暗躍と仲間と
「んっ…ふぁぁ…もう朝か…」
最初に起きたのはクーゲルだった。昨日の事を頭の中で整理しつつ、布団から起き上がる。隣を見るとぷにゅりんは気持ちよさそうに寝ており、ドロヒューはすっかり落ち着いて眠っていた。
「神魔宝軍の十五魔将か…テルカガチはオメガアーマーも居るって言ってたな…。」
クーゲルは難しい顔をし、ポツリと呟く。
「残りの13人はどんなモンスターなんだろう…。相手によってはとんでもない事になるかもしれない…。」
不安になるクーゲル…一方その頃、はるか遠くの大陸にある山脈にてそびえ立つ黄金の城があった。
「ソレハ本当カ…?」
杖を持ったローブのモンスターはそう言って…十五魔将を見つめていた。
「我等ノ邪魔ヲスル愚カ者ガ現レタト言ウノカ?」
「はい。デストローム様。ドロヒューなる者が私達の邪魔をしております…。」
テルカガチはローブのモンスター…デストロームにそう言い、跪いた。…クーゲルの事は黙りながら。
「我輩ら神魔宝軍の邪魔をするなど許せんのである!この〔ゴールドゴーレム〕が叩きのめしてやるのである!デストローム様!我輩に行く許可を!」
「いや、このワタクシ…〔マスタードラグナ〕が消し飛ばしてやりましょう。デストローム様!ここはワタクシに出撃許可を!」
「落チ着クノダ。ソンナ急ガナクトモ大丈夫ダロウ。」
「し…しかし…」
「大丈夫であるか…?」
「デストローム様が大丈夫と言っているのだ。私達はあのお方の指示に従うのみ…そうだろう?」
テルカガチは焦るゴールドゴーレムとマスタードラグナに冷たく刺さるような声で制止した。
「くっ…申し訳ありません。」
「テルカガチの言う通りであるな。我輩達はデストローム様に従うのみである…。」
テルカガチは再びデストロームの方を向くと、頭を下げた。
「兎モ角テルカガチヨ…ゴ苦労ダッタナ。邪魔者ヲ調ベ、我ニ伝エル…流石十五魔将のNo.2ダ。」
「…勿体ないお言葉です。」
「ダガ、コノママ放ッテオクト脅威ニ成ルカモ知レヌ。」
デストロームは少しの間考え、マスクを被った黒い竜を指さした。
「十五魔将No.15!〔シャプカ〕!邪魔者ヲ倒シテ来イ。」
「はっ…。デストローム様。この私にお任せください。」
「期待シテイルゾ。」
「成功した暁には、私の大好きなお菓子の詰め合わせを頂きたい。」
「フッ…良イダロウ。」
シャプカと名乗る十五魔将の一人が、暗躍しようとしている事にクーゲル達は気づかなかった。
一方宿では、クーゲルと起きたぷにゅりんと目を覚ましたドロヒューが、オカミの用意した朝食を食べながら色々な話をしていた。
「…なるほどね。あの時うずくまったのは目の前で滅ぼされる光景を思い出したからだったんだね…。」
「うん…。怖かった…辛かった…あの光景が目に焼き付いたまま、僕も命と記憶を奪われて…」
「辛かったぷにゅね…思わずオレも泣きたくなったぷにゅよ…。」
悲しい空気に包まれた宿で、オカミは3人に問いかけた。
「それで3人共…この宿を出たらどうするんだい?」
クーゲルはハッとして、うーん…と、考え込んだ。そして、良いことを思いついたと言わんばかりにドロヒューの方を向いた。
「良かったらドロヒュー…ボクらの旅についてこない?」
「えっ?…でも、僕が居たら神魔宝軍と戦う事になるかもしれないんだよ…?」
「その時は守るよ。ボクは騎士だからね!」
クーゲルは自信満々に胸を叩き、えっへん!…とまで言った。
「クーゲルは頼もしいぷにゅよ。10歳だけどね。」
ぷにゅりんはそう言ってドロヒューの手を掴み、こう言った。
「一緒に戦うぷにゅよ。オレらはもう仲間だぷにゅ!」
ドロヒューはその言葉を聞き、また何かを思い出した。そして涙を流した。
「ありがとう二人共…!僕達は仲間…。うん!仲間だ!これからよろしくね!」
二人は笑顔でドロヒューの手を取った。するとオカミがどこかへ行き、しばらくして1枚の紙を持って戻ってきた。
「アナタ達!これを持っていきな!」
そう言ってオカミはクーゲルの手にその紙を渡した。
「これは?」
「私の紹介状さ。これを森を抜けてしばらくした所にある街の門を守る兵士に見せてみな。通行料無しで街に入れるからね。」
「オカミさんって何者ぷにゅ…?」
そんなやり取りをしながら、3人は朝食を完食し、宿を出た。
「いつでもこの宿に来て良いからね。もちろんお代はいらないよ。」
「オカミさん…ありがとう!」
「またくるぷにゅー!」
「お世話になりました…」
クーゲル達は新たな仲間のドロヒューと共に森を抜ける為に歩みだした。彼らはこれからの苦難をどう切り抜けていくのか…。