『84話 定員オーバー』
『84話 定員オーバー』
モチジェットに乗せると言うと。
「ええっ、私達もこれに乗れと……」
「レーン、信用していいのかと……」
レーンはやや不安な顔に変わる。
俺のモチジェットが得体の知れない乗り物に思えるようだ。
「乗れますかねご主人様、座席が苦しいのでは」
「フェンリルは俺の上に座ればいいだろう。そうしたら座席は一つ分できる」
「ええっ、ご、ご、ご主人様の上に座れと……」
急に顔を真っ赤にしだしたフェンリル。
尻尾が落ち着かないのか、動きだしている。
「フェンリルはタケダ様の上で決まりね」
「わ、わ、わかりました」
「キアラは俺が抱くけどいいな」
「ただ、だ、だ、抱くけど!」
「もう一つ座席に余裕ができるだろう。それでレーン達を乗せよういいかな」
「た、た、タケダ様に抱かれながら、乗るのですね…………」
キアラはリンゴのように真っ赤に変色しているが、大丈夫か。
レーンと女の四人を後部座席に座ってもらい、フェンリルは俺のももの上に、キアラは片腕で抱きよせる。
キアラを落ちないように気をつければ問題ないな。
かなり定員オーバー気味ではあるが出発としよう。
「キアラは俺が落ちないようにしっかりと抱いている、暴れたら落ちるぞ」
「絶対に落とさないでくださいタケダ様!」
不安になるキアラはレーン達の後部座席からは、お尻は丸見えだろう。
「タケダよ、目的地はセレスタ国のドミナートス町だぞ」
「わかった、ドミナートス町だな飛行する」
「飛行?」
飛行と聞きレーンは慌てる。
「飛行する乗り物だからなモチジェットは」
モチジェットを出発させると、勢い良く地面にモチを発射。
一気に上空に飛行した。
「ええっ、本当に飛行しているぞ。落ちないか?」
「落ちたことはない」
「どうなっているのだ…………」
「レーン、死にたくないです」
「ひぇ〜落ちる」
「キアラ、ジタバタするな。本当に落ちる」
「タケダ様〜」
「ご主人様の上に座り、重くはないですか?」
「重くはない。ただし尻尾が邪魔だな。前が見えないから、下に尻尾を下ろすぞ」
俺の太ももの上に座らせたフェンリル。
しかし予想外に尻尾が俺の顔に邪魔する。
そこで尻尾を掴んで見えるようにしたところ。
「ご、ご主人様、そこはダメです…………」
フェンリルは可愛い声で言った。
レーン達の顔は引きつっているのがわかる。
飛行したのは初めてだろう。
後部座席なのでわからないが、絶句している風にも感じた。
まぁほんの一瞬で到着するから心配はないと思う。
セレスタ国のドミナートス町に方向を定めて、飛行する。
◇セレスタ国 王都
モチジェットは、キアラがジタバタした以外は、問題なく着陸。
「た、た、タケダ様、死ぬかと思った」
「死ぬわけ無い」
「もう少し優しく扱ってください」
「わかった、次から考えておく」
キアラはモチジェットから降りると、足がガクガクしていた。
「も、もうドミナートス町に到着したのか。速すぎるぞ」
「ドミナートスくらいなら、この程度の時間だな」
「いいえご主人様、いつもよりも遅かった。きっと定員オーバーなので、少しだけ遅くなると考えられます」
「そうか少しの時間かかったか」
フェンリルから言われて、確かに遅かったと言われたらそうかも。
やはり多く人を乗せると違うらしい。
それに運転しにくかったのもある。
「これでいつもよりも遅いて……」
「到着したから、レーンが会いたい人の所に行こうか」
誰かは知らないから案内してもらうのがいい。
モチジェットは収納しておくのも忘れない。
「案内する」
レーンを先頭に歩いた。




