かぼちゃ頭の魔術師との決戦
「ぷ…にゅ…にゅあっ!」
「2人で侵入するのは無理があったね…」
2階の窓から館に侵入したぷにゅりんとドロヒューは辺りを見渡す。
「けほっ…ここは空き部屋みたいぷにゅね。」
「ぱっと見ホコリだらけなのを見るに、換気中だったみたい。」
ぷにゅりんとドロヒューは扉をこっそり開けると誰か居ないかキョロキョロと廊下を見渡した。
「あいつらは居ないみたいぷにゅ。催眠をかけられてるであろうクーゲルを早く助けてあげなきゃぷにゅね。」
そう言うとぷにゅりんは頭の葉っぱを回転させて低空飛行で移動した。ドロヒューも続いてふよふよとついていく。
一方その頃かぼちゃ頭の魔術師達とクーゲルは…
「このホットミルクすっごく美味しい!キュルビスお兄様ありがとう!」
「クーゲルが喜んでくれてよかったよ。僕らの可愛い弟…。」
「ホントにクーゲルは可愛いな!」
キュルビスとロウィンは未だにクーゲルを甘やかしていた。クーゲルも満面の笑みで2人を見ていた。
「そうだクーゲル。おやつを食べ終えたらロウィンと一緒に廊下を見てきてくれない?」
「うん!わかったよお兄様!」
クーゲルはそう言ってクッキーを頬張り、ホットミルクを勢いよく飲み干した。そして椅子から立ち上がり、ロウィンと手を繋いで食堂の扉を開けた。
一方その頃、ぷにゅりん達は広い館の中で迷子になっていた。
「人の気配をまったく感じないし、やけにだだっ広い館ぷにゅねぇ…」
「さすがにこんな広い館の探索は初めてだよ。早い所クーゲルを見つけないと…」
そう言いながら二人が通路を曲がった時…
「あっ」
「ん?」
「ふぇ…?」
「ぷにゅ」
ぷにゅりんとドロヒュー、クーゲルとロウィンがばったりと鉢合わせしてしまった。
「クーゲルッ!」
「君達…誰?」
ドロヒューが声をかけるも、クーゲルは知らない人に話しかけられたような態度をとる。
「ボクの弟に触らないでくれ」
ロウィンがそう言って火の玉を飛ばした。ぷにゅりんは葉っぱを回転させて火を消す。
「クーゲルはボクの可愛い弟だ。キミ達部外者が兄弟の仲を引き裂こうとしないでよ!」
「なーにが兄弟ぷにゅか!全く似てないくせに!」
地団駄を踏むロウィンに対し、叫ぶぷにゅりん。すると突然ニヤリと笑い、口を開いた。
「似てないって言うけどさぁ、キミ達はクーゲルの本当の姿を知ってるの?」
ロウィンがフンッと悪態をつきながらぷにゅりん達に問いかける。
「そ…それは…」
「クーゲルは呪われた兜を被ってこんな姿になったんだからボク達と似てないのは当然なんだよ。」
ロウィンのその言葉にぐぬぬと唇を噛み締めるぷにゅりん。そしてロウィンはクーゲルに指示をした。
「さぁクーゲル!ボクらの仲を引き裂く悪い泥棒さんをやっつけようね!」
「ロウィンお兄ちゃんと一緒に泥棒をやっつけるぞ〜!」
クーゲルはそう言ってドロヒュー目掛けて武器を構え、飛びかかった。
「危ないっ!」
間一髪の所で回避するドロヒュー。地面に刺さった武器を一生懸命に抜こうとするクーゲルに仕方なく攻撃を仕掛けるも、まったくダメージが入らない。
「クーゲル!目を覚ますぷにゅ…って、ぷきゃあ!」
ロウィンの放つ火の玉攻撃を避けながらクーゲルを説得するも、クーゲルはぷにゅりん達を睨みつける。
「無駄だよ!クーゲルは産まれた時からボクの可愛い弟だからね!」
「そんな見え透いた嘘つくなぷにゅ!」
「クーゲル…お願いだから目を覚まして!」
ドロヒューの声を聞いてもクーゲルは武器を振り回す。
「ボクのとっておきでも食らってみる?」
ロウィンはそう言うと何かを唱え始めた。
「甘いお菓子に愉快なオモチャ、お菓子くて楽しい。そんな優しいユメを見せてあげる。お菓子な玩具箱」
