『※42話 またリザードマンが来る』
『※42話 またリザードマンが来る』
◇王都
リザードマンをモチライフルの連射による弾丸で、100匹を倒してしまった。
俺はそれでも至って冷静である。
少しは喜べといわれようと。
魔物を倒すことに喜びとかはない。
むしろ農作業に喜びを感じているくらいだ。
生まれついての性格なので、ハイテンションで喜びを出す性格じゃない。
そこらへんが、わからない見ていた騎士団員は、夢でもみたかとなった。
リザードマンの魔物から取れる素材と魔石を集めるよう指示する。
「フェンリル、素材と魔石集めをしてくれ。俺はまだリザードマンが他にも居るのか探る」
「わかりました、回収をしておきますご主人様」
回収作業はフェンリルに任せておく。
フェンリルには町の人の避難を頼んだ。
実際に避難は成功したらしい。
ほぼ犠牲者は出なかったと言われる。
まあ騎士団や冒険者よりは遥かにフェンリルの方が役に立つのは仕方ない。
格が違う。
フェンリルに頼んで正解だった。
フェンリルが居なかったいら、町の人にも多大な犠牲者が出たに違いない。
俺の見える範囲にはリザードマンはいない。
他にも居ないかをチェックする。
リザードマンはこの状況を見たら、逃げるだろう。
いくら目的は人を殺す祝祭とは言っても、魔物にも恐怖心はある。
あまりにも、強い敵は恐怖する。
俺の前にリザードマンはいなかった。
途中で通りにいた騎士団にも確認した。
「リザードマンはまだ居るか」
「い、い、い、居ない。いや、居ません」
騎士団の数人は俺に話しかけられて、返答した。
リザードマンは居ないと正直に答えた。
正直に答えたのは、リザードマンよりも俺が怖いからにも感じる。
当たり前だった。
騎士団と冒険者が大勢いて、立ち向かったのに、多くが簡単に犠牲者となった。
それを得体も知れない武器で、連射して、ハイ終わり。
FPSゲームか。
これで怖がらない人は、人じゃない。
兵士の困惑に構わず、門へと向かった。
◇王都 門(三人称)
リザードマンを倒したのはタケダだとわかる。
レーン姫は騎士団にタケダの所在を訊く。
「それで農民タケダはどこにいるの?」
「リザードマンを全滅させてから、不明です」
「農民がやれるのは農作業だけ。それ以外のスキルはないはず。例えば、農作物を早く成長させる成長補正、栄養を豊富にする栄養補正、違う野菜を掛け合わせて新しい野菜を作る新種補正などでしょう。それとこの倒し方には、共通点がないわ」
レーン姫はどうしても知りたいが、本当にタケダなのかと言った。
「本当だわ。私がこの目で見た。見たというよりも助けられた。タケダは異様な武器、剣、槍、短剣、ナイフ、斧、弓、そのどれとも違う武器を使う。世界に二人といない存在なのかもしれない」
話に入ってきたのは、シオン姫。
タケダに危ないところを助けられた。
タケダが居なければ死んでいた。
しかも一度は敵対してキアラ姫の件で争った。
その争った相手を助けるのは、タケダだったからだ。
シオン姫とキアラ姫とのことで、争ったが、敵意はなかった。
シオン姫が可愛いからではない。
キアラ姫の姉なのもあった。
「あなたはシオン姫ですね」
「シオンだ。タケダの仲間に妹がいる。キアラだ」
「知ってます。キアラ姫は、タケダを怖がっていなかった。悪魔的に強いのに」
「それが農民タケダだ。あいつとはムイト国で何度も関わった。あいつが居ると必ず何か起こる。信じられないぜまったく。このクエスト依頼にあいつが参加したのを知って、今度こそ失敗しろと思ったさ」
トニックはタケダの失敗を願ったと言う。
これはマジだった。
トニックが目立たなくなったからだ。
タケダが来る前はトニックがヒーローだった。
それがタケダに全部持って行かれるのが不服だと言う意味だった。
「私はタケダと勝負した。完全に負けだな」
それはどちらが魔物を早く倒せるかと、競争しようと約束した。
勝つ気満々だったレーン姫は、がっくりと肩を落とした。
とんでもない相手に勝負をした。
勝負していい相手としてはいけない相手がいる。
不幸にも最悪な相手と勝負したわけだ。
世界最悪な相手に。
真剣に勝とうとした。
「レーン姫、勝負よりもご自身の体を大切に」
