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「あの言っている意味が全く理解できないんだけど」


 婚約破棄するからお前の財産を半分寄越せ?

 どんな理論を用いればそんな言葉が出るのか。必死に頭を悩ませるものの、間抜けなお猿さんの頭の中までは読み取れない。


「本当に学がない女だな」


 相手をするのが疲れるとでも言うような口ぶりだ。

 ルークは、やれやれと手のひらを上げて。


「夫と妻が離婚する際はお互いの財産を半分にするのだ。そんなことさえ知らないのか? 世間知らずにもほどほどにしろよ。厳しい社会では生きていくのが大変だぞ」


「はぁ? 確かに財産分与と言って、お互いの所有物を半分ずつにするというものがあるわ。けれど、私と貴方はまだ結婚してもないでしょ? バカじゃないの。もっと勉強したら?」


「ふ、ふ、ふっざけるなああああ!? 何を調子に乗ってるのだ。僕は婚約破棄されるのだ。慰謝料を払え。慰謝料をっ!」


「婚約破棄を言い渡されたのは、私の方よ。都合が悪くなったら、自分の都合の言いように改竄するって子供?」


「侮辱罪だ。僕を侮辱した罪は重いぞ。死で償えっ! 父上に言いつけてやる。二度とお前は陽の目を見れなくしてやるっ!」


「何か嫌なことがあれば、父上、父上って? 貴方はどこまで幼稚なの?」


「く、くっそっ! ふ、ふざけやがってぇっ!?」


 苛立ちを隠せずに、ルークは両足で床をバタバタと踏みつけている。その仕草はトイレが漏れそうで我慢している人みたいだ。


「あ、そうだ……ゆ、指輪……指輪を返せっ!?」


 ルークが私の指先を見て、はっと表情になる。

 無理もない。だって、私は指輪など付けてないのだから。


「返せって酷い言い草ね。私への婚約指輪だったのでしょ?」


「そうだ。アメリアが屋敷に来た瞬間に渡せ、と父上が言うから、お前みたいな田舎臭い娘にくれてやったのだ。だが、婚約破棄した時点で、あの指輪は無効だ。さっさと返せっ! この盗人がっ!」


 ルークに初めて会った日は、今でも鮮明に覚えている。

 ルークの父親が、私とお父様の元へと頭を下げに来て。


『お願いします、アメリア様。息子との婚約を検討して貰えないでしょうか? 聖者である貴方様にこんな縁談を持ちかけるのは、無礼な行動と分かっております。でも、息子を——』


 ルークの父親が執念深く頼み込んできたので、渋々私は了承することにしたのだ。アメリアの好きにしたらいいとお父様は言ってくれたが、顔付きは難色気味だったなー。


「残念。指輪は返せないわ」


 私は得意気な表情で、ルークを見据えて。


「だって、質屋でお金に代えてもらったから」

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