ロウィンの唱えた言葉がぷにゅりん目掛けて飛びつき、まとわりつく。
「ふふふ…これでキミも可愛らしい姿に…」
そう言いかけたロウィンの目の前には、何も変化していないぷにゅりんが目をパチパチさせていた。
「あっれぇ〜!?キミって30cm以上ありそうなんだけどなぁ〜!?」
「ぷっきゅっきゅっ…オレの頭の葉っぱは身長に含まれないぷにゅよ!それにりん族のメスはみ〜んな小柄なんだぷにゅ〜♪30cmまでしか育たないぷにゅよ〜♪」
それを聞いたロウィンは動揺する。その時、クーゲルの動きが止まる。
「…あ…れ…ボクは…」
「クーゲル!目を覚ませぷにゅ!」
動きの止まったクーゲルにすかさず呼びかけるぷにゅりん。それに気づいたロウィンがぷにゅりんを捕まえようとするが…
「今度は僕が相手だ…!ヒュードロ夜行!」
ドロヒューの放つ涙の人魂を見た瞬間、ロウィンは焦りを見せながら回避する。それを見たドロヒューはニヤッと笑う。
「ヒュードロ夜行!ヒュードロ夜行!ヒュードロ夜行!」
「わっ!ちょっと!やめ…やめて!あぶなっ!」
ロウィンは必死になって回避するが、その間にぷにゅりんが何度もクーゲルに呼びかける。
「クーゲル!お前は催眠をかけられてるんだぷにゅ!オレ達の事を思い出すぷにゅ!」
「ボク…そうだ…ぷにゅりんとドロヒュー…大切な仲間…が…」
「クーゲル!ボク達兄弟の絆を忘れないで!そいつの言葉に耳を傾けたらダメ!」
ロウィンはそうとっさに叫び、クーゲルの目は再び青くなり始める。ぷにゅりんはほっぺをぷっきゅ〜…と膨らませ、クーゲル目掛けて突進した。
「いい加減に目を覚ませぷっきゅーッ!」
「わぁぁぁっ!」
ぷにゅりんの頭突きがクーゲルの頭にヒットし、クーゲルは目を回して倒れる。その様子を見ていたロウィンはあわてふためいた。
「ボクの可愛い弟になんてことを…!許さないぞ!」
ロウィンは激昂し、特大の火の玉を作り、投げようとした。その時…
「許さないのはボクの方だ。ライトニングシュナイダーッ!」
突如起き上がったクーゲルが特大の火の玉を真っ二つにし、消滅させた。
「クーゲル!もとに戻ったんぷにゅね!」
「やっぱりクーゲルはこうでなくちゃ!」
ぷにゅりんとドロヒューが喜ぶと、クーゲルは二人に笑顔を見せた。
「ぷにゅりんとドロヒューのおかげだよ。ボクはこうして自分を取り戻せた!」
クーゲルは武器と盾を構えてロウィンを睨みつける。
「ロウィン!覚悟しろ!」
「あわわ…こうなったら…!」
ロウィンは火の玉を作り、クーゲルも武器を向ける。しかしその瞬間火の玉がロウィンの手から消え去った。
「お兄様に報告の為に一旦退却ー!」
そう言ってロウィンは猛スピードで走り出した。
「あ!待て!」
「逃さないぷにゅよ!」
「絶対捕まえてやる…!」
3人はロウィンを追いかけてダッシュする。しかしロウィンの姿は既に見えなくなっていた。
一方、逃げ切ったロウィンは…
「お兄様お兄様!大変だよ!クーゲルの催眠が解けちゃった!」
「僕は既に気づいてたよ。さてロウィン、僕らも彼らを迎えるとしよう。それもたっぷり歓迎してあげないとね。」
キュルビスはクスクスと笑いながらロウィンの手を引き、食堂の扉を開ける。そして笑いながら玄関の方へと歩み始めた。
一方クーゲル達は走って館の廊下を駆け抜けていた。
「あいつどこまで逃げたぷにゅか…!」
「合流されたりしたら厄介な事になりそうだし、早い所捕まえないと!」
「あ!玄関のあそこに…!」
3人のが立ち止まると、そこにはキュルビスとロウィンが待ち構えるように立っていた。
「やぁ待っていたよ。僕の可愛い弟。」
「誰がお前の弟なもんか!」
