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泣虫亡霊の失物探し

クーゲルとぷにゅりんは森の中を歩きながお互いの身の上話をしていた。


「…それでね、ボクはこんな身体なんだけど、10歳なんだよ〜。」


「へぇ〜…10歳…えっ10歳!?その姿で?マジぷにゅ…?人は見かけによらないとは言うけどまさかそこまでとは…」


クーゲルの実年齢を聞いたぷにゅりんは驚きが隠せなかった。


「10歳でアントビートルを倒せるって…若いのにすごいぷにゅねぇ…。」


「ボクが凄いんじゃないよ。このヘルムが凄いんだ!まさかこのヘルムを被ったらこんな姿になるだなんて…って、何か聞こえない?」


「そういえばあっちの方から子供の泣き声のようなものが…」


クーゲルとぷにゅりんは森の奥から聞こえる泣き声に気づき、心配しながら進んでいった。


草や木の根をかき分けて進んでいると、泉のほとりですすり泣く白い影の姿があった。


「ぐすっ…うぅ…」


すすり泣く白い影を目を凝らして見てみると、それは大粒の涙を流したオバケのモンスターだった。


「どうしたの?そんなに泣いて…」


クーゲルが近づいてそう尋ねると、オバケのモンスターは涙を流しながらクーゲルに話した。


「探し物を探してるの…とっても大切なものを…」


「何を探してるぷにゅ?」


「わからない…思い出せないけど…大切なものなの…。」


オバケのモンスターはそう言ってまたメソメソとすすり泣いた。ぷにゅりんは困った顔をしながらクーゲルに話しかける。


「どうするぷにゅ…?思い出せないなら探しようがないぷにゅよ。」


「でもこのまま放っておくと可哀想だね…。…よし!決めた!」


クーゲルは何かを決意し、オバケのモンスターへ向かっていった。


「ボク達が探し物を一緒に探すよ!よければ名前を教えてくれない?」


オバケのモンスターはメソメソしながらもクーゲルの方を向いた。


「僕はドロヒュー…いいの?一緒に探してくれるの…?」


「もちろん!ドロヒューにとっては大切なものなんでしょ?それに、困ってるモンスターや亜人は放っておけないからね!」


クーゲルは笑顔でそう言った。ぷにゅりんも頷き、ドロヒューの探し物を一緒に探す事になった。


泉の周りや木の裏、茂みをくまなく探すもドロヒューの探し物は中々見つからない。


「ねぇドロヒュー…思い出せないと言ってたけど、具体的な形とか、どんな色だったとかはわかるぷにゅ?」


「形はわからないけど…色は赤くてぴかぴかしてたのを覚えてるの…。」


「赤くてぴかぴか…この情報を頼りに探そう!」


二人はさらに森の奥へ歩もうとする中、ぷにゅりんはのどが渇いたと思って泉の水を汲んでいた。そして二人が森の奥に向かおうとする姿を見て、慌てて飛び跳ねてついていった。


