表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

第2話「谷崎俊一朗」

 そのゲームセンターは閉店していた。



 しばらくは開店しないようだ。「柏木裕翔くん殺害事件について当店スタッフへ取材などの干渉は辞めてください。当店一同今回の件に関してショックを受けております。開店再開の際はまたお知らせ致しますが、今のところ未定です。柏木裕翔くんのご冥福とお祈りし遺族様へのお詫びを深く申し上げます」と張り紙が貼ってあるのを目にする。



 動きだすには遅かったか。



 しかし、これしきで私の行動は収まらない。



 私はそのまま探偵事務所へ赴いた。



挿絵(By みてみん)



「調べましたよ。この近辺に確かに彼は住んでいました」

「ありがとうございます」

「あの、お会いされるのですか?」

「彼が今回の件に関わってなくても何も思ってないのはおかしいですから」

「報道をみる限りでは例の黒人女性の犯行に思えて仕方ないですがね……」

「でも、わからないのです」

「何が?」

「彼女と息子がどうして夜遅くまで一緒にいたのか。息子は寄り道をするような子供でありません。とてもおとなしい子供です。でも、その息子が唯一よく喋る相手が彼だったから……」

「彼が真犯人だと?」

「いいえ。でも、何か知っていそうな気はするのです。仮に何も知ってなくとも今回の事件で何か思ってはいる筈。それを話し合いたいと私は思って」

「そうですか。わかりました。でも案件が案件です。私も同行するとういう事で宜しいでしょうか?」

「依頼料があがるのでは?」

「あげませんよ。特別にね」

「ありがとうございます……」

「ではゆきましょうか」

「えっ!? 今からですか!?」

「彼の家は何なら此処から近い」



 私は高嶋という探偵に少し愛想よく会釈してその商談を成立させた。商談っていうと何だか変だけども。



 そのまま向かったのは谷崎俊一朗の家だ。彼は私の元夫にして裕翔の実の父親でもある。彼と離婚したのは彼による家庭内暴力が原因だ。その暴力は私にだけ向けられたものであり、裕翔に対しては温かい父親であった。暴力の発端を言うならば、彼の女遊びを快くないと私が訴えたところにある。そもそも彼は暴力団関係者の男。彼との決別は私の親族をはじめ、周囲が口をそろえて勧めていた。



挿絵(By みてみん)



 彼との離婚は裁判にもなったが、彼の私に対する暴力行為や社会的立場が配慮されて私が裕翔の親権も担う形で私の意志が報われる事となった――



 その私がまた彼と会おうとしているのだから全く奇妙な人生だ。



 しかし、彼が現在も所属している組織の関係か何かわからないが、いまなおもこの町にいるというのは何だか情けなくも切なくもあった。同情はしないが。



 彼の家は高嶋さんの事務所から歩いて5分もしないアパートの一室にあった。



「本当に近いところにいたのですね……」

「今回、まずいような事になりそうでしたら、もう彼と関わる事はやめましょう」

「ふふっ、高嶋さんも私の親族のようです」



 チャイムを鳴らす。何回か。しかし彼はでてこなかった。



 不在なのか? 私達は日を改めてまた来る事にした。



 皮肉にも彼はこの数日後にそこから出てくる事となる。



 遺体となって――



∀・)読了ありがとうございます。また次号。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] またもや死人が! しかも暴力団関係者か……。 死因が何かによって話は変わってきますね。 なにげに「探偵の高嶋さん」もアヤシイ。 >私も同行するとういう事で宜しいでしょうか? なのに、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