キュルビスの問に怒りを込めるクーゲル。クーゲルの拳は固く握られていた。
「お前たちと過ごした時間は優しかった。でも、それは所詮まやかしにすぎない。ボクは確かにまだ子供だし、ヘルムを被ってこの姿になった。」
クーゲルは武器を構え、キュルビスに向けた。
「でも!欲望をむき出しにして兄弟だなんて、そんなのは間違ってる!」
「そういう感情的になる所もかーわいい。」
キュルビスはニヤリと笑い、クーゲル達に語りかける。
「僕はね、子供が身長2mくらいのムキムキだったり覆面の人外になった姿を見るのがだーいすきでね、色んな世界を見てきて、もっとも気に入ったのがクーゲル…君なんだよ。」
「お前!やっぱり色々おかしいぷにゅよ!」
キュルビスの異常性癖を前にぷにゅりんは冷や汗をかく。
「さてクーゲル、もう一度僕の可愛い弟になってよ。紡がれる言葉で真実はユメに溶けていく…君にささやかな悪戯を贈ろうか。悪戯な虚言」
キュルビスがクーゲルに再び催眠をかけようとする。しかしクーゲルは首をぶんぶんと振ってキュルビスを睨みつけた。
「その手にはもう乗らないぞ!ボクには仲間がいるんだ!」
「あちゃ〜。もう通用しないか。それなら仕方ないな。」
キュルビスは両手を前に突き出し、何かを口ずさむ。
「trick and treat。お菓子な悪戯を味わってもらおうか」
その言葉と共にキュルビスの両手には、白と水色で構成された一組のペロペロキャンディが握られていた。最大の特徴は飴の部分が鋭い刃のようになっているという所だった。
「これはロリポップ・ツインアックス。一見するとただのキャンディのように見えるかもしれないね…でも、これはれっきとした武器。鋭く切り裂くロリポップを味わってもらうよ。」
「ボクとお兄様が揃えばキミ達は勝ち目なんて無いんだ!」
キュルビスはツインアックスを構えてクーゲルに飛びかかる。ロウィンはぷにゅりんに向けて火の玉を飛ばす。
「はっ!」
「ぷにゃあ!」
ツインアックスの一撃を盾で防ぐが、重さと鋭さのあるツインアックスはクーゲルを次第に追い詰めていく。ぷにゅりんも頭の葉っぱを回転させて火の玉を打ち消すものの、ジリ貧になるのは目に見えていた。
「(くっ…!重い一撃…ボクの力だけじゃ耐えきれない…!)」
クーゲルは必死に踏ん張るものの、ツインアックスはさらに重さを増していく。その時、ふとクーゲルは何かを思い出した。
「〔クーゲル…お前は見習い魔王になった影響で闇の力を少し宿している。〕」
それは闇夜の樹海で家族となった大魔王の言葉だった。クーゲルはニッと笑い、盾に闇の力を集めた。
「見えてきたよ。お前への突破口が…!」
その言葉に余裕の表情を見せるキュルビスに向けてクーゲルは叫んだ。
「ドゥンケルボム!」
クーゲルの盾から闇の爆発が放たれ、キュルビスを吹き飛ばす。
「へぇ…意外とやるね。流石クーゲルと言いたい所だ。」
キュルビスは吹き飛びながらそう言い、地面にツインアックスを突き立てて着地した。
「これがボクの新しい技…盾に闇の力を集め、一気に放出する〔ドゥンケルボム〕だ!」
「クーゲルいつの間にそんな禍々しい技覚えたぷにゅか!?」
「よそ見したらダメ…!ヒュードロ夜行!」
ぷにゅりん目掛けて飛んできた火の玉をドロヒューは涙の人魂で打ち消し、ロウィンをはたいた。
「うっ!」
ロウィンが怯んだ隙をつき、ぷにゅりんを抱えてクーゲルの元へ素早く移動するドロヒュー。キュルビスはロウィンを優しく撫で、再び戦闘態勢に入った。
「中々やるみたいだけど、僕達兄弟をあまりなめてもらっちゃ困るね。」
キュルビスはツインアックスを勢いよくクーゲルめがけて投げつけた。クーゲルも負けじと盾を投げ、シールドブーメランで反撃する。
キィン!