3人は森のさらに奥へ進んでいった。木々が生い茂り、どんどん暗くなっていく。何処かから見られてるかのような気配も感じる。


「ぷにゅ…怖いぷにゅね…。流石にここまで来た事は無かったぷにゅよ。」


「暗くて不気味だけど、この暗さならぴかぴかした探し物も見つかりやすいかも。それに、ぷにゅりんはボクが守るからね!」


クーゲルは怯えるぷにゅりんを優しく抱え、周囲を見回しながら進んでいく。すると、ドロヒューが何かを見つけた。


「あれ…赤くてぴかぴかしてる…もしかしたら…!」


「「!!」」


クーゲルとぷにゅりんはドロヒューの見つめる方向を見つめ、ゆっくり歩いて近づいた。


「すごく綺麗…!これがドロヒューの探し物?」


「これかもしれな…」


そうドロヒューが言いかけた時、空から巨大なドラゴンが降りてきた。


「グォォォォッ!何者だ!?」


「ボクらはこの子の探し物を探してるんだ。その赤いぴかぴかした物、それが探し物かもしれないんだ。どうか譲ってくれない?」


クーゲルはドラゴンに頼みこんだ。しかし、ドラゴンはその頼みを断った。


「嫌だねっ!ここはおれさまの縄張りだ。おれさまの縄張りにある物はぜ〜んぶおれさまの物だ!」


「なんて酷い理屈ぷにゅ!でもおかしいぷにゅね…このドラゴン…「アルドラウネ」は縄張りを本来持たないモンスターのハズ…」


ぷにゅりんは不思議に思いながら考え込んでいたその時、アルドラウネは怒鳴った。


「うるせぇ!なんと言われようが、ここはおれさまの縄張りなんだよ!どっか行けよ!」


「お願い…返してほしい…僕の大切なものを…」


ドロヒューがさらに大粒の涙を流し、アルドラウネはそれを見て何かを考え込んだ。


「…よし、それならおれさまに勝つ事ができたらこれをくれてやるよ!3人まとめてかかってこい!」


アルドラウネはそう言って…戦闘態勢をとる。クーゲルとぷにゅりんも戦闘態勢をとるが、ドロヒューはあわあわとしていた。


「いくぞー!」


「ぷっきゅー!」


クーゲルとぷにゅりんはアルドラウネに向かっていく。負けじとアルドラウネも二人に向かっていった。


「すぐに終わらせてやるよ!!」


アルドラウネは素早く引っ掻くが、クーゲルの鎧と盾に簡単に攻撃を弾かれた。


「かってぇ!何だよソレ!?」


思わず困惑するアルドラウネをよそに、クーゲルはぷにゅりんに指示を出す。


「ぷにゅりん!ボクが惹きつけるから攻撃をお願いね!」


「任されたぷにゅー!」


頭部の葉を回転させてぷにゅりんは空へ飛び上がった。クーゲルは盾を構えてアルドラウネに向かっていく。


「ちいっ…お前の鎧は硬ぇが、流石にこれは防げねぇだろうな!」


そう言うとアルドラウネは翼を羽ばたかせて大量の花粉を飛ばしてきた。


「うわぁっ!なんだこれ…くしゅんっ!前が見えないよっ…くしゅんっ!」


「ハッハッハ!おれさまの花粉で何もできないだろ?5種の粉をブレンドしたおれさま特製の毒花粉を!」


クーゲルは目の痒みとくしゃみに苦しんでいる隙を突かれ、尻尾で弾き飛ばされてしまった。


「さぁてあと二人だな…どこにいるんだ…」


「ぷっきゅぅー!!!」


空から頭を下にしてぷにゅりんが急速落下していた。


ゴチンッ!


