『59話 雨が降る』
『59話 雨が降る』
その日はまた農地にいって、農地を元に戻すようにしていた。
そんな風に作業していたら、途中で雨が降ってきた。
雨だな。
ポツポツと顔に雨粒が当たるな。
ちょっと不安。
最近になって洪水になった話があったから。
大丈夫か。
「ご主人様、雨が降ってきた。大降りになったら洪水が心配」
フェンリルの髪の毛にも少し雨が濡れたらしい。
獣に近いから、雨にも反応が早いようだ。
「どうしますタケダ様。せっかく泥沼を戻していたのに、また氾濫したら困る!」
キアラは、髪の毛よりも衣服が少し濡れてる。
胸の辺りが透けていたからわかる。
「大変だが、俺にも防ぎようがないな……」
フェンリルが言ったように心配はある。
今日も頑張って泥沼を外に出したりしていたのが無駄になってしまう。
それと雨が本当に洪水して川が氾濫するのかも確認もしたい。
この程度の雨でどうなるかを。
少しの間は、農地にいた。
「洪水があった時は、雨はこれくらいでしたか?
」
俺が農民の方に覚えている範囲でいいからと教えてもらう。
「ええ、そうだな、確かあの時もそんなに凄い量の雨ではなかった、すこしして大雨に変わったんだ。そしたらいきなり大洪水さ」
「逃げたのですよね」
「うん、急いだ。農民はみんな家に帰った。一階は水没したがな」
「それじゃこの雨は危ないですか?」
「ちょっと怖いかな。でもなんで洪水が起きるのかな。ワシも長くこの村に住んでいるが、一度も洪水はなかった。避難した方がいい。タケダとキアラ、フェンリルは避難してくれ。ワシら農民も全員が家に帰る」
「わかりました。様子をみます」
農民の方は、怖いから避難するそうだ。
俺は大丈夫だが、キアラとフェンリルは安全だはないから、いつでも避難させておきたい。
洪水だ死んだら申し訳ないのもある。
「それじゃタケダ、ワシらは帰るぞ」
「じゃあなタケダ」
農民の方は、去っていった際に、俺に手を振った。
「ご主人様、農民の方が帰ってく」
「雨は強くなってきている、フェンリルとキアラも帰ろう」
「服が濡れちゃったわ」
フェンリルの服はシャツを一枚だけ着たような服だった。
そのため、雨に濡れてもはや裸みたいになっている。
「タケダ様、私も帰りたい。濡れてる」
「そうだな」
キアラはもっと裸みたいになっていた。
もう服を脱いだ方がいいと思う。
風邪を引くしだ。
俺が農地から足を上げた時だった。
それまではキアラの服が濡れてる程度だったのが、かなり激しく雨が降った。
俺の髪も濡れてるのがわかる。
フェンリルの尻尾が、ずぶ濡れだ。
ざぁーと泥沼に再び雨が溜まりだす。
早く引き上げてモチハウスに入った方が無難だな。
そうしていると、さらに強い雨に。
「大変だっ、洪水だ、洪水!」
村人の一人が叫んだ。
俺は声のする方に向いた。
「早く家や高い所に避難しろっ!」
川を見たら、川の水域が溢れそうになっている。
いや、すでに溢れているか。
まさかだった。
この程度の雨で洪水になるものか。
直ぐにキアラとフェンリルをハウスに入れておこう。
「アイテムボックス、モチハウス」
俺は直ぐにハウスを出しておくと、
「キアラ、フェンリル、早く来い。ハウスに入りなさい」
「タケダ様っ、洪水みたいよっ」
「洪水でも安全なの?」
「大丈夫だ。ハウスなら大丈夫だから、二人とも入っていて
「はいタケダ様」
「待って、ご主人様は入らないの。そしたら、洪水で死んじゃうよ?」
「俺は村人を最後まで安全かを確認をする。心配しなくていい」
急いでモチハウスに二人を入れた。
モチハウスは、防水仕様になっており、水が入る心配はない。
問題は他の村人の安全だ。
すでに、水位は上がっていた。
足が水没してきている。
マズイよなこのままだと。
「タケダ、また洪水だ。村は沈むぞ」
俺は村人を避難させようとした時に、ニスタ村長と会った。
村長も慌てている。
またも村が川の氾濫で沈むのでパニックになるのは当然だろう。
「またも洪水になったのは驚きました。この程度で氾濫するのは驚きです。嘘みたいだが」
「前回もこの程度の雨でした。そしたら氾濫して村は水没したのです。またなります、もう村は終わりかもな」
村長は悲しそうに話した。
なぜか村は、少しの雨で川が氾濫しちゃう。
理由はわからないが、今は避難が先だな。
「ニスタ村長、俺が救出しますから、村人を全員集めて欲しい」
「えっ、タケダが救う……あなたは農民ですよ。農民が村人を救えるというのかい?」
俺の説明が悪かったらしい。
ニスタ村長はさすがに俺の説明では納得いかなかったよう。
まあ当然か。
もう一回説明し直す。
「俺は農民ですが、普通の農民じゃあない。村人を全員集めてください至急で。ちなみに村人は何人くらいいますか?」
「村人は全部でもっと意味がわからないな。農民に普通も普通じゃないのもあるのかい。まあわかったタケダを信じようここは。タケダを信じよう」
「ありがとう村長」
二回目の説明でもっと困惑したらしい。
俺は説明下手なのか。
今さらだが、そう思った。
ここは反省をしている場合ではない。
今は村人を救うのが使命だろう。
村長が村人に声をかけていた。
村人はパニックになっていて、子供達は泣いている子もいた。
村人の数は、1000人だったから、集まると相当な場所がいる。
もう水の中に水没してしまうと泣いていた。
「タケダ、あなたの言うとおりに村人1000人を集めたぞ。これで全員がいるはずだ。どうする気だ、もう時間がないのだ」
「ありがとうニスタ村長。後は俺の仕事です」
「待てよ、農民が何か出来るのかよ」
「農民に何が出来る、いい加減なこと言うなっ」
集まったのはいいが、みんなが俺に賛同しているわけじゃなかった。
中には、俺に不安感を感じていたし、文句を言ってもくる。
「俺は農民ですが、必ず皆さんを守ってみせます。農民は洪水には決して負けません」
「農民さん、お願いします、ウチの娘だけは助けてあげてっ」
「お願い、俺の息子も頼む!」
「本当かよっ農民、だったら早く何とかしろってのっ!」
「そうだよ農民、もう間に合わねえ、間に合わねえっーーー」
村人は叫んだ時に、川が決壊して大洪水となった。
川から水位は上がり少しずつ氾濫はしていたが、ついに決壊して、川がもたなかったわけだ。
現在俺のいる地点は、比較的に高めの地点だった。
1000人が集まる今の状態を維持するのは困難なのは明らかである。
村の中の水位は一気に上昇してしまう。
直ぐに家の中も水が入り込むくらいだった。
これはヤバいなと、今さらながらあせる俺。
全員が俺に視線を集める。




