表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/199

夏のハンバーガー祭り




 餌釣りの調子がいい。これはどうやら気のせいじゃないみたいで、程なくしてぶっ込み釣りの方にもアタリがあった。

 回収してみると二十五センチほどのカサゴが釣れていて、これで試作品第二号を確保だ。


 カサゴは唐揚げにした経験はあるけど、フライってないな……。けど、似たようなもんだし、間違いはないと思うんだけどね。


「キンメが釣れたらなぁ……」


 魚のフライでハンバーガーって言えば、大体の人はマ〇クのフィ〇オフィッシュを思い浮かべるんじゃないかな? あれはおそらくスケトウダラ。美味しいよね。あんまり食べた経験ないんだけどね……。他の期間限定バーガーとかが魅力的でさ……。

 だからか、魚のフライでハンバーガーって言うと、あたしは真っ先に静岡県の下田バーガーを思い浮かべてしまうんだ。


 ご当地グルメの下田バーガーはキンメダイのフライを使ったハンバーガーで、これまたお父さんが仕事で静岡に行った時に食べたそうで、美味しかったからと家で作らされたんだ。


 キンメダイって言えば、高級魚で有名だ。その名の通り目に金色の輪っかがある、体が真っ赤で綺麗な魚。あたしは一回だけ沖釣りで釣ったことがあって、狙って釣ったって言うよりもゲストで来てくれたって感じだった。

 ただ、キンメダイもスケトウダラと同じで深い場所にいる魚なんだよね……。


「シルキー、ちょっと休憩しようか」

「はーい」


 朝食に、と屋敷のメイドさんが持たせてくれたのはパンとジャガイモ料理だ。このジャガイモはフィーリアの家庭料理の一つみたいで、煮転がしみたいなイメージが一番近いと思う。

 味的にはちょっとスパイシーで、パンに乗せて食べると抜群に美味しかった。


「さっきミコ姉がサバを釣って、今は三魚種。もっと種類がほしいところですよね?」

「そうだね。だから、ご飯食べたら浜辺の方へ移動してみようか。そっちでキス、あわよくばヒラメを狙って、お昼前の河口でシーバスとクロダイ、キビレ辺りを狙っていこう」

「この一瞬でスケジュールを考えるなんて、何だか凄いです……!」

「そ、そうかなぁ? 単純にいろんな魚が釣りたいだけだしね」


 それに、あたしが釣ったのはサバだけ。ギルマスとして、もう少し釣果を上げておきたいところだ。


 だから、あたしはそんな願いも籠めて、ポケットに仕舞っていたあれを取り出して、空に翳して見つめていた。


「ミコ姉、それは?」

「キャンプの時に湖で拾ったんだ。綺麗でしょ?」

「宝石……ではないですわね?」

「多分、ガラス。けど、何か気に入っちゃって」

「ちょっとお借りしても?」

「うん、いいよ」


 シーグラスが珍しいのかな、なんて思ったのは一瞬のことで、シルキーはなぜかお弁当を縛っていた麻の紐を解き始める。細い麻紐を作ると、今度はそれでシーグラスを十字に縛って固定。そこから何やら編み込んでいるみたいだ。


「もしかして……ストラップにしようとしてくれてる?」

「だって、このままだと落として、なくしてしまいそうですもの。せっかくの私たちとの思い出です。大事にしてほしいので」


 ほへぇー、器用なもんだ。あたしもラインを結んだりするから、それなりに手先の器用さには自信があるけど、こう言う編み物みたいなことはしたことないから、大いに感心してしまう。


「シルキーって器用なんだね」

「手順さえ憶えれば、あとは繰り返すだけの単純作業ですから。以前は今と違って、屋敷に籠っていることが多かったので、こう言う時間潰ししかなかったのですよ」

「いやでも、凄いよ。何て言うのかな、職人芸みたいな?」

「編めるけど、解くのは苦手なんです。お祭りしたライン、とか」


 なんて言ってる間にシーグラスストラップが完成。ただの茶色い麻の紐で編まれただけなんだけど、正にハンドメイドって感じで凄くお洒落だ。


 確か、ソロキャンパーが自分の時間を過ごす時に、パラコードを使ってこう言う小物だったり編み物を作るって、何の気なしに読んでいたネットの記事に書いてあった。

 パラコードって言うのは、パラシュートコードの略で、当然のことながら丈夫なナイロン製の紐のことだ。編んでブレスレットにしたり、解して靴紐にしたり。

 もっと細く解すと釣り糸としても使えるんだとか。多分、そんな情報があったから読んでたんだと思うし、憶えてもいたんだろうな。


「ありがとう、シルキー! じゃあ、早速鞄に付けておこうっと」

「ユフィには負けていられませんからね」


 もしかして、ユフィがメジャーをプレゼントしてくれたことを言ってるのかな? 別にそんなことで張り合わなくても……。


 ご飯を食べ終わると、言っていた通りのスケジュールで動いていく。浜辺では二人で投げ釣りだ。ここではシロギスとメゴチをゲットすることができた。

 そして、お次に河口。もう朝マヅメのチャンスタイムは終わってしまっているけど、クロダイとかキビレならまだ遊んでくれる時間だ。

 河口ではルアーを試してみた。シルキーはまだルアーフィッシングが不慣れだから、レクチャーするちょうどいい機会だ。

 ここでの釣果は、お互い二十センチほどのキビレを一匹ずつ。


 これで釣れた魚は六種類。五目釣りを達成させたあたしたちは、意気揚々と屋敷に帰るのだった。



 スタインウェイ家のキッチンでまずは釣ってきた魚を処理する。お昼前だから、メイドさんたちも主の昼食を作っている真っ最中だ。邪魔をしないように端に寄って、あたしたちは試作バーガーを作っていく。