「カナロア、私は負けない」
「まだ、言う!」
◇門
門に向かった俺。
数人が門の辺りで会話しているのが目に入る。
全員見た顔だった。
近づいて会話に参加してみる。
「タケダ! 話題にしていたんだぜお前を」
トニックが驚きながら言った。
「俺を? なぜ」
「なぜて、これだけやったら、そりゃ話題になるだろ」
話題になるのは嫌いだった。
特にトニックに。
「私は負けた。あなたに勝負を挑んだ。倒したリザードマンはゼロ。なのにタケダは100匹も倒した。負けだ」
「俺の勝ちか。勝ちよりも、他にリザードマンが居たら教えて欲しい。更に言えばミノタウロスの情報もあったら欲しい」
レーン姫の勝ち負けなど、興味ないと言ったに等しい。
勝負よりもこの男は、リザードマンを倒す気だった。
まだ倒す気だった。
魔物を倒すのに、疲れをしらないからこそ、魔王城で最下層までたどり着いた。
普通はあきらめるくらいに深い。
「居る。まだリザードマンは大量に居る」
「どこだ?」
「ダンジョンだ。俺はダンジョンからリザードマンが次々と出てくるのを確認している。草原にある。しかも二つもありそうだ。俺が発見したのと別に、もう一つ。そちらの方から王都に来たのが、タケダが倒したリザードマンだ」
「ダンジョンからか。厄介だな」
ダンジョンからリザードマンが出る話を聞いた。
団長の言う言葉を信頼した。
ますます祝祭が濃厚だな。
「残りのリザードマンは、俺達について王都に徒歩で来る。そろそろ到着するぜ」
「門から見てみよう」
トニックに教えられた俺は、門からリザードマンが近づいて来ているかを見た。
トニックは信用していないのもあったのは、言わないでいた。
「……リザードマンが、かなり来ているな」
俺の目には、実際にリザードマンがゆっくりと歩行している姿だった。
草原を歩行していた。
数は同じくらいいだ。
つまりは100匹はいる。
俺以外は、この視界にいるリザードマンの大軍が気持ち悪いに決まっている。
ゆっくりとゾンビみたいに近寄ってくるのだから。
ただ待っているのは、気が変になるだろう。
「全部、ダンジョンから出てきたのだ」
「俺がやろう」
「マジか、農民」
「俺しかいないだろ」
はっきりトニックではダメだと言ったも同然。
トニックには厳しいひと言だった。
ダイアとスマッシュにも聞かれたら同じ答えだったろう。
トニックが弱いわけではない。
むしろ今回の遠征メンバーでは最高のランクだ。
それと騎士団と比較しても上にいる。
なのに俺しかいない発言は、上から目線もいいとこだ。
しかしトニックは、あえて反論せずにいた。
「その、何か……あの、ここで使った奴を使うの?」
ダイアは同じ武器なのかを確認した。
リザードマンの死に方は異様だったからだろう。
それが見れるのかを言ったまでだ。
「違う。別のを使う。アイテムボックス、モチカーペット」
「違うの!」
アイテムボックスを使用しモチカーペットを取り出す。
モチライフルでも良かったが、ここはモチカーペットを採用した。
ライフルだと100匹倒すのに、100回弾丸を放つ。
カーペットだと手間が省けるからだ。
むろんカナロア達は、モチカーペットが何なのかとなる。
ライフルですら見たこともないのに、カーペットとか余計に意味不明であろう。
モチカーペットはカーペットみたいに丸まった筒状だった。
今ままでのモチとは大きく形が違う。
薄いシート状。
それを丸めてあった。
「カーペットとはなんだい……」
スマッシュが不思議そうに言った。
今度はパンを食っている。
余裕なのか。
スマッシュが見たことないのが現れて不思議がっている。
「アイテムボックスを使った農民は初めて見た」
カナロア団長は驚きであった。
常識的におかしいからもある。
アイテムボックスを使えるのは、特別な人限定。
限定した人だけのスキルだ。
それを簡単に使った。
しかも容量が半端ない。
とてつもなく大きな筒状のモチだった。
騎士団の団長になるまで経験をしたどこにも当てはまらない現象だったと思う。
常識に当てはめるのは無理なので、カナロアを馬鹿にはしない。
「およそ常識と言うのが当てはまらない人物が他にはいないな」
「常識的に見過ぎている。この男は常識は通用しないぜ」