『98話 商人ギルドで賃貸を』
『98話 商人ギルドで賃貸を』
◇商人ギルド
レーンも一緒に商人ギルドへと足を運んだ。
農民ギルドに賛成の姿勢を示してくれたレーン。
キアラの話では商人ギルドとは、主に商人が登録をしていると。
商人は町にお店を出したりする。
ギルドは冒険者ギルドと似た外観だった。
中に入ると冒険者ギルドよりも静かであった。
「こんにちは」
「俺はタケダと言います」
「タケダって、農民のタケダですか?」
「はい。農民です」
商人ギルドの職員は名前で俺だとわかる。
名前が有名になっているのは確かなようだ。
「それで何の要件でしょう」
「王都に農民ギルドを作りたい。そして本部事務所を構えたいと思った。空いている建物はありますか?」
「事務所を構えたいのでしたら、王都には空き店舗があります。店舗の大きさや場所によって賃料が変わります」
空き店舗はあるらしい。
後は大きさは登録したり集まったり出来る程度は欲しい。
「大きさ的には、農民が集まるので、冒険者ギルドくらいの広さが必要。場所は王都ならどこでもいいです」
「お探しします」
職員は物件を探してくれる。
女性の職員であり、美しかった。
俺の話にも反対意見はなくて良かった。
「この近くに物件がございます。広さも十分に確保されています。どうでしょうか」
資料を拝見させてもらうと、冒険者ギルドくらいは広いらしい。
それに賃料は毎月払う形になった。
今の俺なら魔物の討伐による報酬かアイテムボックスにある。
問題なく払える金額であったから賃料の心配はない。
「この物件で契約します」
「ありがとうございます。あと一つ確認したいことが。農民ギルドとはどの様なことを目的にするのですか。初めて聞いたからです」
契約した際に美人職員が質問をした。
美人という訳ではないが、俺は質問に答える。
「農民ギルドは俺がギルドマスターになり、国の農民と協力する組織を予定してます。商人ギルドや冒険者ギルドのようになれたらと思ってる」
「ギルドを個人で組織化すると。ギルドマスターになると。何とも大きな話ですね。農民は借金生活している人が多い。生活苦で、困っている。タケダが助けるなんて素敵な話です。上手くいくといいですね」
「ありがとう」
商人ギルドの職員は俺の構想を受け入れてくれた後に、新しいギルド本部事務所へと行ってみる。
◇本部
「ここがタケダ様の作る本部になる場所よ」
「まだ何もないけど、これから準備していきたい」
空き店舗だけに中は空っぽだった。
テーブル一つない。
全て自分で用意しなくてはならないのは大変な仕事になるな。
「汚い」
「誰も使っていなかったからだろう」
「ご主人様、掃除が必要と判断します」
「掃除を開始しよう。みんなで頼む。アイテムボックス、モチモップ、モチホウキ、モチチリトリ」
モチで作ってあった掃除道具を取り出す。
部屋には掃除道具らしき物はなかった。
持つ部分はモチを硬くしてあり、折れない。
先の部分は柔らかいモチを採用し、床にあるホコリ、ゴミを取れる。
さらに洗って何度も使えるよう工夫した。
「モチの掃除道具があるの?」
「タケダ様のモチは、道具にも武器にもなる」
「便利なのねモチは」
感心しているレーンにモチホウキを渡す。
キアラにもモチモップを。
「一から立ち上げるのは苦労はいるだろう。タケダの手伝いはしたくない」
「はい、レーン、これを運んで」
「手伝いさせる!」
キアラと一緒にレーンは本部の掃除をしてもらう。
まさか掃除をするとはと言う顔で掃除を開始。
「ゴミがあるし、掃除をするのよレーン頼む」
「まさかキアラに指示されるとは。それにセレスタ国の姫なのよ私は。姫に掃除させるとは、あり得ませんことよ」
姫に掃除をさせるのは俺くらいかもしれない。
我慢してもらおう。
キアラが床の掃除を始めると、床には使っていなかったため、多くのゴミがあった。
ゴミを掃除する際にキアラは前かがみになる。
姿勢を前にしたため、胸が重力で下に露出された。
俺はそこは見ないようにした。
レーンも同じ姿勢となる。
そうなると同じ大きさの胸を持つレーンもまた魅力的な胸を露出していた。
