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『※58話 エナジー姫が来た』

『※58話 エナジー姫が来た』



 翌日は農地に足を運ぶ予定だった。

 モチハウスでモチを朝食にするのは、最近は当たり前になった。

 フェンリルもモチを口に入れるが、入れ過ぎか。

 

「美味しいですご主人様。そういえばバスルームから出たキアラは、大丈夫でしたか?」

「うん、俺に抱きついてきたが裸で」


 俺にもどうしようもない。


「それと今日は農地ですよね。農民の方を助けなくてはなりませんもの」

「そうだな。俺も協力する」


 朝ごはんはすんなりと終えた。

 その後に、モチハウスを収納した。

 村は変化はないと思っていた。

 泥沼が一日で変わるものではないからだが、明らかに違う点があった。

 昨日よりも人が多いな。

 俺が見た感じでは、村の人間ではないとわかる。

 あれは村の農民や人じゃない、馬も多く停めており、防具を付けた服装であった。

 一人は女性であった。

 同じ防具から騎士団だろうと見受けられる。

 誰だろうか?


「タケダ様……昨日は見かけなかった人たちが多くいますね」

「ああ、俺も気になった」

「誰でしょう」


 近くに村の人が居たから、話しかけてみた。

 みんな集まり、見ていたのは俺たちと同じだ。


「あの女性は誰でしょうか。俺はムイト国から来たので、昨日は居なかったです」

「ムイト国からですか、それじゃわからないでしょう。あの方はエナジー姫ですね。ガーネット国の姫です」

「エナジー姫。初めて見ました」


 ガーネット国のエナジー姫らしい。

 もちろん俺は初めて見た。

 姫というだけあって、美貌を兼ね揃えているのは間違いない。

 しかしなぜこんな田舎の村にエナジー姫が来たのかだろう。

 ここまで来るのは王都から距離はあったはず。

 ガーネット国の王都には行ったから、確かに遠い。


「姫はサラピア山にミスリルが発見されたのを調査しに来てます。ミスリルは貴重な鉱物資源。とても高価ですから、使用するのもいいし、貿易しても莫大な利益が生まれるそうです。そこで国王が命令して、国の資金で採掘をすると決まったのです。最近になって国の派遣された採掘士が大勢来てますから、今日は採掘をするでしょう」

「ミスリルを採掘するのか。国も本気で取り組むらしいな。ありがとう」


 ミスリルを採掘するのに、わざわざ姫と騎士団を連れて来たよう。

 ずいぶんと力のいれようだ。

 

「キアラ、あそこの一人だけいる女性はエナジー姫らしい」

「エナジー姫……名前は聞いてますが会うのは初めて。ガーネット国のエナジー姫は私と確か同じくらいの年齢かな」

「同じくらいの歳には見える」


 キアラは名前は知っていたらし区、同じ歳らしい。

 見た目もそう見える。


「鉱夫が多くいますね、ざっと100人以上はいる」


 フェンリルがおおよその数の鉱夫を数えたが、俺にも100人くらには思える。

 あの鉱夫100人をまずは村の支援に回すのが普通だろう。

 どう考えても、村人が困っているのだからな。

 

「本格的な採掘をするようだ。ミスリルを採掘するとか。しかし普通に考えてこの村人が困っているから、先に村の支援をすると思うが」

「ご主人様、私もそう思います。国が村を助ける為に来たのですよ。そうなると私達も助かるってわけです」

「もう二度と泥沼に落ちないわ」

「落ちても助けないもん」


 鉱夫達は村の中心に集まっていた。

 俺も鉱夫の方に行ってみた。

 彼らは採掘する為の道具類を手にしていた。

 スコップや荷台のある車だ。

 掘った土などを運ぶものと思える。

 みんな体つきはいいから、ある程度の土木作業の経験があるのだろう。

 王都か、どこかで募集して集まったか。


「村長が居ますよ。村長が姫と会ってるわ、タケダ様」

「俺も村長に話がある」


 ちょうど近くに村長がいた。

 色々と話したいことがあるので、ちょうどいい。

 俺はニスタ村長の所に行った。


「ニスタ村長、タケダです」

「タケダか、昨日はどうも農民が喜んでいた。とても助かっている」

「それは嬉しいです。それとエナジー姫についてなんですが、鉱夫が多くいますから、村の復興に協力してもらえるのですよね」


 俺は確認のため伺ってみた。


「それが違うみたいです」

「違う?」

「はい」

「そんな馬鹿なことが……」


 俺が思っていた、村の復興をするのは村長は違うと言ったのは、意外だった。

 俺があまりにも変に思った時にエナジー姫が来た。


「馬鹿とは私のことか」

「エナジー姫! いいえ違います」


 エナジー姫は、俺が言ったのが聞こえたらしい。

 俺に対して言ってきた。


「鉱夫は村の復興とは関係はないのです。私はサラピア山に行く予定。鉱夫を連れてきたのは採掘のためです。そこは理解して。あくまでミスリル鋼材が目的。これは国家の政策なのですから」