激しい火花を散らしながらツインアックスと盾は弾かれ、再びお互いの手元に戻っていく。
「中々強いけど、僕の必殺技がこれだけとでも思ったのかい?」
「なに…?」
キュルビスはツインアックスを構え、再びクーゲルに飛びかかった。
「えいっ!」
クーゲルは掛け声と共に盾を構えてツインアックスの一撃を防ぐ。しかしそれを狙っていたようにキュルビスは笑う。
「キャンディブレーザー!」
キュルビスは高速で何度もツインアックスを振り下ろしまくり、クーゲルに盾を貫通する衝撃を与えてくる。
「くっ…(なんて連続攻撃だ…恐ろしい勢いで盾を貫通してくる…!鎧のお陰でダメージは微々たるものだけど…このままだとまずい!)」
クーゲルは盾に再び闇の力を集め、放とうとした。
「ドゥンケルボ…」
「させないよ。」
キュルビスはそう言うと攻撃をピタリとやめ、ツインアックスの柄で勢いよく盾を突いた。なんとその衝撃で溜めた闇の力が分散されてしまったのだ。
「うわぁっ!」
クーゲルはその衝撃で吹き飛ばされてしまった。
「「クーゲルッ!」」
ぷにゅりんとドロヒューがクーゲルに駆け寄ると、クーゲルは立ち上がる。
「いてて…」
クーゲルが顔を見上げると、ツインアックスを構えるキュルビスと火の玉を放つ準備をしているロウィンが立っていた。
「クーゲルは休んでるぷにゅ。」
「僕らが引き受ける…!」
ぷにゅりんとドロヒューはクーゲルの前に立ち、キュルビスとロウィンを睨みつける。
「キミ達にはボクの能力が効かないし、ボクの火の玉を受けてもらうね!」
「君らを制圧してクーゲルを再び弟にさせてもらうよ。その後は君ら二人とも僕好みの覆面人外男性にでもなってもらおうかな。」
キュルビスのその言葉に二人はゾワッとするものの、首を振って戦闘態勢にはいる。
「いくぷにゅよ!ドロヒュー!」
「僕らは負けない…!」
ぷにゅりんはキュルビスから距離を取りつつ、攻撃の機会を伺う。ドロヒューはロウィンを睨み、緊張した空気が張り詰めている。
「ぷっにゅー!」
最初に攻撃に出たのはぷにゅりんだった。素早く飛び跳ねながらキュルビスに接近するが、キュルビスはぷにゅりんを余裕の表情で見つめている。
「くらうぷにゅ!」
「甘いね。このロリポップ・ツインアックスのように!」
キュルビスの懐めがけてタックルをかまそうとしたぷにゅりんをツインアックスの柄を突き立ててカウンターを決めるキュルビス。柔らかいボディに武器の柄を突き立てられてぷにゅりんは悶える。
「ぷにゃあっ!」
「ぷにゅりんッ!」
休んでいたクーゲルがぷにゅりんに駆け寄ろうとしたその時、ぷにゅりんが叫ぶ。
「クーゲルは休んでてぷにゅ!この2人はオレ達がやっつけるから…」
舌を手の代わりにして起き上がるぷにゅりん。頬を膨らませて気合を入れ直した。
「ここでオレがやらなきゃ…だれがやるぷにゅ!ぷっきゅー!」
ぷにゅりんは飛び跳ねてキュルビスに再び接近する。キュルビスはやれやれ…と、呆れる。
「同じ手はくらわないよ。キャンディブ…」
2つのツインアックスを振り下ろそうとしたその時、ぷにゅりんは突然舌でツインアックスを奪い取った。
「これでお前は武器が無くなったぷにゅよ!」
「…へぇ。まさか攻撃のフリをして武器を奪うなんてね。随分と手癖…いや、舌癖が悪いじゃないか。」
