろうか。


 何の前触れもなく突然真珠に変わったんだから、全く別のものになる可能性だってなくはないんだよね。

 それこそ明日にはキャベツになっているかもしれない。

 できれば歩けそうなやつがいいな。そこそこ太くて……大根? と考えて、笑ってしまった。

 笑えるから、まぁ、大丈夫でしょう。


 それでもほんのり、明日の朝には元の足に戻っていることを願って、眠りにつく。

 カーテンの向こうで、真珠(もしくは大根)色の月が光っていた。

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