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『※4話 城で戦いに』

『※4話 城で戦いに』



 俺の周囲の空気を無視した発言にキアラは凍りつくしかなく、あたふたしてしまうも、俺は全く動じることなく平然としていた。


「取り消しとは、どう言う意味だ。それにお前は誰だ」


 婚約しているアドマイヤ王子が俺の発言に不審に思い、キアラを守る衛兵にしては人数は少ないし、剣も持っていない。

 言い寄るので、俺はそれでも顔色変えずにアドマイヤ王子に対して言う。


「俺は農民だ。アドマイヤ王子は馬鹿なのか。取り消しとは結婚式を辞めるたいうことだ。これでも理解できないか?」

「タケダ様。それは言っては!」


 キアラは俺が酷い発言をしたからか止めに入る。


「お前! 農民のくせに王子である俺にその発言をしていいと思ったか! キアラ姫、説明してくれ」

「あの……それは……この人は……」


 説明してと言われても返事に困るキアラは、言葉に詰まってしまう。

 余りにも失礼な、王子に対して使う言葉ではないし、死刑をしてと言ってるのと同じなわけで、別に頼んだわけでなく俺が勝手に言ったとは言えないのである。

 するとキアラに代わって俺が、


「お前と結婚しない。キアラ姫と結婚するのは農民の俺だからだ」

「なんだと!?」

「農民が姫と結婚だと!」

「ええっ! タケダ様。聞いてません!」


 アドマイヤ王子は思わぬ俺の言葉に混乱したが、王子以上に驚いたのはキアラであり、まさかの言葉で、元は誰もが憧れる勇者であるからか、顔は赤く変色していた。


「父上、タケダとか言う農民を殺すご命令を。許せません」

「兵士よ、タケダを無礼があったため殺すのを命じる!」


 ミネイロ国王は俺を殺す命令を出し、兵士は国王の命令に反応した。

 キアラは慌てて俺の顔を向くと、俺はまたも平然とした顔であった。


「打て!」


 兵士は弓矢の準備をし俺に照準を合わせ、矢を構えていた人数は50人はいて、いっせいに矢を放たれた。

 たとえ高レベルの者でもダメージは免れないだろうが、しかし慌てることなくアイテムボックスからモチを出した。


「アイテムボックス、モチウオール」


 アイテムボックスからモチを取り出すと、慌てることなく冷静にモチを俺の前方に発射。

 一個一個と連続的にモチを発射し、俺とキアラの前に積み重なっていき、モチの壁が出来たのだった。

 矢は全てモチの壁に当たり一本も届くことはなく、矢を放った兵士は壁の出現になす術がなかった。

 つまりは俺はモチを何十個も積み重ねていくことで物理攻撃を無効にする壁を簡単に作ってしまったわけで、キアラは矢を防いだ壁に、こんな使い方もあるのかと、攻撃だけてなく防御も使えることに驚くしかない様子。


「コメが壁になっています。信じられない!」

「アイテムボックス、モチメテオ」

「天井が!」


 壁で防いだ後に俺は攻撃に転じ、モチメテオを作動させる。

 今度は大量にモチが天井を破壊し、城の天井の壁などは完全に壊されてしまい青空が見えるまでになった。

 さらに上空からモチが降り注いできて、兵士の足元を直撃し床を突き抜けて兵士は一階にまで落下した。

 俺のモチメテオはモチを天井に排出し爆弾のようにして落下攻撃させた。

 床は穴だらけになり兵士は一人もいなくなり、ミネイロ国王とアドマイヤ王子だけになってしまうと、


「床が! タケダ様。床がないであります!」

「安心しろ。俺の近くは床がある」


 キアラは不安そうにして俺に抱きつく。


「…………なんだ、あの白い小さな武器は……」

「信じられない…………城が一瞬で粉々に……」


 国王と王子は、もはや俺とこれ以上戦う意思はなくなっていた。

 キアラにもわかっているだろう。

 元は伝説の勇者なのだから、この程度は当然と言えば当然なのかと。

 