「ご主人様、天井も汚れてますから、掃除します」
「頼む」
フェンリルが天井の汚れに気づいた。
確かに天井にはホコリがいっぱいあったのが俺の目にもわかる。
フェンリルは自発的に天井掃除を願い出た。
「ああ、でも手が届かないです」
天井は高いので、フェンリルがいくら手を伸ばしてもホコリが取れないでいた。
今のままでは難しいだろうな。
俺が下に土台となれば届くだろうか。
「フェンリル、俺が土台となる。俺の背中に乗りなさい。そうしたら天井に届くだろう」
「わかりました。やってみます」
俺は床に四つん這いの姿勢を取る。
そして四つん這いになった俺の背中にフェンリルは葦をのっけて立った。
フェンリル一人が背中に乗ったくらいは何ともない。
天井を掃除してもらえるなら、楽なものだった。
「ご主人様、天井のホコリが面白いように取れます」
「その調子で頼む」
背中に乗ったフェンリルは、俺には見えないがすいすいとホコリを取っていた。
床に落ちてくるホコリがその証拠だ。
見なくてもわかる。
少しホコリを取ると俺は移動した。
そうして天井をまんべんなく掃除してもらう。
ギルド本部の掃除を開始していくと、部屋は段々と綺麗になった。
「綺麗になった。レーンは掃除上手いわよ。モチハウスも掃除してよ」
「嫌よ。なんで姫に掃除させる。しかも家まで。タケダに言いなさいよ、持ち主なんだから」
「タケダ様はモチ作りがある」
キアラとレーンもモチホウキでの掃除をしてくれたおかげで、床にあったホコリが綺麗になった。
新しい本部を作るのにゴミをだらけでは良くない。
「きゃあ〜!」
掃除が進んでいた時にキアラが叫んだ。
「どうした?」
俺は四つん這いのままな為、キアラの声だけ聞いた。
現状が見えないが、叫んだ感じだと何あったらしい。
「黒い虫がいます、速く床を這ってます!」
「居るわっ、気持ち悪い!」
レーンも叫んだ。
犯人は黒い虫らしい。
恐らくはキッチンなどに生ゴミ場などに現れる気持ち悪い黒い虫のことだろう。
俺もたまに見かけるが、気持ち悪い。
しかも動きは速いと来るから、困ったものだ。
「モチホウキで叩いてしまえばいい!」
「ほらっ、ほらっ!」
「叩き潰せ!」
キアラとレーンが二人がかりで潰している。
気持ち悪いのはわかるが、俺の方に近づくのはやめて欲しい。
今の俺は見動きが取れないからだ。
「キアラの足もとっ」
「やだっ〜」
キアラはところかまわず床を叩いた。
にもかかわらず、黒い虫を潰せないのは残念だ。
しかも一段と俺に接近中だ。
危ない予感がした。
「ちょっと、キアラ、こっちに来ると危ないわよ、ご主人様の背中の上に居るのだから」
「だって潰せないのよっ」
「ここよ、タケダの近くにいるっ」
「死ねっ」
「こっちに来た〜」
黒い虫がするするっとレーンの足もとに行くと、レーンの足に止まった。
絶叫した後にレーンは後ろに倒れてお尻をついた。
パンツが見えている中、キアラも同じくお尻をついたため、スカートがまくられてパンツは露出されていた。
「危ない……揺らしたら落ちる!」
キアラが俺の近くで叩いたりした時にフェンリルと接触したのだろう。
フェンリルは俺の背中の上でゆらゆらとバランスを崩していた。
「フェン!」
「ああっ!」
バランスを崩した結果、俺の背中から倒れてしまった。
ただし俺が下でクッションの代わりになるのを、とっさに決断。
このままフェンリルが落ちたらケガをするのを未然に防ぐ。
クッションとは言え、人を守るのは大変である。
フェンリルは俺の体に被さるようになった。
「うう……ご主人様」
「フェンリル、胸が顔に当たっているが……」
俺の顔にフェンリルの大きな胸が置かれてあるので、息が出来ない。
顔よりも大きい胸なので、フェンリルに移動してもらう。
「ご主人様がクッションになったから私はケガはありません」
「俺もケガはない」
例の黒い虫はどこに行ったか?
「黒い虫は?」
「飛んで行きました。もう本部には居ませんし、安心です」
「これで本部の掃除は終わりだ。テーブルや椅子も用意したいし、受付嬢もいる」