「なんとでも言えぷにゅ。仲間を守る為ならオレは多少の卑怯だってしてやる覚悟なんだぷにゅ。」
ぷにゅりんのその言葉を聞いたキュルビスはニヤリと笑う。
「それじゃあこーいうのはどうかな?trick and treat。お菓子な悪戯を味わってもらおうか…」
そう言ったキュルビスの手にはお菓子の詰まったカゴが握られている。そして沢山のお菓子をぷにゅりん目掛けて投げつけてきた。
「食べ物を粗末にするなぷにゅ!もったいない…!」
飛んでくるお菓子を舌で絡め取り、もきゅもきゅと食べるぷにゅりん。その様子を見たキュルビスはロウィンに向かって叫んだ。
「ロウィン!あの子はもう30cm未満じゃないよ!」
「なるほどねー!流石お兄様!じゃあいっくぞー!」
その言葉を聞いたぷにゅりんは自分の体をふと見る。なんと身体が本来の自分とは比べ物にならないほど大きくなっていた。
「ぷにゅっ!?こ…これは、もしかしてさっきのお菓子を投げてきたのは…!」
「高カロリーかつ消化吸収が非常に早い魔法のお菓子をあんだけ食べたんだ…太るに決まってるさ。さぁロウィン。」
その言葉を待ってましたと言わんばかりにロウィンは何かを唱えだした。
「甘いお菓子に愉快なオモチャ、お菓子くて楽しい。そんな優しいユメを見せてあげる。お菓子な玩具箱」
ロウィンの唱えた言葉がぷにゅりんにまとわりつく。ぷにゅりんが目を開けると、やはり何も変わっていなかった。
「な…なんで…キミは変わらないんだ?」
ロウィンはそう言って戦意を喪失する。キュルビスはぷにゅりんをじっと見つめ、フフッと笑う。
「なるほどねぇ。君はどうやら何者にも変えられない強い意志を持ってるんだね。ロウィンの能力が効かない訳だ。」
キュルビスはクスクスと笑い、クーゲルの方を向く。
「どうやら僕らでは勝ち目が無いようだね。クーゲルと兄弟だった楽しい時間も過ごせたし、僕らはこれにて帰らせてもらうよ。」
「待て!逃げる気ぷにゅか!」
睨みつけるぷにゅりんに対し、キュルビスは再び笑う。
「元々僕はクーゲルの事を知り、時空の歪みを通って君に会いに来たんだ。でも我慢できなくなってね。ついつい兄弟にしちゃったんだよ。」
キュルビスは続けざまに語る。
「それに…クーゲルは強い意志を手にしたみたいだし、もう大丈夫だろうからね。」
その言葉にクーゲルは首を傾げる。その間にキュルビスが指をパチンと鳴らすと突然キュルビスの背後の空間が歪み、トンネルのような物が現れる。時空の歪みだ。
「それじゃあね。僕達は元の世界へ帰るとしようかな。」
キュルビスはロウィンを担ぎ、時空の歪みに入っていった。ある程度進んでからクーゲル達の方を振り返り、指を再びパチンと鳴らした。時空の歪みは音も無く閉じられていった。
「い…いったいあいつらって何者だったぷにゅか…?」
「わからない…でもとにかく、おかえり!クーゲル!」
ドロヒューが泣きながらクーゲルに抱きつく。それを見たぷにゅりんも貰い泣きしながらクーゲルに寄り添った。
「ありがとう二人とも。そして…ただいま!」
数十分泣き続けた二人は、泣き止むとクーゲルと共に館の扉を開けて外に出た。
「…二人とも!あれ!街が見える!」
「ホントだぷにゅ!」
