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流れ星へ幸せを  作者: 本宮 律
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本編11

「シュリ、姉ちゃん。話がある」


夜、俺は風呂上がりに冷凍庫からアイスを二つ取り、リビングでくつろぐ二人に近づいた。

危惧していたのは明日、シバとセトに深堀りされることだったが、それは俺がなんとかやり過ごそうと思う。


…それ以外。

俺とシュリが離れる場面があり、女子に質問攻めにあったら…

頼みの綱の姉ちゃんは3年生で推薦もらって受験もないから、学校にあんまり来ないし。


持ってきたアイスをひとつ、スプーンと一緒に姉ちゃんに投げる。

もう一つは蓋を開けてシュリの前に置いた。


「サンキュ。改まって面白そうな顔してるじゃん。どしたの?」


「?」


濡れた髪をタオルでかき上げながら、シュリ用に持ってきたアイスをスプーンですくう。

いたずら顔で横やりを入れてくる姉ちゃんは、半分無視だ。


「シュリの設定。まさか裏山で拾ってきたなんで言えねえから」


それに記憶がないことも、と付け足すと、シュリが勢いよく俺の持っているスプーンを咥えた。


実際、アイツらにはもう遠い親戚って言っちゃったし。

多分、父さんもそんなこと言って編入させてくれたんだろう。

大まかな設定はそれでいいけど、今後だ。

まず、クラスはおそらく違うはずだ。


家族や親せきは、基本別になりがちという俺の主観。

まあ、仮に同じでも体育とか部活がある日とか、俺が一緒にいられない時に変なこと答えられてもフォローできねえし。


シュリには申し訳ないけど、ある程度作ったものを落とし込む必要がある。

俺たちの平穏な学校生活のために…。


「確かにねえ。実は生き別れの妹とかは?」


「ありえねえに決まってんだろ!」


姉ちゃんのアホすぎる設定に、突っ込まずにはいられない。


どんな世界だよ。

とてもじゃないけど家族の誰にも似てないし、嘘にもほどがある。

ぎりぎり潜り抜けられるレベルじゃないと。

夢があっていいじゃん~と膨れる姉ちゃんなんか無視だ。


俺はいつの間にかスプーンを受け取ってアイスを食べ始めるシュリにの前に人差し指を立てた。


「…シュリ、よく聞け。お前と俺は今から“遠い親戚だ”。姉ちゃんもだ」


「まあ、たぶん父さんが学校にそう言ってるでしょうね」


うるせえ。おさらいってことでいいんだ。


「しんせき?」


“親戚”は知らないんかい。

俺の言葉をオウム返しで呟きながら首をかしげるシュリに説明する。


「親戚っていうのは、遠い家族みたいなもんで…」


「まあ簡単に言えば、身近な人ってことよ!」


割り込まれた言葉に、シュリは何回か首を縦に振った。

よし、理解したっぽい。


「次。シュリの地元。数年前までここにいたけど、親の都合で引っ越ししてて帰ってきたことにしようと思う」


これは、我ながらいい案だと思っている。


数年こっちにいなければ変わっていることは大いにあるし、

これから色々覚えていけば大体カモフラージュできる。

…正直、シュリがどこまで常識というか、生きる上で当たり前のことを覚えているかにもよるが。


夜が暗いと思っていたぐらいだし、もしかしたらそういう場所にいたのかもしれない。

最低限の知識はすり合わせが必要だが…。


「まあ賛成ね。その方がフォローしやすいわ」


アイスのスプーンを咥えながら、指で丸を作る姉ちゃん。


フォロー云々ももちろんだが。

シュリの記憶に関しては未知数すぎて、ルール化しすぎると後で首を絞めそうだから。

それに、何か思い出せたときとか、なるべく障害にしたくない。


「あとは─────」


「これは?」


その後も、作戦会議は遅くまで続いた。

最初は最低限、学校生活を乗り切れるくらいの設定をと思って、始めた作戦会議。


「もしこう聞かれたら~」


「えー、ちょっと怪しくない?それは」


気づけば、シュリは静かに寝息を立て、食べていたアイスは半分ほど溶けていた。

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