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「痒い……痒い……か、顔がた、爛れるぅ……」
鏡に映るのはタコのように膨れ上がった顔面。
顔中からは膿みが溢れ出している。
掻き毟った結果、皮膚は瘡蓋状態。
数ヶ月前までシュバルツ家の跡取りと言われなければ、誰が僕をルークだと認識することができるだろうか。
「おい、新入り。何を鏡を見て嘆いているんだ。さっさと仕事場へと向かえっ!?」
ニタニタ顔でボスの怒号が飛び交い、僕は急いで支度をした。長い物には巻かれろの精神である僕。絶対にコイツを敵に回してはならない。ここで生きていく為には、必ず。
憎い気持ちを抱きつつも、「ボス。承知しました。直ちに向かいます。今日もお仕事頑張りますっ!?」と元気な好青年感を醸し出しながら、僕は八畳の部屋を飛び出すのであった。
***
自分で言うのも何だが、僕は特別な人間である。
シュバルツ家に生まれ、並大抵以上の才能を持ち。
生まれた時点で勝ち組と正しく僕に相応しいと思う。
故に、僕は孤独な存在——いや、違うな。孤高な存在の僕は、周りの人達と解離しがちだ。
偏差値が30違えば会話が通じないと聞いたことがある。
正しくその通りである。僕と彼等では話が合わないのだ。
と言えど、僕以外の労働者メンバーでコソコソと話をされるのは些か良い気分ではない。
「何を話していたのか、僕にも教えるのだぁ!?」
一時間の休憩時間。
僕は彼等を問い詰めたものの、誰も口を開かない。
何を考えているのかは知らん。但し、怪し過ぎる。
「僕だけを除け者にする気か。そちらがその気なら、僕だってお前らを除け者にするだけだ……お、覚えていろよ」
労働勤務中トイレに行くと周りを騙して、僕はこっそりとボスの元へと足を運ばせていた。理由はただ一つ。密告だ。
「何の用だ? お前仕事はどうしたんだぁ?」
煙草をぷかぷかと蒸して、ボスは強めの口調で言った。
怒気が込められているのは重々承知だが、このまま帰るわけにはいかない。
「実は労働者メンバーが何か良からぬことを企んでいます」
媚びて媚びて媚びまくること。それが僕の出世術。
そして、簡単に自分の地位を高める方法。
それは仲間を売ることだ。以前から僕はボスに対して、労働者達の愚痴を密告していたのだ。結果、反抗的な態度を持つ奴等は全員が調教される仕組みだ。僕たち以外にも代えは幾らでもいるらしく、気に入らない労働者は処分されている。
ここに来て二ヶ月が経過したけれど、僕以外のメンバーは全員入れ替わってしまった。
要するに僕はタイムキーパーなのだ。労働者達がボスに反抗する姿勢を見せる前に、僕自身が奴等の悪事を密告し、もう二度と反抗できないようにする為の。
「ほう……なるほどな。良からぬこととは?」
「そ、そこまでは……な、何とも……」
「使えない奴だな。また、お前は木に吊るされたいのか?」
「ひ、ひぃ……そ、それだけはご勘弁を……」
虫を見るだけでも現在の僕は身体が震えて動けない。
手の指先に少しでも触れて程度でも軽く失禁するほどだ。
もう二度と虫には触れたくない。というか、殺処分したい。
「まぁーいい。ボンボン、実は管理人を増やす予定だ」
「えっ……? ボス以外のですか?」
「そうだ。面白い奴を見つけてな。抑止力にもなるだろう。まぁー期待してればいい。お前は引き続き、ゴミ共の動向を探れ。何かしら新たな情報があれば、オレに全てを教えろ」
「御意っ!? 全部任せてください、ボスっ!?」




