『※50話 城にてパーティー』
『※50話 城にてパーティー』
「タケダ様、パーティーは楽しいです。みんなタケダ様を祝福してます。私も嬉しくなる」
「俺は苦手だ。どうも好きになれない」
「楽しめばいいのよ。もっとリラックスして」
「リラックスがわからない」
勇者だった時も、あらゆる難易度の高い魔物を討伐したらパーティーがあった。
俺はほぼ姿を現さなかった。
それくらい好きになれない。
他の男からしたら、もったいないと言うだろう。
「おお、タケダ、話はカナロアから聞いた。この度の活躍は素晴らしい。本当に助かった。それでこの後は、ムイト国に帰るのか?」
フーリッシュ国王からの褒めの言葉であった。
国王から絶賛される。
絶賛されてもしきれないくらいのお褒めだった。
「帰る予定ではいます」
「また我が国が危機になったら応援を頼む。農民だったな、農民に国が救われた。農民が英雄になった日だ」
「わかりました。応援させてもらいます国王。俺からもお願いがあります、農民をよろしくお願いしたいのです。農民は大切にしてほしい」
そこの点は丁寧に言った。
特に農民を押した。
この国でも農民の地位は低いと思う。
冒険者になりそこねた者の職種というイメージが強いし。
他の国でも大方変わらないであろう。
所得も低い方に分類される。
それだけに全農民にも感謝を送って欲しかった。
国王は俺に大いに感謝し、今後の応援をお願いした。
これだけ活躍したのは予想外だった。
まして農民である。
農民に国家が救われたのは、意外としか言いようがない。
セレスタ国の軍関係者はいずれも、俺の存在を思い知らされたと聞かされた。
「タケダ……やはりお前が派手にやらかしたな。お前が来ると必ずこうなる」
パーティーは続いた。
不意にトニックが現れる。
会いたいわけではないが。
「別に俺はトニックに会いたくない」
「俺だって会いたくねえよ」
「それよりさ、魔王のペンダントって本当だったのね。私にプレゼントしてよ」
いきなり来て、プレゼントしろと言ったのはダイア。
欲しいのか?
この女は変わっている。
「あげません、あなたにはプレゼントしませんよ!」
キアラが断った。
ダイアが嫌いな感じに言った。
実際に嫌いだった。
「キアラに言ってない。私はタケダに言ったの」
「ペンダントは綺麗だが、身につけるものじゃない。ダイアが魔王と戦うならいい。それでも欲しいか?」
アイテムボックスから魔王のペンダントを出した。
ペンダントは輝きはあるものの、妖艶な輝きをしている。
ダイアは女性であるから、ペンダントには興味があるが、魔王の言葉にこわばった。
「魔王ね……あはは」
ダイアは去っていった。
トニックは美人さんに声をかけていた。
いわゆるナンパだ。
声はかけるが、あっさりと無視。
無視ならいい。
文句を言われてもいた。
ムイト国だと名前は知られていた。
しかしこのセレスタ国では無名だ、活躍はなし。
美人さんからは全く相手にされない。
残念がるトニックだった。
そんな残念なトニックとは対照的なのがスマッシュ。
彼は美人に興味なく、出された料理に食らいつく。
体重が増えるのも納得の食べっぷり。
「農民なのが珍しいのだと思う。農民が国を救う話は聞いたことないもの」
「そうだろう、俺もない。だからこそ農民の地位を上げたい。農民はこのパーティーには出席していない。農民がパーティーに出席できる世界を俺は作りたい」
自分だけでなく農民全体のことを考えていた。
それくらい農民は好かれていなかったのが現実。
しかしその現実を変えるのは、難しいのは知っていた。
生半可では変わらないと。
「凄いです、タケダ様の、その考えは、世界を変えるなんて、素晴らしいです」
「ありがとう」
「ご主人様なら、きっと出来ますよ」
フェンリルも賛同した。
フェンリルが一緒なら出来そうな気がした。
「そしたら、家に帰ったら、夜はベトベトを二人にさせる。いいな」
「ええっ、ベトベトですか!」
「ご主人様、こんなところで言う話ではありません。もう少し小さな声を」
タケダからしたら、大量にモチコンクリートでモチを使用。
その分を少しでも補う話をした。
二人には、もう完全に違う話になっていたのか。
