運の尽き 【月夜譚No.221】
基本的に、サイコロを振るような運任せで生きてきた節がある。学校の試験は山を張ったところしか勉強しなかったし、就職先も適当に受けて通った会社に入社、仕事はまあそこそこ考えながらやってはいるが、大部分はその場任せである。
そのやり方では普通なら上手くいかないのだろうが、彼自身の場合はそれなりにやってこられてしまったから始末が悪い。様々なことに対して興味が薄く、表面上はしっかりしていそうに見えて中身はいい加減なことこの上なし。
だから、目の当たりにしている現状に、彼がどうしたら良いのか判らなくなるのも無理はない。今までが全て前途洋々としていたわけではなく、失敗することも間々あったが、ここまでの失態は人生で初めてのことだった。
記憶に新しいのは、怒りや悲しみの籠もった視線の数々。自身のデスクに積み上げられた書類は首をうんと折り曲げないと天辺が見えず、一人佇むオフィスは照明が殆ど消されて薄っすらと寒い。
彼は立っていることもできなくて、勢いよく椅子に尻を落とした。
これを全て一人で片づけなくてはならない。回らない頭に虚ろな双眸。しかし彼は、書類の一つに無気力な手を伸ばした。