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憤慨したルークは拳を強く握りしめ、睨み付けてきた。
「アメリア……今の発言は僕を本気で怒らせたよ。もう今更撤回しようなどと考えても、全てが遅い。それでもいいんだな」
撤回する気など更々ない。勝手にしてくれと思うほどだ。
それでもいいんだなと言ってる時点で、本気で思ってないのは確実なのだけど。私が居なくなったらマズイと本能的に思ってるのかしら? 流石はお猿さんね。
「はい、ご自由にどうぞ。穀潰しの貴方が何ができるのかしら」
「ふ、ふざけやがってぇ!! 父上に言いつけて、お前など即刻この屋敷、いいやこの領地から退場してもらうっ!!」
父上に言いつけてね。それってただのチクリじゃないの?
自分の力じゃどうしようもできないから、自分よりも強い人に助けを求めているだけ。それを堂々と言えるって感心するわ。どこまで自分の価値を下落させるのかって。まぁーこのクズ男が株なら、現在ゼロどころか、マイナスの域にまで達していると思うけど。
「あぁーそうするわ。こんなちっぽけな領地なんて、今すぐに出ていくわよ。元々貴方と結婚するつもりなんてなかったし」
「だ、騙していたのかぁ! どこまで最低な女なんだ。悪魔の女めっ! どうせ、僕の財産目当てだろっ! どこまで薄汚いんだ。金に目が眩んで、分捕るだけ分捕るつもりだな!!」
僕の財産って言ってますけど、貴方は働いていませんよね?
無能認定されて、誰からも頼りにされていませんよね?
そもそも、別に私はお金に興味がないし。可愛いドレスや美味しい料理、他にも娯楽書物を読むのは好きだけど、別に今の仕事で十分楽しんでいるし。だから、目が眩むなど到底ない。
「僕の財産とか言ってたけど、貴方の父親の財産でしょ? 勘違いも甚だしいわよ」
「父上の財産は息子である僕の物でもあるのだ。そんなことも分からないのか? これだから学がない女は困るっ!」
あの……ご、ごめんなさい。私、帝国魔法第一大学(国内一位の難関魔法大学)を主席で卒業した、超エリートなのですが。
「どうせ、しょぼい魔法大学に進んだのだろ? 僕は、君とは違って、帝国魔法第八大学(国内300位以内の中堅魔法大学)を卒業した、凄い男なんだぞぉ!」
フンっと鼻を偉そうに鳴らしたルークは両腕を左右の腰に当て、上から目線で見下してきた。
だけど、私は知ってるのよ。貴方が裏口入学だってこと。
多額のお金を出して、卒業までさせてもらって。それなのに、貴方の頭はお猿さんレベル。本当可哀想だわ、動物園からやり直した方がいいわね。
「どうせ大学で学んだのは、屁理屈と男を誑かす方法なのだろ? このビッチ女が。あー本当に無能とは会話が疲れる」
貴方が大学で学んだのは、猿真似と非常識だけかしらね。
あ、ごめんなさい。お猿さんの方が、まだ賢いわ。
どこまで自分の格を下げれば気が済むんだろ。
「あ、そうだぁ!?」
何かを思い出したかのような口調でルークは言い、右手をこちらへ差し出してきた。
「婚約破棄をするのだ。お前の財産を半分寄越せ」