表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/20

 とある夜、私が仕事から帰ってくると、婚約者のルークが不機嫌斜めの顔で怒鳴ってきた。


「今までどこに行ってたんだぁ! このアバズレがぁ。どうせ他の男に色目を使っていたんだろ。全て分かってんだぞっ!」


 謂れなき言葉にイライラが止まらない。普通に仕事をしていただけですが、何か文句でもありますか? あなたとは違って、社会に力を認められて人々の為に行使しているので。


「大体、夫の飯を作るのが、妻の役目だろ? それなのに自分の仕事を放棄し、遊びに出かけて。婚前という大事な時期に、本当に何をやっているんだか。気がしれないね、全く」


 夫の飯を作るのが、妻の役目? それって誰が決めたんですか? そもそも私は仕事があるんです。無能なあなたとは違ってね。風の噂で聞きましたよ、役に立たないからクビにされたんですってね。それなのに自分に見合う仕事じゃなかったと、声を高々にして、初恋相手さんに言ってるそうじゃないですか?


 彼女の顔一度でも見ましたか? かなり嫌がってましたよ。

 もう汚物を見る目でしたよ。コイツの相手面倒だなというのが物分かりですよ。それなのに気づいてないって馬鹿丸出し。


 そろそろ怒りも限界なので言い返そうか。


「あのね、言わせてもらうけど……」


 私が口を開こうと瞬間、ルークは顔を歪めて。


「出た。今から始まるのは、口答えかな? 自分の怠慢を指摘されたら、お次は僕への説教ですか? それで気が済むんだったら、どうぞご自由にしてくれ。君の気がそれで晴れるなら」


 仕事だったと言ってんだろうが。この男は耳が悪いのか?

 何か、耳に詰まってんのか? このままでは埒が明かない。


「全く、君の父上が、僕の父上にどうしても我が娘と、ルーク様を婚約させて下さいと頼み込んだから、わざわざ婚約してやろうと思っていたのに。君は、それを棒に振る気か?」


 幼い頃に、私の父とルークの父が子供同士を婚約させようと決めたのは聞いたことがある。けれど、私が聞いた話によれば、向こう側からどうしてもと頭を下げられたと聞いている。


「ほらぁ、出たよ。黙りだ。何も言い返せなくなったら、君は毎回黙り込む。弱い犬ほどよく吠えると聞くが、正しく君のことじゃないか?」


 あの……頭大丈夫ですか? 吠えているのは、貴方の方じゃないですか? そもそも私、一言しか喋ってないし。

 まぁ、心の声でずっと喋っているんだけど。あーイライラする。


「僕の愛しい愛しい初恋相手——ミーシャとは大違いだ。君も、もっともっとミーシャを見習ったらどうだい? 君とは違って料理も上手で、目上の僕への態度もなっているし、何よりも世界中のどんな宝石よりも美しい」


 うんうんと腕を組んで頷くルークには悪いが……。

 そのミーシャ、私に言ってたよ。


『アメリアも大変ね。あんな酷い男に嫁ぐ羽目になるなんて」とか『口答えすると面倒じゃない? だから適当に合わせてるだけよ。あの人、適度に褒めてたら勝手にお金とか宝石とかくれるし。まぁーぶっちゃけ、ただの金蔓って感じかなー? あ、今の絶対にあの人には言わないでね。あの人にバレたら、色々と面倒じゃない? ストーカーとか最悪だし』


 あとね、ミーシャは言ってたわよ。こんなことも。


 ——実はね、わたし結婚してるの、王族の方と——と。


 良いことを思いついたと言わんばかりに、ルークは両手を叩いた。猿の人形がタンバリンを持っている玩具があったけど、それに若干似てるわね。


「あーそうだ。父上に頼んで、ミーシャと結婚しよう」


 行動も猿なら、頭の中も猿ね。本当無様。


「というわけで、アメリア。お前とは婚約破棄する」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