「もっともっと友達になりたいの!」でお願いします!
同じ高校に通うミキヒコ先輩(高2)とハナちゃん(高1)は付き合っています。そんな2人は演劇部員。ミキヒコ先輩は淡白で、ハナちゃんはそれが少し不満。ミキヒコ先輩から、もっとたくさん甘い言葉をかけてほしいハナちゃん。そこで、ハナちゃんは、思いつきます。ラブラブな台本を読み合わせに使おう!
演劇部員にとって、読み合わせは、大切な稽古です。読み合わせとは、台本に書かれているセリフを、声に出して読んでみる稽古です。ただ声に出すだけでなく、感情を込めて読みます。ドキドキする台本を、ミキヒコ先輩と、いっぱい読み合わせしたい!照れたら負け!のルールで勝負です。
今回、ハナちゃんが選んだのは『一週間フレンズ。』(アニメ版/エピソード12/友達になってください。)のようだ。1週間で、友達との記憶だけを無くしてしまう記憶障がいと生きるヒロインをめぐる切ない物語だ。
高校2年生のヒーロー長谷祐樹は、いつも一人きりでいるクラスメイト、ヒロイン藤宮香織と仲良くなりたい。しかし、彼女はそれを拒む。
なぜなら、ヒロインは、友達との記憶のみを、毎週、失ってしまうからだ。家族や友達でない人の記憶は残る。ヒロインと仲良くなりたいと願う人の記憶だけが、失われる。
それでもヒーロー長谷は、ひたむきに、ヒロインとの関係を築こうとする。積み上げた記憶が毎週リセットされ続ける苦しみが、いちいち切ない。
ヒーローの提案により、ヒロインは日記をつけはじめる。ヒロインは、記憶がリセットされるたびに、その日記を読んで、失われてしまった記憶を、日記に書かれている記録で補おうとする。記憶を、記録で。
台本として切り取るシーンは、ちょっとはやい初詣(年末)のシーン。人のいない小さな神社に参拝したところで、ヒロインが、あふれる想いを告白する。
「今日のこと、忘れたくないな。長谷くんと今日、一緒に過ごした時間を、全部、覚えていたい。どんな小さなことだって、全部。でも、長谷くんと友達じゃないのは、もっと嫌なの。もしもそんな日が来て、長谷くんのことを覚えていられるようになったとしても、私、そんなの嬉しくない。だって、もっと前みたいに話しがしたい!もっと今日みたいに、たくさん会って話したい!長谷くんと、もっともっと友達になりたいの!」(泣きながら)
ヒーローに関する記憶は、友達になることをやめれば、残る。しかしヒロインにとっては、ヒーローの記憶を残すことが真の望みなのではない。たとえ記憶が失われても、永遠に何度でも、ヒーローとの関係性を築いていきたい。
記憶はデータだ。しかし、永遠に関係性を築いていきたいという気持ちは、愛にほかならない。
「友達になりたい」という言葉は、本来であれば、恋愛における、はじめの一歩にすぎない。しかしその言葉を「あなたのことを愛しています」という意味で使う。それが本作の力だと思う。
何度でも「友達になってください」と繰り返す。そんな愛の表現がある。ただ、ずっと一緒にいたいと願うことが、こんなに大切なことなのだ。
「今日のこと、忘れたくないな。先輩と今日、一緒に過ごした時間を、全部、覚えていたい。どんな小さなことだって、全部。でも、先輩と友達じゃないのは、もっと嫌なの。もしもそんな日が来て、先輩のことを覚えていられるようになったとしても、私、そんなの嬉しくない。だって、もっと前みたいに話しがしたい!もっと今日みたいに、たくさん会って話したい!先輩と、もっともっと友達になりたいの!」(泣きながら)
「ダメだ、ハナちゃん、これ、逆に照れるわ!」(顔真っ赤)
「ウェーイ、私の勝ち!負けたほうが、なんでもいうこときくルールですからね!」
「はいはい」
「じゃあ・・・私と一緒に、Nintendo Switchで、遊んでください!」
「え、意外」
「なんで?なんでですか?」
「ハナちゃん、もっと、過激な要求してきそうだったから・・・」
「こうして、先輩と恋人になって・・・『ぎこちないキス』(月がきれい)とかも、できるようになりました」
「はい」(また顔真っ赤)
「でも、だからこそ・・・恋人としては進んでも、友達としてはどうなのかなって・・・」
「え」
「恋愛面は、大満足です。でも、友情面は、まだまだ開発できると思ってます」
「な、なるほど」
「だって先輩。結婚したら、恋人としての時間よりも、友達としての時間のほうが、きっと長くなります」
「うん」
「いまから、ちゃんと、友達としても、親友になっていきたいです」
「・・・うん」(泣いてる)
「あー、先輩、泣いてるー」