表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
根絶やし伯爵と枯れ枝令嬢  作者: 片山絢森
根絶やし伯爵と嵐の到来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/93

結論としましては(兼、密談の時間)

「レティはどうしたい?」


 そう聞かれ、レティは一瞬戸惑った。

「私は……」

 改めて聞かれると言葉に詰まる。そういえば、考えてみた事はなかった。


「君が望むなら、男爵家に罰を与えることもできる。先代男爵の娘を虐げたあげく、身ひとつで追い出すなんて、王宮に知られたらただじゃすまない。少なくとも、無罪放免にはならないと思うよ」

「実力行使でぶっ飛ばしたいなら、多少の指南はしてやれる」


 それぞれ言われ、レティはちょっと返答に困った。

 そりゃあ――もちろん。


 彼女達に思うところがないわけではない。両親を亡くした直後のレティに、彼らの仕打ちはひどすぎた。形見の品も取られたままだし、領地に入ったら逆さ吊りだ。お腹はずっと空いていたし、着るものだってなかった。森で食べ物が手に入らない日は、干しキノコをかじって生き延びた。


 思い返せば色々ある。水に流せないものもある。――けれど。


「別にいいです。ここで暮らせれば、それで」

「……本当にいいのかい?」

 ウィルが探るように尋ねる。


「半殺しまではいいと思うぞ。俺が九分の四くらいまではやっておくから」

 それはほとんど半分殺している。あとそこから半分にするのは難しいな?

 二人の好意に礼を言い、でも、とレティは首を振った。


「本当にいいんです。今はお腹いっぱい食べられますし、布団もふかふかで眠れますし。形見だけは戻ってきたらいいなって思いますけど……でも、サンディもマーサもいい人で、領内の人たちもやさしくて、ものすごく恵まれているので、もういいです」

「……うん、そうか」


 ウィルがちょっと目を伏せる。それから――見とれるほど綺麗な微笑を浮かべた。

「分かったよ、レティ」

「マジかお前」

 盛大な舌打ちをしたものの、ルカも文句はないようだ。多分、あっても主が止めてくれる。……と、思う。


「でも、ちゃんと君を引き受ける保障が必要だ」

「保障……ですか?」

 はて、と首をかしげると、ウィルがやさしい口調で言った。


「グレーデ男爵の口から、君を手放すと言ってもらうんだ。そうすれば、正式に君を引き取ることができる」

「だな。そうすりゃ余計な面倒がない」

「へ……」

「幸い、僕は一度あちらに行く用事がある。その時に同行してもらうことになるけど、それはいいかな?」

「それは、まあ……」


 逆さ吊りだけが心配だが、ウィルと一緒なら、さすがに吊るされる事はないだろう。

 それに、正式に認めてもらえるのはありがたい。

 不安と安全を(はかり)にかけて、レティはこくりと頷いた。


「分かりました。お供します」



    ***

    ***



 その夜、領主の部屋に引き揚げた二人は、無言で何かを共有していた。

 レティはああ言ったが、彼らにはそんなつもりはさらさらなかった。


 彼女の身体が小さいのも、びっくりするくらい痩せていたのも、あの一家が原因だった。今は多少ましになったが、それでも華奢だ。レティは太ったと言っているが、同年代の少女と比べてもまだ細い。

 おまけに、あれだけの薬草の知識と調合能力だ。その労力を搾取し、無料無休でこき使っていたなど、信じられない暴挙である。


「……あれを無罪放免は、ないな」

 ウィルがポツリと呟いた。

「ああ、ない」

 ルカも即座に頷く。こちらも戦闘態勢万全だ。


 そもそも、初めて見た時から気に食わなかったのだ。あの二人の姿を見た途端、レティが一瞬固まったのは見逃さなかった。すぐに元に戻ったものの、あの一瞬で十分だった。

 彼女が貴族の令嬢かもしれないと指摘したのはウィルだった。まさかと思ったが、そう考えれば納得がいった。


 だが、まだ分からない事があった。


 貴族の令嬢がボロ布をまとい、あんな森で、たったひとりで、供もつけずに歩いていた理由。

 そして、どう見ても年齢相応には見えないほど栄養が少なく、お腹を減らしていた理由。


「お前の命令があったら、問答無用で叩き出してるところだった。……で? 何考えてる?」

「言わなきゃ分からないとは思わなかった。君はそんなに無能だっけ?」

「……言ってくれるな」

 ルカが獰猛な顔で笑う。ウィルもゆったりとした笑みを返した。


「目的は二つ。レティを完全に自由にすることと、あの一家に相応の報いを与えること。方法は任せる――と言いたいところだけど、ひとつ、考えていることがあるんだ」

「なんだ?」

「耳を貸して」


 言われるまま耳を近づけたルカに、こしょこしょと囁く。ルカは目を丸くして、それから人の悪い笑顔になった。


「さすが天然腹黒伯爵。それでこそ俺の主人だな」

「一言余計だよ、ルカ。それで? 手配できる?」

 挑戦的に言った彼に、ルカは恭しく膝をついた。


「――仰せのままに。ご主人様(マイロード)

お読みいただきありがとうございます。あと18分の1、かな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