真っ赤にした顔は、はたから見たら、俺が何かしたのかた思われる。
◇ハクサン国(三人称)
タケダが王都で大活躍した。
大活躍と言うか、異次元か。
その姿を実際に見たシオン姫。
衝撃的な強さだった。
もう笑えるレベルの強さ。
自国のハクサン国に帰った。
遠征は王都が静まったことで、無事に終わった。
タケダの圧勝である。
もうタケダコールである。
だれもシオン姫のことなど興味ない感じに。
国に帰った後は城に向かう。
予定ではシオン姫がヒーローになるはずだった。
ところがタケダに邪魔され不快感がある。
オマケに一緒に行った騎士団は、リザードマンにかなり手痛くやられた。
死者も多かった。
良いことなしである。
城に帰るとドナウ国王と会った。
父親である。
「よく帰ったシオン。遠征の結果を報告してくれ。セレスタ国の事情もわかっただろう」
父親のドナウ国王が出迎えた。
娘に遠征に行かせ心配もあった。
敵国でもあり、友好国でもあるセレスタ国の事情を知りたかった。
友好国となっているが、国と国なので表向きもある。
裏では情報戦争ってのはよくある話。
「はい、お父様報告します。まず結果は騎士団、冒険者の勝利でした。セレスタ国からもお礼を頂きました」
「そうか、セレスタ国が危機を救われたのはわかった。セレスタ国のフーリッシュ国王に貸しが出来たわけだ」
危機を助けた貸しを作ったのは評価した。
何かあった時に、使えるカードになるからだ。
「ただ意外な展開もありました」
「意外な……話せ」
「妹に会いました」
キアラ姫と偶然に会ったことだった。
「何! キアラと会った……なぜセレスタ国にいたのか。ムイト国に婚姻させる予定だった。それを破棄していた。フーリッシュ国王からはキアラの行方はわからないと伝えられた。まさかセレスタ国にいたとは。キアラはどこに……連れて帰っただろう?」
ドナウ国王は、出会ったのだから、妹のキアラ姫を連れて帰るのは当然だった。
しかしシオン姫は、キアラ姫とは帰っていなかった。
その理由はタケダだった。
ここでも問題になるこの男。
本人の知らぬところでも問題児となる。
あの男がいて、直接に連れて帰れなかったためだ。
近くに接近すら難しかった。
あれだけの強さを見たら、シオン姫にも手が出せない。
騎士団を使っても、無駄に終わる。
「いいえ、キアラ姫を捕まるのに失敗しました」
正直に話した。
タケダが居たら、数十人の騎士団では全然に、足りなかった。
「失敗した! なぜだ……キアラと別に誰かがいた。その者が邪魔をした、そうか?」
シオン姫には多くの騎士団を同行させた。
それが居たのに失敗した。
考えられるのは、邪魔者がいる。
シオン姫に抵抗した者がいたとなる。
険しい顔になる。
「飲食店で追い詰めした。するとある男、それもひとりが妹を助けには入った。騎士団でひとりの男を捕まるところを逆に全員が気絶した。その男の名前はタケダと言います。冒険者であり、妹と一緒にセレスタ国の応援クエストに来ていた。タケダはなんと信じられないことに農民らしいのです」
あの時の記憶がシオン姫に残っていた。
騎士団を気絶させたのは偶然ではなかった。
リザードマンもあっさりと倒したからだ。
「農民が気絶させた……意味がわからないな。騎士団ひとりにも農民では勝ち目はない。今後もキアラとその農民を要注意させる」
「はいお父様」
キアラ姫とタケダを監視させることにした。
納得がいかない国王。
農民にわざわざ監視をつけるとか、税金の無駄に感じた。
どこの国王が農民を監視するか。
聞いたことない、前例のない事例だろう。
その前列を覆すのがタケダである。
しかしドナウ国王はタケダに会ったら驚くに違いなかった。
なぜなら、自分が地下牢に閉じ込めていたアマルフィなのだから。
脱走した、タケダは誰かが鍵を渡したのだが、アマルフィならば納得していたろう。
なにせ魔王ハデスを倒した。
あのアマルフィがタケダなのは、まだ知らない。
シオン姫はアマルフィを見たことがなかったので、むろん知るはずもなかった。
部屋に帰り、妹のキアラ姫のことを考えていた。
いつか自分の第一王姫の立場を危うくするのではと……。