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『※40話 シオン姫が危ない』

『※40話 シオン姫が危ない』



◇王都 防御壁(三人称)


 リザードマンは防御壁があるため侵入するのは難しい。

 壁を破壊するのは分厚い石で出来ているからだ。

 そこでリザードマンは出入り口の門を見つける。

 剣を使うだけの知能を持つだけに、出入り口門を発見するあたりは知能の高さだった。

 餌をゴミ袋からあさり散らかす黒い鳥よりは知能は遥かに高い。

 言葉は話せないが、集団で行動する。

 門の前に来たかと思うと、剣で門を叩き出した。

 簡単ではないが、リザードマンの腕力から時間の問題だ。

 この時にドンドンと門を叩く音がしたのが、民衆にも聞こえた。

 これがパニックの原因である。

 自分の家にいて、訪問者がドアをガンガンに叩いてきたら、ドン引きする。

 それと同じである。

 中の人の気持ちなど考えない、リザードマンだった。

 リザードマンからしたら、中にいる人は生け贄の対象であるから、怖がるのは普通。

 むしろ怖がらないタケダが普通じゃない。

 困った人である。

 叩き出して間もなく、門を破壊した。

 一匹ではなく、数匹で同時に叩くと破壊力は増し、壊れてしまった。

 破壊した門を抜けてリザードマンが現れる。

 もう民衆はパニックである。

 そりゃ当然であろう。

 大きな剣を持ったワニ似た二足歩行の魔物が何十匹と現れる。

 しかも扉をご丁寧に破壊したのだ。

 パニックにならないわけがない。

 リザードマンが門から入って来た。

 入るというよりは乱入と言った方が的確だった。

 民衆が怖がるのを関係なしに入り、そこへ騎士団が駆けつけた。


「皆さん、早く門から逃げてください」


 騎士団が町の人々に叫んで言った。

 助けを求める人は、騎士団の駆けつけが間に合い、走って遠くに逃げる。

 相手が誰だろうが、とにかくリザードマンからしたら同じ。


「敵はリザードマンだ。絶対に防ごう!」

「おおお!」


 騎士団の剣を剣で受け止める。

 リザードマンの硬い皮膚を切りつける。

 中に入ってくるリザードマンはすでに20匹を超える数になった。

 騎士団が駆けつけたといっても、リザードマンも後から来るので、門は飽和状態になる。

 持ちこたえきれなくなり、リザードマンは町へと進む。

 家の扉をぶち壊す。

 窓を割るリザードマンもいた。

 爬虫類顔をした魔物を見たら、恐怖で家のなかで泣き叫ぶ人。

 人を人だと思わないリザードマンの横暴が広がった。

 

「リザードマンか、止めなさい」

「はい、シオン様」


 リザードマンの横暴を止めに入ったのはキアラ姫の姉のシオン姫だった。

 シオン姫の命令に従い、ハクサン国騎士団がリザードマンの背中を切る。

 想像以上に早い展開で、王都は戦いの場となった。

 リザードマンにはセレスタ国騎士団もハクサン国騎士団も区別はつかない。

 シオン姫がどこの姫だろうが知ったことか。

 目的は王都の破壊と生け贄をすればいいだけ。

 魔王のペンダントがある以上、暴れるだけだった。

 ペンダントが影響してダンジョンが生まれた。

 よってペンダントはリザードマンの産みの親でもある。

 戦場とかした王都にはシオン姫の騎士団もゴミのように扱われる。

 

「なんて強さ。騎士団が子供扱いだ……」


 シオン姫は自分の連れてきた騎士団員が、簡単にリザードマンに切られ、流血していたのを見て嘆いた。

 冒険者も参戦するものの、あまり役に立たない。


「リザードマンは強すぎるし、数が多すぎる!」

「このままだと、王都は全滅は時間の問題だ!」


 リザードマンを足止めさせようと頑張る騎士団と冒険者であるが、行けば行くほど、犠牲者の山が出来た。

 リザードマンも倒れるのがいるが、圧倒的に犠牲者は騎士団側だった。

 シオン姫がリザードマンの二匹に囲まれる。

 ただでさえ強いリザードマンに二匹とはシオン姫もキツイ。

 

「やめろ……やめろ……」


 シオン姫はリザードマンに言葉で言った。

 残念ながらリザードマンは言葉を理解できる脳みそはなかった。

 もう少し知能があったなら、話が通じたかもしれないが、もう遅い。

 今回の遠征に参加したのはいいが、ここまで苦戦するのは読み違えた。

 だがシオン姫も絶望ではなかった。

 タイミング良くフェンリルが発見したからだ。






◇王都

 

「ご主人様、女性がリザードマンに囲まれている。あれは確かキアラのお姉さんだ」


 視力の効くフェンリルはリザードマンが囲んでいるのをいち早く発見した。

 発見した時には、シオンは剣で切られる寸前だった。

 とても間に合わない。

 フェンリルが獣化していたとしても、絶対に間に合わない距離にいた。

 