「ぐぁぁぁぁっ!いってぇぇぇぇぇ!」


「どーだぷにゅ!オレのカサの威力は!かなりの高度まで飛んでたからすごく痛いぷにゅ?」


とてつもない衝撃に苦しむアルドラウネ。そこからぷにゅりんはクーゲルに汲んでおいた泉の水を思いっきりかけた。


「…あれ?目が痒くない!くしゃみも出てこない!」


「バカな!その水はもしやあの泉の…!」


アルドラウネは何かを知っているようだった。


「その水はおれさまがかつて襲撃した泉の水だな!?あの時確かに泉を毒で枯らしたのに…!」


「どうしてそんな事をしたんだ!その泉に暮らす生き物だって居たはずなのに…」


クーゲルはそう言いながら武器を構え直す。


「黙れ!あの泉があるとおれさまの毒が中和されて使えなくなるからだよ!」


アルドラウネは逆上して飛びかかってきた。…クーゲルではなく、ぷにゅりん。


「ぷきゅっ!」


「コイツがどうなってもいいのか!?おれさまにやられればコイツを離してやるよ。」


なんとアルドラウネはぷにゅりんを人質にとり、事を有利に進めようとしてきたのだ。クーゲルは攻撃する事ができず、アルドラウネの猛攻を耐える他無かった。


「くっ…!」


「オラオラ!そのままやられてしまえ!」


物陰に隠れていたドロヒューは、震えていた。


「どうしよう…二人を助けなきゃ…でも、僕が行った所で…」


ドロヒューは涙を流しながら隠れていたが、頭をふるふると震わせて決心した。


「僕が助けなきゃ!二人を助けて…大切なものを取り返す!」


ドロヒューは物陰から飛び出してアルドラウネに叫んだ。


「二人に手を出すな!くらえっ!ヒュードロ夜行!!」


その時、ドロヒューの涙が無数の人魂の形になり、アルドラウネに飛んでいった。


「ギャアアアアッ!身体が苦しいーッ!離れやがれ!この!」


アルドラウネがもがいてる隙にぷにゅりんを救出したドロヒュー。涙の人魂はアルドラウネを休ませる事無くまとわりついている。


「クーゲル…!今がチャンスだよ…!」


ドロヒューはぷにゅりんを降ろし、クーゲルと並んで戦闘態勢をとった。


「皆!行くよ!ボクに続けー!」


「リーフスピンだぷにゅー!」


「ヒュードロ夜行!!」


稲光をまとった武器を構えて走り出し、クーゲルの背に強力な追い風を当て、涙の人魂が稲光に混じって武器に宿る。


「このっ!…やっと離れたぜ…って、うぉぉぉっ!?」


なんとアルドラウネの前にライトニングシュナイダー(ヒュードロ夜行ブースト)を今にも放とうとするクーゲルが居たのだ。


「まて!やめろ!おれさまに手を出すな!」


「ライトニング…」


「落ち着け!な?な?さっきの事はあやま…」


「シュナイダーッ!!」


クーゲルの友情の一振りがアルドラウネを切り裂いた。


「ギャアアアアッ!!!!」


アルドラウネは真っ二つとなり、消滅した。クーゲルは武器をしまい、アルドラウネが落とした赤いぴかぴかした物を拾い、ドロヒューに渡した。


「ありがとう二人共…」


「それで…その赤い物をどうするんだぷにゅ?」


ぷにゅりんが聞くと、こうするんだよっ。…と言いながらドロヒューは赤いぴかぴかした物を胸に押し当てた。


すると、ドロヒューの身体が輝き出した。そしてドロヒューはさらに大粒の涙を流し始め、ポツリとつぶやいた。


「…思い出した。全て。どうして忘れていたんだろう。」


「ど…どうしたの?」


クーゲルはドロヒューに向かって心配そうに声をかけた。


「僕が失くした探し物は…僕の記憶。忘れたくなかった大切なもの…。」


ドロヒューはポツポツと思い出した事を話し始めた。


「生前の僕は小さな村の一人の子供だった。とても幸せに毎日過ごしていた。…あいつらが来るまでは。」


「あいつら…ぷにゅ?」


「そう。あいつらは自らの事を❲神魔宝軍(しんまほうぐん)❳と名乗っていた…。」


「神魔宝軍…」


ドロヒューは涙を流し、続きを語った。


「神魔宝軍の目的はただ一つ。僕らの記憶、命、何もかもをお宝に変えることだったんだ…。僕はそうして命を落とし、大切なもの…記憶と命を失ってオバケになったんだ。」


「もしかして神魔宝軍に変えられた記憶や命はあのようにぴかぴかした宝石のようになるの?」


クーゲルが尋ねるとドロヒューはこくんっと頷いた。


「そして何よりも恐ろしいのは、神魔宝軍は集めた記憶と命を魔獣に献上するのが目的なんだって…。魔獣の名前は分からないけど、恐ろしいものなんだろうね…。」


ドロヒューは悲しそうな顔をしたが、すぐに顔を上げた。


「クーゲル…ぷにゅりん。僕決めたよ。記憶を取り戻したから、神魔宝軍と戦う。だからここでお別れだ。」


「でも…一人で大丈夫?ボクも一緒に行ったほうが…」


クーゲルは不安そうにドロヒューに尋ねる。


「大丈夫。これは僕の戦いなんだ。それにね、僕の大切な探し物を見つけてくれた恩人を巻き込む訳にはいかないからね。それと、これを辿って行くと森を出られるよ。」


そう言ってドロヒューは涙を人魂に変えてクーゲルに渡し、森の中に姿を消した。


「ドロヒュー…また会えるかな…」


「きっと大丈夫ぷにゅよ。信じてオレらは進むぷにゅよ。」


二人はそう言って、渡された人魂の飛んでいく方向に歩いていったのだった。

今回登場したドロヒューは、枳珈那(立田かなこ)さんの応募し、審査の末に採用されたモンスターです!

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