「バンズは今回、パン屋さんで買ってきたものを使うよ。具材は完成形をイメージさせて、レタスとチーズも挟んでみようか」

「それで、ソースはミコ姉特製のタルタルですね」

「じゃあ、タルタルはシルキーにお願いしようかな」


 材料は前回のアジフライの時と同じ。しば漬けっぽいピクルスを使ったピンクタルタルだ。


 アジ、カサゴ、サバ、キビレは三枚おろしにして、キスとメゴチは松葉おろし。軽く塩コショウをしてから、パン粉を付けて油へリリース。

 一気に揚げちゃうとどれが何だかわからなくなるから、とりあえず一匹ずつ揚げていくことにした。


「まずはアジフライバーガーからいこうか」


 バンズにアジフライ、チーズ、レタスを乗せて、その上にタルタルを塗る。魚もちゃんと味わいたいから控えめに。


「頂きまーす」


 バンズからフライが少し食み出した部分を、大きく口を開けてパクリ。シルキーも貴族のご令嬢だって言うのにかぶり付いていた。


「うん! これは予想通りの味だね。ご飯もいいけど、パンにも合うなぁ」

「うぅぅぅぅぅー! 美味しい! 美味しいですわ、このタルタル!」

「そっち? 魚を味わってよぉ」

「いえ、もちろんアジのフライもとても美味しいです。でも、その前にまずこのタルタルです! ユフィが気絶するのもわかりますわ。今、私も気絶しそうでしたから」


 いや、やめて? メイドさんたちがパニックになっちゃうから。


「けど実際、アジバーガーは結構いいね。もうちょっとアジに脂が乗ってるとパンチのある味わいになりそうだし。何より数釣りができるってのが大きい」


 アジ、イワシ、サバ、カマス。この辺りはサビキで狙えるから、食材確保のハードルは低めだ。


「お次はサババーガー。アジと同じ青物だけど、ここは敢えて続けて食べてみて、違いがあるか試してみよう」


 サバサンドとかサバカレーとか、いろんな料理とのコラボが多いサバだから、ここは期待値も高めだ。


「おおっ! これはまた……!」

「アジと全然違いますわ!」

「だね。サバの味が濃いな。何て言うか、サバの方がジューシーって感じかな?」

「肉厚な分、そう感じるのでしょうか? けど、私の個人的な意見としてはタルタルよりも普通のソースがいいような……」

「それはわかる。ちょっと酸味があって、タルタルよりはあっさりしたソースの方がサバには合うかも」


 アジのタルタルバーガー、サバのソースバーガー。二種類の味を売り出すってのもいいかも知れないな。


「次にキビレバーガー。ほんとはクロダイがいいけど、キビレも美味しい魚だしね」


 仮想クロダイバーガーってところだろうか。


「うーん! やっぱ青物とは味が全然違う。口の中でふわっと広がる魚感って言うのかな」

「身も柔らかくてふわふわですね。ただ、アジやサバに比べると爽やかすぎるような……?」

「脂の乗りの違いかもね」


 ただ、あたしが想像してたフィッシュフライバーガーには一番近いと思う。


「次はキスバーガーとメゴチバーガーでいこうか」


 この二つは魚のサイズから、一つずつしか作れなかった。だから、交互に二つを食べ比べてみる。


「ふむふむ……。これはなかなか……」

「どちらもとても淡泊であっさりしていますわね。まるで、薄く揚げたチキンカツのような」

「それだ。胸とかささみとか、脂の少ない部分を揚げたチキンカツ。だから、タルタルとの相性自体はいいよね」

「フィーリアの皆さんにも食べやすい味かと」

「ただ、食べ応えって部分ではちょっとね……」


 ぺたんこなバーガーって凄く可哀想な感じだよね。もっと野菜を入れて嵩増しする手もあるけど、それだと魚の味が完全にどっかに行っちゃうと思う。

 だったら、フライを二つ入れるか、ってのも妙案とは言えない。キスは比較的、数を釣ることはできるだろうけど、メゴチに関しては狙うものじゃなくゲストだからね。


「最後はカサゴだけど……うっぷ……」

「ちょっとお腹が膨れてきましたわ……」


 試作品とは言え、お残しは厳禁だ。けど、さすがに二人でバーガー祭りはなかなかにハードだったかな。


「でも、カサゴも美味しく頂くよ」


 カサゴもサイズ的にはそんなに大きくはない。バンズのサイズをもう少し小さくすれば、食べ歩きにはちょうどいい可愛いバーガーになるんじゃないかな。


 けど、そのお味は……。


「おおー、そう来たか……! そっちなのか、お前は……!」

「これは……。カサゴの存在が……皆無です」

「だべ」

「……だべ?」


 ちょっとびっくりして返事が村人Aみたいになっちゃった。


「ううん、気にしないで。けど、カサゴのフライがまさかここまであっさりしてるとはね。磯っぽさもなくなってるし、ほぼほぼ味がタルタルに持って行かれちゃってる」

「カサゴバーガーと言うより、タルタルバーガーですね」


 タルタルを使わずにもっと素朴な味付けにすれば、カサゴバーガーも活きてはくるんだと思う。けど、それだとバーガー全体の味として面白味が全くなくなってしまう。


 これで今回のバーガーは一通り食べ終えた。

 食後の紅茶を飲みながら、あたしたちは今回の総括をするのだった。




よければ、いいね ブックマークして頂けると励みになります。

引き続き宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