『95話 農民に囲まれる』
『95話 農民に囲まれる』
「タケダ……」
「はい…………」
農民に名前を呼ばれ沈黙した。
「ありがとうっ!」
「話は聞いたぞ、害虫を駆除してくれたそうだな」
「農地は守ってくれたと聞いたよ!」
「森にいたアンデッドも全滅させたらしいな。凄い。農民タケダはやはり凄い!」
俺は間違いなく怒られるだろうと思っていたから、農民が大喜びしたのを、直ぐには受けいれられなかった。
ちょっとしてから農民と握手もしたあたりで、頭で理解できた。
どうやら俺にお礼を言いに来たようだ。
集団で来るから、不安になった。
「俺は農民を守りたくて当然のことをしたまでです。農地は回復するのに時間がかかるでしょう。それまで大変だと思います」
「タケダには何とお礼をしたらいいのか、俺達農民はタケダに感謝する。町にタケダの像を作るのを決めた」
「タケダ様の像が作られるの。良かったですね」
「良くない。俺は有名になりたくないんだが」
農民から衝撃的な発言があった。
俺の像を勝手に作るのを決めたらしい。
そうなったらセレスタ国で俺の名前と顔がいっそう広まる。
あまり良いことだはないのだが、キアラは喜んでいる。
「いやいや、タケダは町の歴史に残る人物だ。伝説になる」
「ご主人様が伝説になるのを歓迎します」
「俺の像は置いておいて、農民の人が困っているねこの町だけでないと考えている。ある考えが俺にはあるのですが、それは世界にいる農民を束ねる組織を作ると言う俺の発想なんです」
この町以外にも困っている農民はいると思う。
以前から考えていた俺の考えだ。
「それは、世界にいる農民をタケダが守るということかい。タケダなら出来るかも知れない。町を救った男だ!」
「タケダが世界に組織を作るのは賛成だ。農民は世界で生活に困っているのが多いんだ。タケダが変えてくれるなんて期待したい!」
俺の考えに農民は否定せずに励ましてくれた。
話すのは勇気がいったものの、言って良かった。
「タケダ様が組織を作る話は初めて聞きました。いつから考えていたのです?」
「祝祭の話を聞いてからだ。世界各地に行ってみて思った」
「ご主人様の組織ならば魔王様も加盟します」
「しなくていい」
魔王だけは要らないメンバーだ。
「この案はまだ検討中なので、農民の皆さんには力になってもらいたい」
「わかった、タケダの頼みなら俺たちは惜しみなく協力を約束しよう!」
「ありがとう」
農民の皆さんからも熱い声援をもらった。
こんなに歓迎されると俺もやる気がわいてくるものだ。
ただしどうやって組織を作るのかとか、具体的な内容は検討中である。
俺は冒険者ギルドにも付き合いが悪く、仲間も募集しない、単独タイプな人間だった。
組織を作るとなると、今までにない大変な労力が必要だろう。
キアラとフェンリルの協力も絶対に必要があるな。
◇ドミナートス町 飲み屋
農民との間で話あった後にレーンを呼んだ。
場所は飲み屋で、もう町には用事がないので、帰る際に飲み屋に行こうとなったからだ。
レーンは快く付き合ってくれた。
彼女も俺には恩義を感じてはいるからだった。
飲み屋は町の中心街にある。
並びも飲み屋があり、酔っぱらいの男どもが多くいた。
冒険者らしき者が多い。
害虫駆除で金を稼いだのか。
「レーン、飲み屋に来てもらいありがとう」
「いいえ、タケダに依頼をしたのは私だ。これは依頼料だ、受け取れ」
多額の金貨を俺の前に並べた。
近くの酔っぱらいは、金貨を見て思わずコップの手が止まる。
酔っぱらいには破格の金貨だろうが、俺には無用な金貨だ。
「要らない。俺は自分の意志で依頼を受けた。農民が苦しんでいるからと蒸気風呂で聞いたから依頼を受けたのであって、金貨欲しさではない」
「本当に要らないと」
「要らない」
俺は再度断る。
「ご主人様は金貨を受け取らなくても、アンデッドロードの魔石を持ってますから、超破格の報酬が冒険者ギルドから出ますよ」
「へえ〜フェンリル、アンデッドロードはランク高いの?」
「魔物のランク的には、Bの上からAランクあたりでしょう。まぁ私よりは低いのはきくまでもない」
フェンリルの話に近くの席にいる酔っぱらい冒険者は顔が真っ赤なのが青くなっていた。
「逆に冒険者ギルドが困る。我がセレスタ国のギルドでは換金するな。ムイト国のギルドで換金してくれ」
「わかったよ、ムイト国に帰るまで換金しない」
同じ魔石から報酬を得るのも、莫大な報酬が出るから言ったのだろう。