「あれ…そういえばぷにゅりんってデカくなったまま…?」
街を見ながらもぷにゅりんの方を見るドロヒュー。それを聞いたぷにゅりんは一息ついて口を開く。
「確かにオレは現在、同族のオスのように大きくなっちゃったけど…大丈夫ぷにゅよ。」
ぷにゅりんはそう言うとその場で頭の葉っぱを急速に回転させ、びよんびよんと飛び跳ねまくった。
「こうして…こうすれば…!」
なんとぷにゅりんがみるみると元の大きさに戻っていった。
「す…すごい…!」
「オレ達りん族ってのは、植物故に栄養の消費が激しい種族でね、激しく少し動けば元の姿には戻れるんぷにゅよ。」
ぷにゅりんがぷにゅぷにゅ…と可愛く笑いながらクーゲルの前に飛び跳ね、着地する。
「さぁ!誰が街に早くたどり着くか競走しようぷにゅー!」
「あー!ずるいぞぷにゅりん〜!待て待て〜!」
「僕を置いてかないで〜!」
3人仲良く街へ向けて走り出し、この先には何が待ち受けているのだろうか。
一方その頃、神魔宝軍の十五魔将がローブ姿のモンスター…デストロームの前に集められていた。
「…邪魔者ハ食ノ都ト呼バレル〔点心街〕ニ向カッテイルト…?」
「はい。デストローム様。このワタクシ、マスタードラグナがさっき確認してきたので間違いは無いかと。」
マスタードラグナがデストロームにお辞儀をしながら報告する。そしてデストロームは少し何かを考え、声高々に宣言した。
「…点心街カ。丁度良イ!此度ハ我自ラ邪魔者ヲ確認シテ来ルトシヨウ!」
それを聞いた十五魔将は驚きが隠せない。
「で…デストローム様!本気なのですかっ!?」
「せ…せめて我輩、ゴールドゴーレムをお付として連れていくのである!」
「ナラヌ。我1人デ行ク。」
デストロームは頑なにゴールドゴーレムとマスタードラグナの言葉を突っぱねる。すると、テルカガチがデストロームに向けて質問した。
「デストローム様、一人で行く理由を我らにも教えてください。」
その言葉を聞いたデストロームは蒸気のような霧を吹きながらポツリと言った。
「点心街ハ我ガ暮ラシテイタ場所…ツマリ、生マレ故郷デナ。久々ニ里帰リシタクナッタ…ソレダケダ。」
そう言ってデストロームは杖を玉座に立てかけ、部屋の中央にある天窓を開けて出ていった。
「…まさかデストローム様の生まれ故郷が点心街だったとは…ワタクシ初めて知りましたよ。」
「我輩もである。それにしても点心街であるか…あそこで食べたセイロ蒸し饅頭が忘れられないのである〜。」
マスタードラグナとゴールドゴーレムの二人がワイワイと話してる時、テルカガチは何かを考え込んでいた。
「(デストローム様には余計なお世話かもしれないが、私の部下を点心街にスパイとして送り込むべきか…)」
テルカガチが悩んでいるその裏で、ゴールドゴーレムの腹が鳴る。
「それにしてもあの味を思い出したらまた食べたくなったのである!我輩、一般客を装って行ってくるのである!」
ゴールドゴーレムはそう言ってドシドシと走って部屋を出ていった。それを皮切りに他の十五魔将もぞくぞくと部屋を出る。…ただ一人、オメガアーマーを除いて。
この先、クーゲル達には何が待ち受けているのだろう。そしてデストロームの故郷とされる点心街には何があるのだろうか…




