『65話 エナジー姫はどこに』
『65話 エナジー姫はどこに』
「ご主人様、エナジー姫を救いました。これで思う存分に攻撃を開始して」
「フェンリル、ありがとう」
フェンリルが離れたのを見たあとに、俺は攻撃モードに頭を切り替える。
オークキングは、エナジー姫を離した。
そして両手でモチマスクを引き離しにかかると、やっと剥がすのに成功した。
モチマスクを剥がして遠くに投げた。
だがもう遅い。
オークキングの呼吸はかなり苦しいだろう。
少しの間は、無呼吸だったのだから、肩が上下に動いていた。
呼吸の乱れは、戦いにおいては致命的なミスとなる。
相手に多大なチャンスを与えるからだ。
この巨体を倒すのに最適なモチを考える。
「アイテムボックス、モチヴォルケーノ」
モチヴォルケーノを選択。
モチを温めたまま高温でアイテムボックスに入れてある。
高温にまでモチを取り出す。
強烈に熱い。
手が火傷するので一発しか無理だろう。
モチヴォルケーノをオークキングに向けて放つ。
ヴォルケーノは高温のまま飛んでいくと向かう途中で爆発的に超高温になる。
オークキングに当たる前に炎に包まれ、モチが巨大な火の玉になった。
真っ赤な炎の球がオークキングの体に命中した。
呼吸が苦しいオークキングは、防御すら出来なかった。
ウォーーーーー!
オークキングの胴体全体にヴォルケーノの熱と炎が移ると、炎に包まれて暴れだす。
周りの大木をぶち当たりながら熱さから逃れようとするが、意味はなかった。
そのまま倒れていった。
体からは煙が出ている。
「タケダ様〜〜」
キアラか俺のところに来ると、嬉しそうに喜んだ。
「さすがにご主人様、オークキングをも一撃でした。魔王様でも一撃では難しい相手でしょう」
「オークキングは強かった。逆に俺がやられていても不思議はなかった。それとエナジー姫を助けたのは速かった」
「エナジー姫を助けるタイミングを待ってました。ご主人様なら必ずエナジー姫を引き離すのではと思っていたからです」
あのフェンリルの助けるタイミングの良さは俺も驚いた。
俺が指示するのをわかって待っていたとは、フェンリルのおかげが大きいな。
「な、な、あなたは本当に農民なのか?」
フェンリルに助けてもらったエナジー姫は、オークキングの戦いを見ていたらしい。
「タケダ様は農民です。農民タケダ様としてムイト国では有名。強いでしょ」
「ガーネット国の最強冒険者も知っているが、こんな戦い方は初めて見た。信じられない。助けてもらったのは感謝するわ」
エナジー姫は、半分諦めていたのか、信じられない様子だった。
普通にオークキングを倒せる冒険者がそもそもいないのもあるとは思う。
「け、け、ケタ違いだ。オークキングて言ったら高ランク冒険者でも死ぬのだろ。それをたった一撃てあり得ないだろ……」
鉱夫はさらに驚いていた。
オークキングを見ている時よりも震えているのは、俺のせいか。
「鉱夫さん、ご主人様は農民です。コメから作ったモチで倒したのですよ」
「コメから作ったモチ……コメてあの食べるコメですか」
「そうです」
「コメでオークキングを倒したと。不可能ですよ」
「ご主人様は倒しました」
「どうなっているのか理解できません」
鉱夫に説明をするのはかなり難易度高そう。
俺も説明はよしておく。
目的はエナジー姫を救出するのだった。
救出が達成できたから、文句はない。
オークキングは完全に息絶えているから、素材と魔石を回収したら、村に帰れるだろう。
「フェンリル、素材と魔石の回収を頼む」
「回収します。オークキングは牙もあり、爪もいい値段がつくそうです」
倒れているオークキングのところに行って回収作業をしてもらう。
オークキングが片付いたから俺的に仕事は終わった感があるが、一点だけエナジー姫に確認をしたいところがある。