まぁ俺はどちらでもいいから、ムイト国にすると約束した。
「レーンにはタケダ様から重要な話があるの」
「キアラ、何の話かな?」
キアラが言うのを聞いた感じでは、まだレーンは知らないらしい。
「タケダ様と農民の間で話をしたの。レーンは農民から聞いていないのね」
「知らないわ、タケダ教えて」
「俺が農民と話あった件。それは世界にいる農民達を組織を作り俺が守るという構想だ。農民のための世界的な組織を俺が作りたい。だけどどうしたらいいか、レーンは姫なのだし、いい案があるかなと思った」
「ええっタケダが世界にいる農民の組織を作りたいと…………なんともタケダらしい発想だな。現在のところタケダの言う組織は存在しないだろうな。聞いたこともないし、農民には組織を作る金も力もないのが現実だ。世界の国が認めるかも微妙だ」
「国が反対したら無理なのか」
「個人で作るには国王や貴族から支持を得る必要がある」
そう簡単には作れそうにないときた。
普通に考えて誰も作っていないのだから、難しいと思える。
「ムイト国に帰ったら考えたらいいですよ、国王に相談してみたらどう」
「ミネイロ国王か。そうだな、国王なら相談にのってくれるかもな」
「相談にのってこなければ、ご主人様に代わって国王を呼び出します」
「呼び出さなくていい」
「はい」
一度は、ムイト国に帰るとするのがいい。
組織を作るのにムイト国が一番やりやすそうだから。
その後、飲み屋でレーンはかなりの量の酒わを飲んでいて、キアラとフェンリルもつられたのか、お代わりしていた。
三人とも酒に強いのかと思っていたら、フラフラとしてテーブルに顔を埋めてしまった。
「歩けるかキアラ?」
「……うう、タケダ様。もう飲めません」
「酔ったな……フェンリルは歩けるか?」
「……ご主人様、抱っこしてください……」
「ダメだ。二人とも寝ぼけているな。酒に弱いのだろう」
キアラとフェンリルは体を揺すっても起きなかった。
「レーン、起きれるか?」
「んん〜、タケダには負けぬ……」
「レーンも起きないか。仕方ない、三人を俺が持ち帰るしかないか……」
結局レーンも酔っていて、歩けそうになかったため、俺が飲み屋から運ぶしかなくなった。
なぜ俺が面倒をみなくてならないのかと思いつつ、レーンを背中におんぶした。
その後に両手で、キアラとフェンリルを抱きかかえる。
キアラとフェンリルはお腹を抱えるようにして持ち上げたため、お尻も持ち上がる形になった。
二人ともスカートであったからお尻を丸出しになり、お客の目は自然と集まっていた。
飲み屋の店主に会計をして出た時に、店主は大丈夫なのかと心配してくれた。
外に出てからも三人を運ぶ。
背中におんぶしたまま背中に何か弾力のあるものを感じた。
歩く度に背中に当たる。
レーンの胸が俺の世界に密着していた感触だった。
しばらく歩いて空き地があったから、そこでアイテムボックスでモチハウスを使用した。
◇モチハウス
まずキアラをベッドに降ろし寝かせた。
全く起きない。
次にフェンリルを隣に寝かせたところ、こちらも寝ているようだ。
魔族が人よりもお酒に強いわけではないらしい。
何やら言っているが、ほとんど聞き取れないので無視した。
最後にレーンを背中から降ろし、ベッドに寝かせる。
本来なら別に寝床は用意されてあるだろう、姫なので。
しかし今はこの状態であるから、モチハウスで寝かせて良いと判断した。
俺は自分のベッドで寝る。
キアラ達とは別れて寝入りした。
お腹もいっぱいになったから、眠気が来たのだった。
ベッドで寝ていて、夜も遅くなったあたり。
急に俺のベッドに物音がした。
モチハウスには鍵を掛けてあるので、他人は入れなくなっている。
ベッドに入ってきた人物の様子を見ると、キアラとフェンリルだった。
「キアラ、どうした?」
「う〜ん」
「うう……」
キアラとフェンリルとも寝ぼけていた。
俺の言葉にかろうじて答えたといった感じで。
この様子だと酔ったのがまだ抜けていなくて、寝ぼけていると思われる。
キアラが俺の右腕にきて、フェンリルは俺の左腕に来た。
二人が両腕に抱きついてくる風になった。
寝ぼけているから、記憶はないのだろう。
「うう…………」
「レーン?」
両腕がガッチリと固定された状態の俺。
俺の上に覆い被さって来たレーン。
この感じはキアラと同じ酔っていてる。
「うう……」
俺の上に完全に乗っかってきて三人に抱きつかれたまま俺は寝るしかなかった。




