自分が死刑執行される場合どうなるのか考えてみた 社会の影響バージョン
できるなら、この世に罪や因縁が少ないままで一生を終えたい。そう願っていたのに事件を起こしてしまった。
俺は家の近所で3人を殺し2人に重軽傷を負わせて死刑判決が出た。この死刑囚の生活に不満を持ちながらも、3食食えるし布団の中で眠れる。おまけに熱中症防止のために24時間冷房もつけられているという豪勢な生活だ。
娯楽も本を借りられ、差し入れから俺の趣味のアニメや漫画情報も入ってくる。
(若い時に見てた頃のあのアニメの劇場版がまた作られるのか?あのアニメで親が敷いたレールに乗るのが嫌になって親に反発したんだっけ)
大きく話題になったアニメ。俺が犯行を犯して、マスコミは「犯人はオタク」だと報道したがオタクまではいかなくて俺がアニメが好きでフィギュアやグッズを買ったのは間違えない。
後に、そのアニメの原作のマンガの作者は「その作品でたくさん人の人生を左右させてしまった」と言っているのを、わずかにあるテレビを見る時間で本当に偶然に見かけた。俺が「その人」と思わせた原因でないでほしい。
俺の犯した犯行はネット上では現代社会に鉄槌を下したという一部のファンがいることを接触しに来た人伝いに知った。悪いことはしたが、どこかで自分のことをわかってくれる人がいると変な安心感を持っていた。それに刑務官の人にも確実に俺が犯行を犯した境遇を理解してくれる人がいて支えとなっていた。趣味のアニメの情報や視聴や創作活動も支援してくる。俺は殺人事件でも特異で法務大臣も死刑にはしたくないだろうという変な自信があったが、だが、そんな日々も、急に刑務官の一言で終わりを迎える。
「お前に死刑執行の通達が来た」
目を大きくしながら、今までしぼんできた感情が大きく膨らむ。
(え!?)
(まあ、そうか、さすがに人を殺しすぎた。)さすがに死刑執行はすぐされないという目論見はハズれた。
「あ、あの・・・」
俺はそれから言葉が出ない。
それから数人、屈強な男が牢に入ってきて俺の目の前に立つ。
「・・・・」
ひよこ釣りのひよこのように運命を受け入れ、されるがまま牢屋を出る準備をする。
「じゃあ、これから執行台まで行くからな、そこまで行くんだ」執行官が言う。
俺は歩くことを強要される。
歩いていると、突然、俺は頭が真っ白になった。
「い、いやだ!」
俺はそこではじめてこれから死がすぐそこに待ち受けていることを感じる。
「おい、抵抗するな、立て!!」
好意的に接してくれる刑務官もいた中で、それが一番怖かった瞬間だ。
「いいか、立つんだ。立たなかったら数人でお前を持ち運ぶ」
「ハッハハ、はい」動揺しながら言うことを聞く。
「わかりました。ヘッヘヘハッハッハ」なぜか笑いが収まらなかった。
俺は足に力が入っていない状態で本能に逆らいながら歩き始めた。
俺は廊下の下しか見ていない。ちょっと上を見る時があったが曇りガラスの向こうは晴れのようだった。
そして俺は死刑執行室に行った。
質問をされた。思い起こすことはないか?遺言はないか、死ぬ前に儀式は必要ないかである。
それを聞いた途端、一瞬だが今まで抑え込んでいた罪の思い出がすっと思い出される。
(家族が死んだな・・・)
父親は事件を起こしたことで職がなくなり、田舎のローカル線の数少ない普通列車に飛び降りて自殺した。母は外へ出なくなり精神が病んでいった。
一応、俺が事件を起こしたのは親のせいだから、外のメディアや作品展などでは親のせいだとさんざん書いてやった、週刊誌や世間の噂を持ってくる刑務官の話によるとネット民も俺にシンパシーを持って「親が悪い」と賛同する意見も見られたそうだ。親に関しては、お前らが中出しして無責任に産んだからそうなったんだ!というしかない。
ちなみに弟は離婚し、地元から去っていった。姉とは数年前からろくに話していないから別にいい。ただ読んでいないが手紙は届いていた。
弟は結婚して甥っ子がいたが甥っ子は子供を残さないだろうから一家断絶か、そもそも甥っ子の長い人生がかわいそうだ。あれだけ生まれてくれてありがとうと思っていたのに・・・・。
(お、おばあちゃん・・・)
そういえば、母方のおばあちゃんも俺が事件を起こしてから、数年で死んだそうだ。
おばあちゃんには優しくしてもらった。お小遣いももらったし、たまに行く母方の実家に行ったときにライスカレーを作ってくれた。
おばあちゃんは高齢だから死んだんだ。俺の事件も少しは関係あるかもしれないが、因果関係はわからない・・・。
(あ、あの事件も・・)
俺が事件を起こしてから数か月後、マンガやアニメの大イベント会場で5人殺傷6人重傷の事件が起こった。後に取材に来た記者によると「あなた(自分)の犯行がきっかけとなった」ということだ。
そいつは意味不明なことで事件を起こし。本当に頭がおかしそうなやつだった。一応、親や社会のせいで起こした俺と一緒にしないでくれ!
そしてお菓子を食べることを薦められた。
「いえ、いりません・・・」
そして、刑務官が死刑執行に関しての文章を読み上げる。
俺の脳は焼かれたみたいに憔悴していて全然意味が理解できない。
そして目隠しをされようとする。
「うぁああああああああああ、うあああああああああああああああああん。」
そして、めったに泣かない俺はありのまま号泣した。
最後の最後で罪悪感が一気に襲ってきた感じだ。
(俺は悪くないんだ。俺だってこんな環境で性格でこんな土地に生まれたくなかったんだ。)
奇声を上げ、俺は感情的になる。
「おとなしくするんだ」
おれは目隠しをされた後、首に縄をかけられた。
「はあああああ、はあああああ」ものすごく興奮している。
「これから○○○○の死刑を執行する」
死んだら楽になる。死んだら神様になる。死んだら水に流してもらえる。死んだら・・・。
そして刑務官が死刑執行のボタンを押す。
「ぐぁぁぁぁぁ」喉をつぶれるようだ。頭が不快な脳内物質で満たされていく。
生きている中で一番の苦しみに悶えつつも、狂気的な自分が死んでいく喜びというものをかすかな時間に感じていた。(これで楽になれる・・。)
そして数分後、俺は死んだ。
そして、俺は死んだはずだったが目を覚ました。転生でもしたのか、だがそこはとても息苦しく暑く針に刺されたような痛みを常時感じる。
「お前の今後の悪行の罪について裁く、億劫の苦しみを味わい罪を償え」
脳内で誰かの声が囁く。死んでも死の続きはあったのだ。