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碧眼児 孫権  作者: ひろ
2/5

孫権と朱然 2

閲覧ありがとうございます!





2



 門の前に停めてある馬車まで向かうと、すでに住んでいた屋敷はもぬけの殻だった。

 どうやら孫権が学び舎にいる間に事態が一変したらしい。


「母上たちは?」


 周りを見渡して家族を探す孫権に施然が答える。


「先に脱出していただきました。すでに危機が迫っていたのと、大人数ですとかえって目立ちますので」

「確かに」

「そういうわけですので、こちらはこちらで別経由にて曲阿を脱出しましょう。この辺の街道は此処に来る際に下調べを済ませております」

 

 そういって孫権を馬車の中へ促す。

 見た目はどう見ても自分よりも子供なのに、振る舞いは大人よりもしっかりしているほどだ。

 

 なる程、流石は兄上だ。

 見た目の先入観で勘違いしていた自分を恥じる。

 勝手な思い込みは自分も嫌だと先ほど思っていたばかりだというのに。

 あとで詫びを入れなくては。


「孫権殿此方へ」


 施然が馬車の中へ孫権を促す。

 二人はそのまま馬車に飛び乗ると、朱然が御者に声をかけた。


「孫権殿はすでに敵に追われて隠れていたようです。探すのに手間取りましたが無事お探しできました。急いで出てください」


 とはいえこちらの方は誤った認識のままだった。

 誤解もついでに解いておくか、と思いつつ窓の外を眺める。

 施然の連れてきた兵はよく訓練されているようで、屋敷を撤退する際も動きが機敏だった。

 その様子に孫権が思わず感心する。


「流石兄上の兵だな。これなら敵が追いついて来ても撃退できそうだ」


 孫権の言葉に施然が反論した。

 

「叔父上直轄の兵です」

「朱治は俺の兄上の配下だろ?ってことは兵も俺の兄上の配下ってことじゃないか」

「そうですけど、でも訓練したのは叔父上です」

「でも兄上の配下だろ」

「でも……」


 どうやら朱治を尊敬しているらしい施然は中々譲らない。

 とはいえ、孫権も兄を尊敬しているのだから譲れない。


「兄上はなんたって『小覇王』だぞ」


 えへん、と自慢げに今度は孫権が言う。

 その様子に施然がつんと答える。


「そうでなくては困ります。叔父上が主君と仰ぐお方ですから」

「お前朱治大好きだな」

「そういう孫権殿こそ孫策様大好きですね」

「俺は兄弟だからだけどさ。お前はなんでだよ」


 大体名家の人間がこんなに幼く家を離れるなんてやっぱりおかしい。

 そう思い孫権は尋ねたが、

 

「叔父上が立派な方だからです。それより、今後についての説明をしたいのですがよろしいでしょうか?」

「ああ、頼む」


 若干はぐらかされた感がありつつも施然の言葉に孫権が頷く。

 それを合図に、施然が二人の目の前に地図を広げる。

 そしてその上に指を置いた。  

 

「此処が今我らのいる曲阿です」

「うん」


 そのまま施然の指が『曲阿』と書かれた文字の上を横にすべる。


「そこからこの街道をこう抜けて歴陽に向かいます。歴陽には孫策様も現在駐屯されている為、そこで合流できるはずです」

「兄上と逢えるのか!」

「危ないです孫権殿!急に立ちあがっては!」

「っあいた!」 


 嬉しさのあまりつい孫権がその場で立ち上がり、馬車の天井に頭をぶつける。


「馬車は揺れますから、落ち着いて座ってください。頭大丈夫ですか」

「大……丈夫」

「頭を強打すると悪くなると聞きますから。何かあれば叔父上に合わす顔がありません」


 言って心配そうにする施然だったが、外傷のことだろうか、それとも中身のことだろうかと一瞬悩む孫権。

 それはさておき、孫策に逢うのは数年ぶり。

 久々に再開に胸を躍らせつつ、孫権は馬車に揺られて歴陽へと向かった。



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