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「だ、脱出だとぉ……? こ、ここから出られるのか?」


「あぁーそうだ。手筈は整えた。残るは実行に移すのみだ」


 不合法な仕事を始めてから早二ヶ月。

 遂に見えた一筋の光。何度ここから出られることを夢見ただろうか。だが、待て。焦るな、僕。


「だが、今までどうして僕に計画を打ち明けなかった?」


 一番の疑問。

 問い詰めなければ、コイツらは自分たちだけで逃げ出していた可能性がある。侮ることはできないな。どちらの立場が上か、先に教えてやらないとならない。


「お前が裏切る可能性があったからだ」


「ふぅーん。裏切る可能性ね。今後、仲間になる人物に対して、失礼じゃないか? 一先ず、僕を脱出メンバーに入れろ」


 それで、と呟き、僕はもう一度口を開く。


「どうして僕にその話を打ち明けた?」


「これ以上、お前が脱出の余計な真似をしない為だ」


***


『脱出計画に関する情報』


・決行は深夜帯。僕たちが普段就寝する時間帯を狙う。

・現在の地点から南へ十キロ程度先へ進めば、帝道(※一般国道と同義と考えてくれれば問題ない)へと出られる。


「帝道があるって、どうして分かったんだ?」


 僕たちが居る地点から見える景色は、森林地帯のみ。

 高い場所も無く、帝道があると判別するのは不可能。

 それにも関わらず、どうしてここまで自信を持って言えるのか。


「それは、オレ自身が駆動車で連れて来られる際に、肉眼ではっきりと見たからだ。寝たふりをしていたとでも言えばいいか? 破格のバイト。何か裏があると思って、ずっと起きてたんだよ」


 僕たちは駆動車に乗せられて、ここまで来たのだ。

 と言えど、僕は薬を飲まされて眠っていたのだが。

 現在も駆動車は僕たちが居る小屋から少し離れた位置に置かれている。但し、キーが無いので、運転はできないがな。


「なるほどな。お前意外と賢い奴だな、僕には負けるけど」


 冗談半分で聞いた脱出計画。勝算が無ければ、奴等の情報を聞き出して、ボスに報告すればいいと思っていた。

 でも、もしかしたら本当に脱出できるかもしれない。


「決行は明日、いや、今日でもいい。さっさと行動に移そう」


 地獄から抜け出すなら早い方がいい。僕はそんなふうに思い、提案してみたのだが……。


「オレ達もそう考えていた。だが、一つだけ難所ができた」


「難所だとぉ……?」


「お前が連れてきた、ポチちゃんだ。アイツが居る限り、オレたちが深夜帯に外に出るのは無理だ。脱出する前に噛み殺される」


 リーダー格の男に続けて、残りの二人も僕を睨み付けてくる。察するに、お前が撒いた種だ。お前が責任を持って、対処しろという節が感じられる。


「僕は悪くない。第一、お前らがコソコソと僕に隠れて行動していたから悪いのだ。お前達が対処しろぉ!?」


「…………」


「何だ、黙っているが、納得しているのか。先に言っておくが、僕を脱出メンバーに加えない限り、お前らの計画は台無しにできるんだぞ? ボスに脱出計画を告げてもいいんだぜ。そうなると、お前らはもっと脱出ができなくなるぞ」


「あー分かっている。だからこそ仲間に入れるんだ。というか、この脱出計画にはルーク。キミの力が必要だ!?」


 僕の力が必要? 頼りにされるってのは嬉しいものだ。

 どこかの馬鹿女は僕を役立たずと抜かしていたな。

 けれど、どうだ。現在の僕は必要とされているぞ。


「僕の力が必要だと……? それで僕の役目は?」


「駆動車のキーをボスの部屋から盗め」


「はぁ? ちょっと待て。そ、そんなの無理だ。不可能だ」


 ボスの部屋を行き来できるとは言え、不審な真似をしたらその瞬間、僕はアウト。縄でバシバシ殴られるのは避けられないし、最悪は殺される可能性だってあるのだ。こんなの無理だ。


「あの魔物さえ居なければ、就寝時間帯に駆け抜ければ上手く逃げ切れたんだ。それぐらいのリスクは背負って貰う」


 勝算は五分五分。

 僕自身の負担が物凄く大きい。

 但し、成功すれば、僕はもう一度やり直すことができる。


「ここで一生地獄生活を続けるか、それとも外で悠々自適に暮らすか。さぁーどっちを選ぶ?」


 後者に決まっている。

 だが失敗したら——いや、覚悟を決めるしかない。


「僕の負けだ。キーは任せろ。決行は明日の深夜だ」

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