『※53話 リザードマンの報酬』
『※53話 リザードマンの報酬』
◇ムイト国
超速度で飛行。
うっかり途中で飛行していた竜族の魔物を追い越していた。
追い抜かれた竜は、今のが人だとは思わなかったはず。
領土に葉入り王都の人のいない地点で着地。
相変わらずの派手な着地で。
それで町の人は、毎度のように驚かされる。
国の中では、途中に頭上を通り過ぎる際にモチジェットを見た人から、未確認飛行物体として、確認されていたとも聞いた。
「緊急クエストは冒険者ギルドに報告ですよね。受付嬢から報酬をもらえます。あれだけリザードマンを倒したし、素材と魔石もある。たっぷりもらいましょう」
「ご主人様、早く早く」
フェンリルが手を引いていく。
ギルドに行くのが楽しい。
活躍したのが嬉しいのを抑えきれない様子。
俺は逆に難しくないクエストだったから、それほど嬉しい感じではなかった。
実は超難関クエストかもしれないが。
「待て待て。走ることないだろう……」
◇冒険者ギルド
冒険者ギルドに到着した。
受付嬢がいつもと同じように待っていた。
「こんにちはキアラ。皆さんは緊急クエストに行ったはずでしたよね。ここに来たのは、難しいから途中で帰られたと見受けられます。残念でしたね」
受付嬢はセレスタ国までの道のりとを考えたら、当然に直ぐに帰ったと。
それは馬車で行ったらの話である。
モチジェットには通じなかった。
僅かな時間で往復まで出来るモチジェット。
途中でドラゴンを追い抜く場面もあった。
受付嬢には理解できない速度。
「いいえ。セレスタ国に行く依頼だった、魔物を倒してきたの。タケダ様が倒したのよ」
「いやいや無理でしょう。しかしタケダが居るなら……」
俺の規格外を経験している受付嬢は自分を疑うように口ごもる。
嘘みたいだが、依頼を完了させたとも考えているように思えた。
「ご主人様、リザードマンのあれを出してみたら」
「そうだな……アイテムボックス、リザードマンの素材、魔石」
「うわぁ〜〜」
アイテムボックスから素材と魔石を出す。
リザードマンのだった。
王都でモチライフルで連射し倒した分のだ。
100匹分のあるから、ハンパない量となる。
あと100匹は、モチカーペットで貼り付けたままだった。
出された受付嬢は、叫ぶしかない。
「全部で100匹分ある。鑑定して報酬にして」
「…………はい、鑑定します…………リザードマンの素材と魔石です。信じられないです。リザードマンはCランク魔物で、簡単には倒せません。それを100匹とかあり得ない」
受付嬢は鑑定して驚いた。
リザードマンはかなり強い魔物だったからだろう。
セレスタ国が依頼を出したのが納得である。
リザードマンが100匹いたら、ムイト国の戦力でも持たないだろう。
それを行って直ぐに倒して戻ってきた。
移動時間も含めて信じられない結果。
「でも、タケダ様が倒したのは事実です。セレスタ国のフーリッシュ国王からは、感謝されました」
「フーリッシュ国王から感謝を……凄いですね、報酬を揃えますからお待ちを」
ギルド側は鑑定結果から間違いなく本物であるとし、報酬を出してくれる。
もちろんたった三人にこれだけの量の報酬を出すのは極めてまれだった。
大量の報酬を前にした。
他の冒険者達が見ていた。
信じられない量の報酬。
会話が止まる。
考えられない金額である。
冒険者は俺だとわかると、噂していたのが聞こえる。
またタケダだと。
農民だよなと。
農民の最強伝説はまた強くなる。
冒険者から冒険者へと伝わる。
農民の伝説的な活躍を。
「タケダの強さにはギルドも困惑してます。この件は、ミネイロ国王にも報告されます」
「またこの国、他国でもいい、異常な魔物が発生したりした依頼があったら、俺に伝えて欲しい。なぜならセレスタ国の魔物の大量発生は魔王のペンダントが原因だったのが確実となった。証拠もある」
「魔王のペンダント! セレスタ国にもあったのですかペンダントが」
受付嬢は知らないだけに驚いた。
そこへアイテムボックスから証拠を取り出した。
「アイテムボックス、魔王のペンダント」
「ええっ、二つある……一つは王都のアイテム店にあったのをタケダが購入したもの。もう一つはセレスタ国にあったの?」
「そうです。レーン姫が所有してました。それが原因で魔王の祝祭イベントが起きたと考えられる。俺が預かることになった」
「祝祭イベントが発生しているのが事実ならば、世界は混乱します。今後も世界のどこかで発生する…………」
この時点で魔王のペンダントのありかは、把握できない。
ギルドにも情報はないので何とも対策しずらい。
「ギルドで異常なクエスト依頼を調査して欲しい。もしあったら伝えてくれ」
「はい、伝えます…………って、タケダはまだFランクのままなのに、いいの?」
「問題ない。Fランクの農民でいい」
俺はランクには興味がない。
冒険者なら一つでも上のランクにしてみたい。
そんな願望はとっくにない。
勇者になるまではランクは上げていた。
それは猛烈に魔物を倒しまくったから。
ハンパない上がり方をした。
周りが引くくらいに。
しかし受付嬢にはFのままでもいいと宣言し、ギルドを去る。
◇ギルド(三人称)
ギルドを退出した後に受付嬢は残って。
「…………とんでもない農民だわ。農民が世界を変えるなんて……魔王の祝祭イベントも倒しちゃうなんて……」
残された受付嬢は、ポツリとつぶやいた。
一人の農民に、魔王とも戦える力を感じた。
恐ろしいまでのたくましさを。
それは当然である。
この男は、すでに戦っていた。
そして一回、世界を救っていたのだ。
これは二度目の冒険なのだ。
一度目は勇者で。
二度目は農民である。
「受付嬢さん、アイツは本当に農民なんですかね。常識が通用しない点がある㊚だ」
「ええ、本当に不思議な人です」
◇城の門
ギルドはセレスタ国から来た依頼だけに、国王にも報告する義務があった。
こんなにあっさりと依頼を完了するとは国王も予想していない。
事実、向こうで一緒にいたトニック達は馬車でまだ移動中らしい。
到着まで何日もかかるだろう。
「ご主人様、報酬を得られて良かった」
「依頼を完了した。城に行くから」
城を目指していた。
「城へ? 用事があるの」
「城にいるミネイロ国王に話がある。魔王の祝祭についてだ」
「タケダ様が行って会ってくれるかしら」
「会えないとしたら困る」
「困るとか言われても、タケダ様が決めることじゃないもの。予想では会えないと思う」
「私もご主人様がいくら奇跡的な人でも、国王に会うのは別次元です」
「とにかく城に行く」
普通は会えないもの。
絶対に会えない。
国王が一般人レベルの冒険者に会う理由はないからだ。
言い切れるレベルの話である。
世界共通の認識だろう。
しかし俺はその絶対的な範囲の外にいる人間だ。
たとえ、法律で禁止されても、法律すらすんなり通り抜ける。
いっさいの固定観念は捨ててよい。
城へ足を向かわせる。
いつものように、城の前には門番兵士がいた。
「ミネイロ国王に会いたい」
「会うのは許可がいる」
「国王に伝えて欲しい。俺は農民タケダだと。魔王のペンダントがあった。魔王について話があるとな」
「ええっ、魔王について……はい」
魔王の名前を出しておく。
兵士は慌てて国王の元へ走る。
魔王の名前に及び腰となった兵士だった。