「まだ戦うか」

「いえ、いえ、許してくださいタケダ、もう城を壊すのは止めてくれないか。王子との結婚式は取り消しでいい。破談とすることを約束する」

「キアラ、もう大丈夫だ。破談したいと言った」

「破談させた気もしますが!」

「結果は同じだから良いだろう」

「全然違う!」


 キアラとしては破談が決まりホッとしていて、全ては俺のおかげであるから感謝していそうだが、逆に慌てていた。

 一方のミネイロ国王はまさか俺が勇者であることは知ることなく破談を決めた。

 勇者アマルフィだと最初に名のれば、城を破壊しなくても済んだかもしれないが。





◇城の外


 結婚式は取り消しになったことで用はなくなり、城から去るとした俺とキアラは、お互いに顔を合わせた。

 キアラが喜んでくれていると思っているけども、キアラは喜ぶどころか手に負えない感じを嘆いている風にも思えた。

 

「そう言えばタケダ様。国王に私と結婚するとか言ってました……あれは?」


 俺が言ったのを覚えていたキアラは本当なのか訊いてきた。


「俺は結婚など興味ない。とっさに嘘を言ったまでだ。しかし体を粘着させて合体させることに興味ある」


 俺が言った粘着のある物とはモチのことであって、コメをこねて叩いて粘着性を出してモチするのを意味していた。

 

「粘着のある……を合体……」

「顔が赤いが大丈夫か?」

「ああああああ!」


 俺との会話中に突然に顔を真っ赤にして下を向いてしまったキアラ。

 キアラが赤くなったかと言うと、モチの粘着性のことを俺との体と体を合体を考えたのかはわからない。

 日本の餅と同じように俺のモチも、叩いていくことで柔らかく、もちもちした食感と歯ごたえになり、美味しくなるのと同時に冷えると固くもなり、強力な武器へと化していたのだが、そんな話は全く素人のキアラであるから、肉体と勘違いしたのかもな。






◇冒険者ギルド


「ここは冒険者ギルドですね。タケダ様は登録されているのかな」

「冒険者をしていた現役時代は登録をしていた。しかし冒険者を引退しているし、名前も変えたから、未登録だな」

「アマルフィの時ね」

「聞こえるだろ」

「そうでしたね」


 立て看板が前にありキアラは足を止めて、冒険者ギルドの看板を見ながら言った。

 俺は周りに人が多いので、キアラに口止めをしておいたのは、アマルフィの名はこのムイト国でもいまだに有名な勇者の名であるからと思ったのが理由だった。

 世界で一番有名な勇者アマルフィが生きて王都にいるとなれば、はかりしれない驚きになり、衝撃が走るのを避けたい俺の配慮だった。


「ちなみに魔水晶で判定されるだろう。俺の能力値がバレるから、最小限まで下げて判定してもらう」


 魔水晶とはギルドではお馴染みの道具で、冒険者の能力値をはかるのが目的。

 新米冒険者が一番最初にして、結果が出るのをドキドキするのが一般的だ。


「ギルドへようこそ」


 ギルドに入ると俺に気軽に挨拶をしたのは受付嬢と呼ばれる、美人な女性で、冒険者の管理をし魔物の討伐などを紹介や受付けをしている。


「ギルドには初めてきた」

「初めてでしたら、まず最初に冒険者登録をしていただきます。冒険者にはランクがあり、Aランクが最も高く、逆にFランクが最も低い、いわゆる初心者冒険者登録となりますね。まずお名前を」


 冒険者ランクの説明を丁寧にしてくれる。

 説明の中で頷いていた俺はAランクであったし、ランクという垣根を超えた存在で、Aランクとなっていても遥かにAランクを超えた実力、バレないように初めて来たと言った。


「名前はタケダだ」

「タケダですね、それでは次にタケダの能力値を測定したいのです。魔水晶に手を置いてください。置いた後にタケダの能力値が鑑定されますから、ある程度のランクが判定できます。たいていの方はFランクから始めます。魔力もスキルもないのに高ランクの冒険をしても死ぬので、ギルドは無理をさせない為にきちんと正確に判定をしているのです」


 受付けが説明したのは初心者がいかに高い確率で死亡するかの説明で、どんなに能力値が高い、生まれつき能力が高い者や、早くから修行した者、両親が経験を積んだレベルの高い冒険者だった、その血を引いた者、早くから魔法が使える者、そういった自慢している者が自分の能力に過信して死ぬのが、この世界のよくある風景なのを教えたかったのだった。

 むろん俺は受付嬢の話を承知していて、何度もそんな才能のある者が早死にしたのを見たし、惜しいのも知っていたからこそ、嫌がらずに手を魔水晶に差し出すことにした。

 キアラは魔水晶に手を置く俺の能力値が、どうなるかわからないが、最小限にするといったので安心して見ている。

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