「エナジー姫、オークキングが湖の河口を破壊していた。それで村は洪水になったのは間違いないんだ。オークキングが出現した時は、どんな感じだったかな。最初から暴れている感じだったかな」
「私は鉱夫を連れてミスリルが採掘された地点に行きました。そこは長いポッカリと穴があった。洞穴だった。洞穴のなかの土からミスリルが取れた。今回は鉱夫に掘ってもらった。そしたらオークキングが洞穴の奥から現れた。鉱夫は全員逃げるように指示したけれど逃げ切れなくて、オークキングとの戦闘になったの。その結果は惨敗でした。火魔法でオークキングに応戦したものの、オークキングに掴まれていた」
洞穴の奥から出てきたか……。
そこが気になるよな。
エナジー姫の火魔法は通じなかった。
「そうなるとタケダ様、オークキングは洞穴に居たとなりますね。住んでいたのかな」
「たぶん、その可能性があるな。オークキングの住処だったら、ガンガンに採掘していくと、音がうるさいだろう。それで機嫌が悪くなり、湖の河口を破壊したのかもな」
「かなり暴れていましたからね。寝起きが悪いのでしょう。そこをエナジー姫が起こしてしまった」
「機嫌が悪くなったのは、そうかも知れない。しかしまさか洞穴の奥にオークキングがいるなんて知らなかったから。知ったいたら入らなかった。村の人はそんなことは、ひと言も私には言わなかった」
エナジー姫は、本当に知らずに入ったらしい。
運が悪いといえばそれまでか。
「そこらへんは村長に後できくとしよう」
「つまりは私がミスリルを採掘に強引にしたのが、全ての始まりだとおっしゃるのですね」
「そうなる。ミスリルを採掘しなければ、オークキングも出なかっただろうし、村は洪水にはならなかった」
これはエナジー姫に言うのはの厳しいが、実際にそうなる。
「悪かった」
「私達に謝ることないわ、それよりも村人に謝ったらいい。きっと納得したら許してくれるわよ」
「そうします。ミスリルはもう採掘しません。国王にもそう伝えます。また魔物が出たりしたら、大変だし」
ミスリルを捨てるのは国には損害だろうが、それ以上に損害が起きたら大変なのと思ったよう。
国王には会ったことはないが、ミスリルは採掘しない方がいいだろうな。
「それが一番いいと思う」
「俺はあと一つやりたいことがある。湖の河口が壊れてた。このままだと少しの雨でも湖に水が溜まらないし、村に洪水が起きる。湖の河口を復元したい」
これは大事だ。
そうしないと雨の度に大洪水が起きる。
川には俺がモチガードで防波堤をしてあるから、最低限の洪水は平気だ。
しかし念のため河口も直しておくのがベストだろう。
「復元て……あれだけ派手にオークキングが壊したのを復元するのはタケダだけでは無理でしょう。王都の建築士と土木工事士が必要。私が呼びますよ」
「呼ぶ必要ない。俺が一人で復元しておく」
王都の土木工事士でも良いのだが、来るのに時間がかかる。
それにその間にまた雨が降ると困る。
「ご主人様が任せてというので、任せましょう。エナジー姫は、まだご主人様の本当の凄さを知らないのです」
「オークキングを倒したのは、認めます。とても強い。しかし河口を復元するのは土木工事業です。建築時間は何ヶ月もかけて治すのは姫である私にも常識でわかります」
エナジー姫は俺が治すのは無理だと決めつけているようだ。
「エナジー姫、タケダ様は農民ですが、土木工事士をも超える力があります。土木工事業をタケダ様にお願いしましょう」
「いやいや、それは鉱夫の俺も嘘だと思うぜ。農民が土木工事をやる話は聞いたことない。オークキングを倒したのは、びっくりしたが、あの壊れた河口を治すのは何十人もの土木工事人がいる。それでも何ヶ月かかる仕事だ。ちょっと俺を馬鹿にしているな」
エナジー姫だけでなく鉱夫も少し怒り気味である。
土木工事は大変な労働なのを知っているから言えるのだろう。
もしかしたら鉱夫も土木工事をしたことが多少なりとも、あるのかも知れない。
それでも俺の農民流の土木工事をする。




