第6話「現代社会を揺るがす冤罪事件」
さいたま地方裁判所は世間を驚かす判決をだした。九条天理は無罪。されども柏木裕翔誘拐の罪は認められる格好となった。すなわち大幅な減刑だ。
彼女はあの日からまえに谷崎の息子を探していた。谷崎は裕翔を溺愛していた父であったが故に一緒になる女には常々裕翔への未練を口にしていたという。
そして九条の谷崎に対する恋慕は揺ぎないものだった。元木さんが話していたように谷崎は九条に対して熱意のようなものはとっくになかった。それでも彼に振り向いて欲しいと思った彼女は裕翔を探しだし、接触して谷崎と会わせる事を計画した。これに谷崎は応じない訳がなかった。
ただ、裕翔と谷崎が会った時に「嫌な空気」になったので現場の公園を去ったと話す。その際に裕翔も連れだそうと彼を掴んだのだが、彼は公園からでようとしなかった。彼女はそれでも走り去ったという。そして自宅にそのまま帰ったというが、時間を置いて再び現場に現れたという。
そこには遺体となった裕翔と血塗られたパイプが放置されていた。
「即ち谷崎俊一朗氏が裕翔君を殺害したと?」
「はい。そう思いました」
「パイプはどうされたのですか?」
「わかりません。ただ発見された時になくなったのであれば、彼がまたも現場に来てどこかに捨てたのだと私は思います。彼にはお気に入りの車があるのですが、その車の中にあるのかも」
彼女の言うように彼にはお気に入りの車があったが、その車も全く行方知れずになっていた。しかし彼女がその裁判のなかで話した「彼との思い出の場所」に放置されているのでないか? と話したとおりの場所にその車は発見された。
裕翔の血痕がしっかり残ったパイプとともに――
私はその裁判のなかで何度か感情的になりそうになった。しかし何故か彼女の話こそが真実であるように思えて仕方なかった。
アイツが裕翔を殺すなんて信じがたいけども、裕翔はアイツに心を開いているようでいなかった。何度も彼がアイツの暴力から私を救ってくれた事があるから。
だから。うん。全部納得した訳でなかったけど、私は控訴しない方針を告げた。
現代社会を揺るがす冤罪事件だとこの事件は世間で騒がれる事となる。
彼女が黒人女性であるからか、闇に潜む反社会組織が見え隠れするからか。
でも、真実がそうならばそれを受け止める必要も私にはあるのだろう。
私は彼女を待つことにした。
彼女もまた被害者なのだから。
そしてこの物語はまだ続く――
∀・)読了ありがとうございます。さぁコレが真実でしょうか?