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『61話 残された村人』

『61話 残された村人』



「農民さん、彼らを助けられるか?」

「農民さん、お願いだ、彼らを見殺しにしないだくれ」

「農民さん、あなたを馬鹿にしたのは悪いが、このままだと死んでしまう」


 船にのってくれた村人は俺にお願いするように言った。

 

「皆さん、俺に任せてください」


 俺はアイテムボックスを使用。

 

「アイテムボックス、モチガム」


 再びアイテムボックスから、今度はモチガムを選んだ。

 モチにガムは、ボートとは違いコメを柔らかい状態にしてある。

 粘着性のある状態を活かして使うモチである。

 高台とはもう距離があった。

 残された数人は、遠くになってしまい、直ぐに助けられる距離ではなかった。

 そこでモチガムを彼らの方に向かい放つ。

 ガム城のモチが伸びていき、残された村人の体に粘着した。

 

「うわああああ〜〜〜」


 粘着性の特性を活かして村人数人を一度に俺の居る船に引っ張ってきた。

 引っ張られて船に落とす。

 高台はちょうど水面が上がり、高台が消えていったところだった。

 危ないところだった。

 あと少し遅れていたら、アウトだった。

 モチガムを選択したのは良かったようだ。

 俺も慌てていて、他に思いつかなかったのもあった。


「す、す、すげえ、何だ、今のは……一瞬で彼らをここまで持ってきたぜ」

「これもモチて奴なのか、コメでこんなことが出来るるのかよ!」


 村人は絶賛してくれた。

 少し照れくさいが、俺は嬉しかった。

 

「あ、あ、ありがとう、農民。馬鹿にして悪かった」

「本当にありがとう。死ぬところだった」

「助かって良かった。俺はコメ農家だ。俺に感謝しなくていい。コメに感謝してくれ」

「コメから船を作ったり、人を引っ張ったりと、モチてのは凄すぎる。ただの食料品かと思っていたコメ。コメに感謝するよ」

「コメは偉大だ。コメは人を救えるんだ」


 俺はコメの偉大さがわかってくれたので、それで良かった。

 それ以上に俺が評価されたり、持ち上げられるのは興味なかった。

 

「農民、いいぞ!」

「農民は素晴らしいぞ!」

「農民、農民、農民!」


 船の上で農民コールが起きた。

 これはさすがに俺は照れるな。

 俺的には難しいことは何もしていない。

 普通にやっただけだから。

 

「しかし、タケダよ、あなたは何者なんだい、農民にしては、アイテムボックスの使い方は異常だったが」


 ニスタ村長が俺のスキルについて不思議がった。

 その理由は俺が昔、勇者をやっていた時のスキルだと言えばわかってもらえるだろう。

 しかし勇者てのは今は隠しているだけに、説明するのは非常に困難である。

 

「アイテムボックスだけは得意なんですよ俺は……」

「そうなんですか。ただし、まだ川が氾濫している。川があの状態では村は沈んでしまうな」


 言われてみると川の氾濫は鎮まることを知らない。

 過激な増水をしていた。

 このままでは、村は終わりに近いか。

 川の氾濫を完全に食い止めるしかない。

 俺がやる以外はなそうだ。


「ニスタ村長、俺が氾濫を食い止める」

「出来るのか!」

「コメなら可能です。まずは船を少し川に近づけます」


 川の氾濫を止めるには、少し遠すぎるので、川に接近したい。

 接近するため船を移動させたかった。

 ニスタ村長他、村人も乗っているから、うかつには川に近づけにくい。

 村人の中には、怖がる人もいるだろうし。

 

