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手釣りとサビキ釣り



 早速あたしたちは寄り道をすることに。向かうのはアサカさんの工房だ。中ではアサカさんが戸棚の整理をしていて、どうやら釣り関係のアイテムも並べ始めたみたい。


「おう、どないしたん? 二人揃って」

「アサカさんに作ってほしいものがあって……。まずは大量の釣り針がほしいんです」

「釣り針くらいやったらすぐ作れるで。けど、大量に、ってそんなたくさん釣る気なん?」

「釣れ出したら大量に釣れると思います。だから、今回は総力戦でいきます」

「今回は? また何かあったん?」


 あたしはアサカさんに、領主様とその娘に魚料理を食べさせることになった経緯を、軽く話した。


「そらまた厄介なことに巻き込まれたな。けどまあ、そう言うことやったら任せとき」

「なので、アサカさんにも釣りに参加してほしいんですけど」

「ええに決まってるやん。そのために竿も作ってんから」

「あ、あの、それが……。今回は船で沖に出て釣りをしようと思うんです。だから、竿で釣るならリールが必須になるんですよね……」


 リールはあたしが持っているものが二つだけ。そして、リールはアサカさんの腕をもってしても、未だ開発には着手できていないんだ。さすがにリールは構造が複雑すぎる。

 そもそも、あたしだってその細かな仕組みを説明できるわけじゃないんだ。アングラーって言うより、メカニックな分野になるんじゃないかな。


「さすがにリールはな……。けど、それやったらどうやって総力戦で臨むんや?」

「交代で釣りするとか?」


 それも考えた。けど、効率はあんまり良くないと思うんだよね。釣れてる時の感覚って大事だと思ってて、それを持ってるのに次の誰かに交代しちゃうのは勿体ない気がするんだ。


「竿を使うからリールが必要になるわけで、だったら竿を使わなければいいんだよ」

「釣りなのに竿を使わないの?」

「うん。アサカさん、紙とペンを借りますね」


 絵心が全くないあたしでも、これは簡単に描ける。だって、直線しか描かなくていいんだから。文字で言うと「目」って言う漢字に近いかな。


「こんな感じの長方形の糸巻きを作ってほしいんです」

「糸巻きって……そっか、これにラインを巻いてリール代わりにすんのか」

「そうです、そうです。で、仕掛けを海に落として、こうやって手でラインを操作する。つまり腕がロッドになるってわけですね」


 あたしはエアーでその動きをやってみる。これが竿を使わない釣り、手釣りだ。


 ただ、釣りって言っても手釣りは漁業に近いと思う。こう言う釣り方をするのは、ほぼほぼが漁師だもんね。魚を釣って楽しむんじゃなく、魚を釣ってお金を稼ぐ。そのために効率化を優先させて、道具もシンプルで簡素なものになったんだろうな。


「魚が掛かったら手で釣り糸を巻き上げるってわけや?」

「ラインで指を切らないように手袋をしてもらいますよ」


 お祖父ちゃんみたいに慣れてくると、指先の皮が硬くなって、手袋なんて必要なくなるらしいけど。


「今回、釣り針が大量に必要になる理由って何なの?」

「それは使う仕掛けに理由があって、今回はサビキ釣りをするよ」

「さ、サビキ釣り!? 何それ!?」


 おっと、ユフィにもまだ教えてなかったか。多分、初心者でも簡単に、しかもたくさんの数が釣れる釣り方。それがサビキ釣りだ。

 堤防からも簡単にできるから、子供とか初心者には特におすすめの釣りだね。釣れる魚も結構種類がいて、イワシ、アジ、サバ、チャリコサイズのマダイが釣れることもあるんだ。


「サビキって言うのは、釣り針にこんな風なキラキラした細い毛なんかを付けて、その針を五個くらい等間隔に取り付けた仕掛けのことだよ」


 あたしはまた絵を描きながら説明する。


「今回は使わないんだけど、この仕掛けの上か下にこんな感じの小さな籠を付けて、そこに餌を詰める。それを海に落とすと籠から少しずつ餌が零れるよね? それに集まってきた魚が、このキラキラした毛の付いた針を餌だと勘違いして食い付いてくるんだ」

「じゃ、じゃあ、一気に五匹釣れることもあるってこと?」

「運が良ければね。今回狙う魚は大きな群れを作って行動してる。だから、釣れ出したら大量に釣れるってこと」

「カマス、って言ってたっけ? どんな魚なの?」

「見た目としてはキスみたいな細長い魚だよ。ただ、一番の特徴は細かくて鋭い歯だね」


 カマス、っていかにも噛みそうな名前じゃない? あたしだけかな? 噛みます、的な。名前の由来はそんなんじゃないらしいけど。


 小学生が描くような魚の絵に、あたしはギザギザの歯を付け加えた。


「何や、凶悪そうな魚やな……」

「そ、それはあたしの絵が下手なだけですっ。ただ、この歯が危険なことには変わりありません。針を外す時はペンチで慎重にお願いします」

「この針のキラキラの毛はうちが付けた方がええんかな?」

「可能ならそうしてほしいんですけど、何か良さそうな素材ってありますか?」

「せやなぁ……」


 戸棚を漁っていたアサカさんだったけど「あっ」と呟いて工房の奥へ。戻って来た時には両手に何かを持っているようだった。


「これ、ライフジャケット作ってる時に出る繊維クズなんやけど、これ使われへんかな?」

「キラキラしてる羽毛みたいな感じですね! これ、使えると思います!」

「なら、これを細いテグスで結び付けたらええかな」

「だ、大丈夫そうですか? 凄く細かな作業なように思うんですけど……」

「余裕、余裕。こう言うのは一回手に馴染ませたら、無意識でもできるようになるから」


 何だかんだ、アサカさんの職人としてのレベルってめっちゃ高いんじゃないかな……。あたしの世界に来たら、天才発明家とかになるかも……。


「とりあえず、三十個ほどできたら持って行くな。糸巻きの方の素材は何使ったらええんかな?」

「軽い方がいいので木製がいいですね」

「了解。一応、ユフィ様とミコっちゃんの分も作っとくな」

「すみません、ありがとうございます」


 アサカさんに仕事を依頼してから屋敷に戻ったあたしたちは、まずはロイドさんに領主様からの話を報告。ロイドさんも「シルキー様らしいな……」とちょっと苦笑い気味だった。


 道具に掛かったお金、そして今回はキーナさんに船を出してもらう予定だから、その船代も掛かってくる。それらは釣りギルド、と言うかスタインウェイ家が立て替えてくれ、その辺りのお金の遣り繰りはネリスタさんに任せていた。

 お金のことは大人が管理した方がいいって言われたのと、あたしとしてもお金を遣り繰りする自信もない。だから、釣りギルドの経理担当はネリスタさんなのだ。



 さて、カマスがどれだけ釣れるかはまだわからないけど、作りたい料理は一つ決まっている。それは干物だ。


「ユフィ、あたしこれから市場の方へ行くけどどうする?」

「行くぅー」


 干物作りに必要なものを手に入れるため、あたしとユフィは街へと繰り出すのだった。




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引き続き宜しくお願い致します。

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