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根絶やし伯爵と枯れ枝令嬢  作者: 片山絢森
根絶やし伯爵と緑の令嬢

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41/93

さあ、断罪の時間です‐2(こんな話は聞いてません)



    ***

    ***



 面白いので――もとい、そのころのレティの様子が気にかかるので、少しだけ時間を巻き戻してみよう。


 ウィルがああ言った時、レティは思わず呟いた。

「……は?」

 と。




 どうしよう。


 レティは冷や汗を浮かべていた。

 ウィルが馬車を降りる直前、意味ありげな笑みを浮かべていたのを思い出す。

「レティはまだ降りなくていいよ」と言われてほっとしていたが、予想外の展開が待っていた。こんな話は聞いていない。


(どどど、どうしよう……?)


 だが、無視するわけにはいかない。

 ここに来ると決めたのはレティだ。何が起ころうと、絶対に逃げないと決めていた。

(……でも、あの)


 ――緑の乙女なんて聞いてないですけども!?


「さあ、どうぞ」

 馬車の扉が開き、まぶしい光が差し込んでくる。

 すぐそばにあったのはルカの顔だ。どうやら、扉を開けてくれたのは彼らしい。

 彼はにやっと笑って片目をつぶり、(がんばれよ)と唇だけで言ってくれた。


(う、嬉しそうな顔をして……!)

 絶対に面白がっている、この人。


 でも、緊張がほぐれたのも事実だった。

 小さく頷き、レティは彼の手を取った。


 一歩歩くたびに、さらさらとドレスの裾が揺れる。

 とても薄い生地を使い、花びらのように重ねてあるのだ。

 この間のドレスを仕立て直し、さらにレティの体に合うように作り変えた。今はもっと色が透け、動くたびに軽やかにひるがえる。

 ぽかんとした彼らの前で、レティは足を止めた。


「お初にお目に掛かります。ボールドウィン伯爵閣下の要請を受けて参りました。ご挨拶することをお許しください」


 流れるような淑女の礼に、ほうっと感嘆の吐息が漏れる。

 ドレスの裾を踏まないでほっとした。口上も噛まずに言い切った。

 なんのための特訓か分からなかったが、まさかこのためだったとは。いやむしろ、気づけ自分。


 一度目を伏せて上げた先に、数名の人間が立っていた。

 ヒルダとマロリーは知っている。その横にいるのがグレーデ男爵だ。以前よりちょっと太った気がする。


 すぐそばにいるのはウィルとルカ。ウィルは微笑み、ルカは真面目くさった顔でこちらを見ている。どちらも正装しているせいで、目のやり場に困るほど格好いい。


 その向こうにいるのがフォンドア子爵だろう。鋭い目をした、寡黙な雰囲気の青年だ。だが、嫌な感じはしない。もうひとりは彼の祖父だろうか。ここからでは顔が見えないが、杖をついているのは分かった。


 彼らに目をやってから、レティは改めて自己紹介した。

「レティシア・グレーデと申します。先代男爵の娘です」



 さあ――始まりだ。

お読みいただきありがとうございます。というわけで、足踏み回をお届けしました。一行しか進んでねーじゃねーかという方、すみません。次回はもっと長めです。

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