「大丈夫なのか、こんなに川に近づいてさ……」

「そうだよ、危ないぞ……」


 思った通りに怖がる声が聞こえた。

 怖いのは少しだけ我慢してもらい、氾濫を防ぐのをしたい。


「俺が防ぎますから、怖がらなくていいです」

「でも、船に水が入ったら、沈没する!」

「嘘だよな〜」

「沈むことはさせない、アイテムボックス、モチガード」

「おお、またもアイテムボックスを使ったぞ……」


 アイテムボックスからモチガードを選んだ。

 モチガードは、壁を作ることに特化したものだ。

 川の両側に壁のように高い防波堤を建造した。 川は長いから、かなり長い防波堤になる。

 防波堤は川の水位よりも高くした。

 これで川の水が外に流れ出ることはなくした。

 防波堤に水は当たるが、流れ出ることなはなかった。

 固くなるようにモチを仕上げたからで、水に触れてもふやけて柔らかくならないようにしてある。

 

「なんだ、川に防波堤が作られたぞ!」

「びっくりした、これもモチって言うコメで水をせき止めているのか。農民の考えとは思えない大胆な発想だ!」


 村人は俺のモチガードの成果に絶賛してくれた。

 完全に氾濫は治まり、水位は増えることはない。

 むしろしだいに水位は下がるだろう。

 俺はモチボートに乗る村人から熱い声援を受けていた。

 200隻ものボートに乗る村人が俺に向かって手を振る姿は圧巻だった。


「お〜〜い、タケダ様〜」

「ご主人様〜〜〜」


 聞いたことのある声だった。

 キアラとフェンリルの声とわかる。

 そういえば、モチハウスに入れたまま忘れていた。

 モチハウスのあった方と言っても、水位が上がり浮いているはずである。

 よく見るとモチハウスは、モチボートの集まる辺りとは違う方に居た。

 プカプカと水面に浮かんでいて、窓からキアラとフェンリルの姿があった。

 モチハウスには窓がついてあるから、窓からのぞいている。

 俺はモチハウスにボートを近づけた。


「キアラ、ハウスは水は入ってこないだろ」

「はい、全く入りませんが、この船はどうしたの。もしかしてタケダ様が出したモチとは……」

「キアラの思った通りさ。モチボートだ。全部で200隻ある」

「200隻も出したの!」

「あいかわらずご主人様は、やる事は規格外です。誰もこんな事を実行したりません」

「ありがとうフェンリル」

「ご主人様、褒めてませんから」


 モチガードによる防波堤を作った影響もあり、時間とともに水位は下がる。

 ものの一時間で水は消えていった。

 消えた後には泥沼があって、泥沼の上でモチボート200隻があった。

 安全だとわかると、村人はモチボートから降りていた。

 

「村は助かった!」

「農民タケダのおかげで助かったぞ!」

「農民、農民、タケダ、タケダ!」


 村人は泥沼に足をハマりながらも俺にエールを送る。

 

「ご主人様、またも英雄扱い、私も嬉しい」

「フェンリルが嬉しいならそれでいい」

「でもまた農地が泥沼になってる」

「また農地を元に戻すようにするか」


 農地はまたも泥沼になっていて、再び農地になるには時間が掛かりそうである。


「そうですよ、決して村人は絶望的だと思っていませんよ。とても明るい顔をしている」

「そうね、子供なんて楽しそうに泥沼で遊んでいふもん」


 よく見ると子供は駆け回っていた。

 実に楽しそうである。

 まあ悲しそうにしているよりはずっといいのだろう。

 村人の住む家はかなり酷く汚れていそうだ。

 家の中にも大量に水が入ったはずだ。

 家の二階部分にまで達している家もある。

 避難して逃げ遅れた村人は居なかったそうで、それは何よりだ。

 モチハウスも泥沼の上に置かれていた。

 ハウスに入る。


「洪水が来ても村は安全になったのはタケダ様がいたから。また評判が上がる」

「俺は有名にはなりたくないと、いつも言ってるだろう」

「タケダ様がなりたくなくても、世界は待望しています。タケダ様が農民の革命者になる日も近い」

「やめてくれ」


 農民の革命者てのは、大げさすぎる。

 いくらなんでも俺はには荷が重い。

 その日はハウスで過ごした。

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