「…………」


 俺の意見を真っ向から否定してきた。

 どうやら国は小さな村など気にせず、ミスリルを採掘させたいようだ。

 俺からしたら異常だが。

 国からしたら正常なのだろう。

 俺は、国家の政治的なのは興味ないし、わからない。

 俺は返事をせずに黙っていた。


「あなたは?」

「俺は農民のタケダ」

「農民ですか。私は火魔法使いのエナジー。火に焼かれたくなかったら、村の復興をしておきなさい。山から帰るまでに、わかりましたか?」

「回復させておきます」


 つい俺は本心のまま答えてしまった。

 火魔法使いとか自分で言うあたりは、魔法には自信があるらしい。


「村の人間か?」

「いいえ、ムイト国から来ました。それよりも騎士団の護衛を付けなくていいですか。山だと魔物がでます」

「魔物が出ても私の火魔法で燃やしてくれよう。この火魔法のエナジーが」

 

「…………エナジー姫、このタケダは良く働く者ですから、多めに見てやってください」


 俺が失礼なことを言ったのか村長が謝っていた。

 別に謝る必要はなかったが、村長の立場もあるのだろう。

 そこを考えて、姫に対抗するのはよした。

 

「わかったわ、村長。村の復興を進めなさい。被害は出たのは、復興クエストとして王都や他都市からも少しは来ます」

「はい、ありがとうです」


 エナジー姫は鉱夫を連れてサラピア山に向かうらしい。

 あまりいい感じはしなかった。

 100人近くいる鉱夫は山に行く準備をしていた。

 

「鉱夫、山に行くのは初めてなのかい?」


 俺は鉱夫の一人に話しかけてみた。


「いいや、初めてではない。前回も来た。前回はまだミスリルが出るかわからなかったんだ。ただ少しだけミスリルが含まれている石はあった。そこで軽く少人数だったけど、調査をしに来たんだ」

「今回は大勢で来たわけか。調査したらミスリルが出るとなったから」


 ミスリルが出たとなれば国はお金をかけてでも、採掘しに来るのは想像しやすい。


「その通りです。だから今回は二回目の採掘になる。本格的に採掘して、どれだけミスリルが採掘するかをエナジー姫が確認をする。エナジー姫が見ている前で採掘失敗したら怒られますから、俺達鉱夫も真剣だ。緊張してるのさ」

「穴を掘るのだろう。気をつけて」

「どうもな」


 鉱夫は親切に俺に色々と話をしてくれて参考になった。

 どうやら、前回の時にミスリルが出たのは間違いないようだ。

 

「タケダ様、採掘てのは穴を掘るのでしょう?」

「だろうな、俺も見たことはない。鉱夫はしたことないからな」


 実際にない。

 特別に硬い岩盤を掘る作業は農民とはまた違う仕事になる。

 

「農民と鉱夫では作業が違くのよキアラ」

「フェンリルは掘ったとこあるの?」

「私はあるわよ。鉱夫じゃないけど、獣化して大きな穴を掘っていた。そこに住んだりしていたかね」


 なるほど、フェンリルは獣化したら、化け物の狼だから、洞穴的なところに住んでいても不思議はないか。

 

「フェンリルが穴に住んでいたとはね、知らなかったわ。でも今は無理でしょう」

「無理よ、だってご主人様に獣化できなくされちゃったもん」

「確かに俺がやった。フェンリルが暴れるかも知れないからだった。おとなしくしているのがわかれば、獣化していても良かった」


 あの時は俺も不安だったから、フェンリルから獣化できるスキルを奪った。

 今は思えば、スキルはそのまま残しても良かったか。

 まあどちらでもいいかな。


「じゃあ仕方ないね」

「う〜〜〜んでも、たまには獣に戻りたいのもある。どうにかして獣化スキルを戻して欲しいなぁ」

「無理だな」


 俺はひと言言った。


「もう〜お願いですご主人様」

「無理なんだな」

「フェンリルは今ので可愛いから、いいじゃない獣は可愛くないから」


 キアラはけっこうはっきりと言った。 


「可愛いとかそう言うことじゃない!」


 フェンリルはふてくされて言った。

 しかしフェンリルが今のように俺と一緒に冒険するとはな。

 最初は反抗するかと思ったが、今ではキアラとも仲良しだ。

 お風呂も一緒に入るし、寝るのも一緒だ。

 

「タケダ様、結局は鉱夫は山に行くのですね」


 話はまた鉱夫に戻る。


「ああ、採掘だった」

「また昨日みたいに頑張ります」

「農民もご主人様を待っていますからね」

「おお、タケダ、今日も頼むよ!」

「タケダ、頼むぞ!」

「ほら、ご主人様は人気者です」

「人気はいらないな」


 俺は農民の方に声援を受けたが、少し照れくさい。

 キアラとフェンリルは、昨日と同じように作業へと向かう。

 頑張りますってのが、ちょっと不安でもあるが。

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