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流れ星へ幸せを  作者: 本宮 律
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本編26

「よ」


白のTシャツに黒のズボンという軽装の友人は、待ち合わせた駅で俺を見つけると、軽く右手をあげた。

俺もつられるように同じく手をあげる。


「急に悪いな」


「いや、びびったけど。シバからの誘いなんて珍しくて」


黒いマスクを下げ、水を飲むシバ。

…さっき、突然メッセージを寄越してきた張本人である。


いつも、大体の誘いはセトからなのに。

中学の頃からの仲だけど、思い返せば2人で会うことは滅多になかった。


一旦駅前のよく利用するカフェに入り、いちばん小さいサイズのアイスカフェラテを頼む。

席に着くなり、シバがため息混じりに言った。


「…セトが、急に一人旅するとか言ってきてさ」


「え、マジ?」


マジ、と復唱される。


2人は大概いつも一緒にいたから、別行動なんて珍しいと思ったらそういうことか。


「俺誘われてないし、返信も来ないわけよ」


いや、お前は彼女か。

少しも感情の籠っていない泣き真似をするシバに、

反抗期じゃね?と言いたくなる気持ちを抑えて湧き上がる笑いを殺した。


しかしそんな俺とは対照で、すぐに真剣な目をした友人。


「…なんか、アイツ最近おかしいんだよ」


その視線は、どこか遠くを映している。


「え?」


カフェラテを喉に通した後、ほとんど空であろうカップが小さな音を立てた。


「プラネタリウム行った日…あの日から、ちょっと。ダイチなんか知ってる?」


決して俺には視線を投じず、その声には特に期待もこもってない。

大方、知らないだろうけど一応聞いてみた程度だろう。


あの日って確か、2人が俺らを迎えに来て、

プラネタリウムを見た帰りに、シュリがソフトクリーム食べてたっけ。

特に、思い当たる節もないような…


「あ、」


記憶を辿りながら下がって行った視線が、パッと上がる。

視界に入ったのは、あの時のプラネタリウムがある建物だった。

同時に、シバが意外そうな顔で俺をのぞき込む。


「あの占い師………」


セトとだけ行った、変な占い。

シバとシュリが知らないこと。


思い出したように、持ってきた上着を漁る。

そしてそれはすぐに俺の手に触れた。


「なんそれ?」


机に置かれたタロットカード。

月に座る女の子と目が合った。

…あれ…あの時、目を瞑っていたイラストじゃなかったか…?


「後ろになんか書いてあるけど」


記憶をたどっている最中割り込んできたその言葉に、カードを裏返す。


「え、なんで……」


あの時は、裏面は全て白紙だったはずだ。

だって、白紙の山から取られたカードがこれだったんだから。


呆然としている俺から、シバがカードを奪う。


「てん、しろ、つき?」


読み上げる友人の声に、見間違いじゃないんだと悟る。


いつの間に、カードの裏面には天城さんの名前と住所が記載されていた。


いつからかわからない。

なぜだかもわからない。

でも確かにあの日、山札は全て白紙だった。


「…シバ、ありがと。俺ちょっとその人に聞きたいことあって行ってくるわ」


カードを取り返し、席を立つ。


なんでこのカードに突然こんな情報が浮き上がってきたのか。

あの占い師はなんなのか。

シュリは、天城月さんとは、誰なのか。


山ほどできた知りたいことを、1つずつ解いていきたい。


わからないけど、この人に会いに行けば何かわかる。

そんな気がした。


空になったカフェラテをゴミ箱に捨てれば、二の腕を掴まれた。


「俺も行く」


え、と間抜けな声が出る。

しかし、シバは真剣な表情を崩さなかった。


「…最近おかしいのは、セトだけじゃない」


キラリと光った左耳のピアス。

一言放ったシバは、行こう、と俺の前を歩き出した。

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