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流れ星へ幸せを  作者: 本宮 律
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本編55

午後2時半。

新幹線の中で駅弁を堪能した俺らは、博多駅に降り立つ。


パンダくろしお弁当、可愛くて美味かった…。

マジで食べるのもったいなかったな…。


しっかり写真に撮って、姉ちゃんとセトに送れば、姉ちゃんからは秒で返事が来た。


【いいもの食べてんじゃん。帰ってきたら、バイト増やしな】


【あと、今朝からシュリちゃん返事くれなくて。スマホの電源切れちゃったみたい、既におじいちゃんには会えたらしいから、ダイチも会えたら連絡ちょうだい】


バイト……泣く。

一応この旅行、スマホと連動している家族のクレジット決済を使っているから、実質父さんへツケだ。

使いたいホーダイしてると、未来の俺、終わる…。


「おい、俺この後の目的地知らんけど。どっち向かうん?」


シバが案内板を見ながら聞いてくる。

俺はスマホを取り出し、あの事務所の名称を検索する。


確か、福岡にあるナハ宇宙機構の事務所……

あった、最寄り駅と住所。

駅名を検索すれば、すぐにヒットした。


「ここだ。3番線の電車に乗って、5駅。そこから歩いて10分」


構内の大きな地図を2人で確認して、右に90度方向転換。

新幹線口を出て、普通列車の改札をくぐりなおす。


さすが、九州最大規模の博多駅。

こちらも観光客で混雑していた。

京都駅より人の流れが早く、シバを見失わないように歩くのがやっとだ。


「あー、しんど」


汗が滲んだTシャツをひらひらとめくって風を送る。

隣では、ホームの自動販売機で涼しい顔で水を2本買い、1本を差し出してくれる友人。


「どぞ」


「サンキュ」


同時に開けた蓋が、小さく音を立てた。



・

・

・



「このあたりのはずなんだけどなあ」


東京ほど本数は少ないものの、数分待っていればすぐに電車に乗れた。

あっという間に目的地の最寄り駅に到着し、スマホの地図を頼りに歩く。


さっきの角のコンビニ、ここを左に曲がったところまではあってるはずだ。


不安ながらに進んでいくと、突然開けた場所に出た。


「ここじゃね?」


その声に、スマホから顔をあげる。


【ナハ宇宙機構 神野事務所】

そう書かれた看板の向こうには、四角い建物が建っていた。


ここだ。

昔、小さいころに一度だけ来たことがある。

…あのリストは、じいちゃんに、ここで貰ったものだ。


ただ、あのころとは違い黒くて高い門が閉まっていた。

中には車が数台停まっており、人はいそうな気配がする。


「とりあえずインターホン押してみるか。じいちゃんには、姉ちゃんから連絡行ってるはずだから」


シバにそう告げて看板横のインターホンに手を伸ばしたとき。


「あっぶね!」


ビュン、と一瞬強い風が吹く。


キキッ

一台の赤い車が、俺らの後ろにすごい勢いで停車した。


あと数センチずれてたら引かれてたわ!

福岡、運転荒らすぎだろ!


「主語デカすぎ」


心の中で思っていただけなのに、口に出していたのか。

シバが小さな声でツッコミを入れてきた。


…そんな俺たちの前に止まった車の、スモークがかった窓。

外からだと、中が見えないようになっている。


それがゆっくりと下がり、運転席から顔と腕を覗かせたのは、やたら濃い口紅を塗った女性だった。


「あらやだ、本当に来たわ」


かき上げられた前髪は、その人の大人の雰囲気を醸し出す。

ざっくりと胸元が開いたシャツに、揃えられたネイル。


「誰……?」


俺にはこんな知り合い、いないけど。

シバも同じようで、目で俺に訴えかけてきた。


するとその女性は、親指で後部座席を指さす。


「まあ、乗んなよ。ここ正面開かなくて、裏口から入るから」


初めて会う人なのに、なぜだろう。

その声が、目の下の印象的なホクロが。

どこか見覚えがあった気がした。




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