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「何を言い出すかと思えば、愚かな奴だな。現在の僕に手を出すと言うのは、背中に居る奴等にも痛みが生じるのだぞ?」


 目の前に居る戦闘生物は高笑いした。

 ルークの声だと言うのが余計に腹立つ。


「もしもお前が魔法を繰り出すものなら、僕がプイっと背中を向ければ、その攻撃は全て罪なき人々に当たるぞ?」


 非道な奴ね。どこまでも汚れているの。この悪魔。

 でも言う通りだわ。この状況は極めて不味い。

 鍛えた魔法は全く通用しない。全て吸収されてしまう。

 更に人質を取られているので安易に攻撃が出来ない。


「早く人々を解放して。彼等を苦しめる必要はないでしょ?」


「それは不可能だ。僕は最初に言ったはずだ。人間共を食ったと。お前だって、一度胃袋に収めたものを元に戻せと言われても無理な話だろ? 吐き出さない限りな……デュハハハハハ」


 吐き出さない限り?

 私は手のひらを向け、化け物へと魔力を放つ。


「不意打ちか。本当にお前はずる賢い女だな。だが、仕方ないか。恐怖に怯え、攻撃する他なかったのだろ?」


 だがしかし、とニタリと歯茎を見せて笑い。


「まぁー現在の僕には無意味だがな」


 言葉通り、魔力は当たらない。吸収されたのだ。

 でも解決の糸口は見つかった。勝てるかもしれない。


「ねぇー。私の魔力は美味しかったかしら?」


「アメリア、お前の魔力は特上品(美味い)ぞ。吸収すればするほどにもっと吸収したくなる。でも、ジリ貧になるだけだぞ?」


「もう勝てないもの。少しぐらい、抗ってもいいでしょ?」


 デュハハハハハ、と気持ち悪い声が響き渡る。

 勝ったと思っているのだろう。でも、私はしぶとい女だ。


「流石はアメリアだな。最後の最後まで諦めないその気持ちは高く評価してやろう。まぁー僕に勝とうなんて無理だがな」


「ありがとう。精々、私に出来ることをするわ」


「あー悲しいよ、アメリア。君がもうこの世界から消えちゃうなんて。僕に食べられてさ。最後の最後まで僕を満足させてくれ。逃げ回って腹踊りでもして見せてくれるかな?」


「そうね……満足させられるように私も努力するわ」


 戦闘生物。

 彼等は『吸収』能力を持ち、あらゆるものを飲み込んでしまうと言う。けれど、忘れてはならない。相手は生物だ。


 胃袋に限界があるに違いない。

 私の魔力を『美味しい』と言える感覚は機能しているのだ。


 それならば——もしも限度量を超えた魔力を吸収したとしたら。もしも満腹感を与えることができたとしたら。


 戦闘生物は——食べたものを吐き出すかもしれない。


 これは仮説に過ぎない。けれど、試す価値はある。


「さぁー化け物さん。私の魔力を食べなさい。好きなだけ」


 両腕を突き出し、最大限の魔力を一気に放出する。

 これは一発勝負だ。二回目は決してない。

 絶対に勝つ。皆を救う。その為に、尽力するのだ。

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