「俺がシオンを助ける。アイテムボックス、モチブラスト」


 アイテムボックスからモチを取り出す。

 瞬時にモチを発射し、リザードマン二匹の胴体に命中させる。

 常人には無理な早技だった。

 モチを出してから発射するまで、一秒かかっていない。

 人の出来る限界を超えた速度の発射だったため、フェンリルには見えなかった。

 俺にしか無理な技である。

 リザードマンは二匹とも倒れた。

 命中したのが致命傷となった。

 たった一撃で終わりにする。


「だ、誰だ……」


 シオンはリザードマン二匹がそのまま倒れたので、何が起きたか理解できない。

 理解できる人はいないと言った方がいいか。

 俺の農民スキルを目視は無理である。

 

「さ、さ、さすがご主人様です、ていうか見えませんでしたが、早すぎて」

「リザードマンか。また厄介な魔物だ。それに数が異常に多いのも気になる」

「はい、リザードマンがこんなに現れる。やはり魔王のペンダントなのかも」


 魔物が王都付近に突然に、これだけの数が現れるのは通常はない。

 騎士団が防衛しているし、普段は魔物は冒険者がクエストしている。

 毎日クエストで魔物の討伐をしている中にリザードマンはなかった。

 昨日、今日に現れたわけで、どこに居たのかってことになる。

 

「とにかくリザードマンを全匹倒すのが先だ」

「倒せますか。こんな数のリザードマンを。いくらご主人様でも相手にする数が多すぎます。ご主人様が死んでしまいます」

「死にはしない。フェンリルは町の人を避難させてくれ。頼む」

「はい、避難させます」


 リザードマン全匹倒す宣言をした。

 とても無理ですとフェンリルは首を振った。

 断ったものの、俺の心は変わらないのを察した。

 騎士団が逃げる。

 冒険者も怖くて後ろに下がる。

 そんなリザードマンに恐怖心のないのが農民の俺だった。

 農民だからバカにされるが、圧倒的に不利な場面にもおくさない。

 どんなに負けそうでも決して怯えることはない。

 アイテムボックスから再びモチを取り出す。


「アイテムボックス、モチライフル」


 今度はライフル型に作成されたモチを取り出す。

 そこへもモチの弾丸を詰め込み発射。

 いつも使うモチを小さく弾丸の形に作った。

 モチの弾丸は連続発射された。

 リザードマンの大軍に向けた。

 面白いように弾丸は命中し、リザードマンは何も出来ずに倒れていった。

 しかも全て狙った的に命中し、外れた弾丸はゼロだった。

 こんなの凄ワザは射撃のオリンピック選手でも不可能だろう。

 だが俺は難なくなってのける。

 走りながら、リザードマンが横暴している地点に駆けつけた。

 弾丸を詰め込み、またも連射する。

 リザードマンの頭を貫通。

 あれだけいたリザードマンは一瞬で減った。

 町からリザードマンの姿は消えて、暴れている姿は少なくなった。

 しかしかなり遠い距離だった。

 子供が逃げ遅れていた。

 リザードマンが子供を捕まえて、殺す寸前なのが見えた。

 すかさずモチライフルを連射。

 子供に当てたら即死ぬので、子供に当ててはいけない。

 普通の人なら慌ててしまう。

 または手が震えるだろう。

 早く打たなければならないし、誤射も許されないのだから。

 ライフルを構えると迷わず発射した。

 その手に迷い、緊張、震え、失敗、後悔はなかった。

 モチ弾丸は一発でリザードマンを打ちぬいた。

 シオンがいて、俺がライフルでリザードマンを撃ち抜いたところを目撃している。

 自分を助けたのが俺と知る。

 

「あまりの手際の良さ、素早い身のこなし、迷いのない判断力。どれを取ってもタケダは超一流だ、超一流の冒険者だ。農民のランクではない。世界でも稀に見る天才か」


 シオンは俺の動きにつぶやいているが、俺は構わず撃つ。

 それが目の前で、ほぼひとりで戦っていた。

 モチライフルで連射し終えた時に、立っているリザードマンはゼロだった。

 そもそも立っている人が俺しかいない。

 騎士団はあまりのモチライフルの凄さに座っていた。

 名のある冒険者ですら、モチライフルの凄さに、悲鳴をあげる。


「リザードマンよりも農民のライフルの方が怖い!」


 たとえどんなに劣勢でも俺には劣勢ではなかった。

 あるのは、町を破壊する魔物が許せない気持ちだった。

 

「凄え、凄えぞ、お前……誰ですか?」


 騎士団員がタケダに名前を確認する。

 冒険者の中には俺が農民と知られているが、騎士団では知られていなかった。

 顔も名前も知らないからだった。


「農民タケダだ。コメ農家をしている」

「コメ農家!」

「コメは偉大だ。リザードマンをものともしない」

「コメで倒したのかあんたは?」

「コメ農家がリザードマンをひとりで全滅させたぞ!」

「凄え、凄えぞ、コメ農家!」

「コメ農家がリザードマンを倒した!」


 騎士団から冒険者まで、タケダの名前を連呼した。

 別に、名前を呼ばれるのは悪くはないが、恥ずかしのもあった。

 有名になりたい願望がないから町の人々からの声援をさらりと流す。

 一般の男なら英雄気取りになっているところだろう。

 目立ちたい男なら、美人な女性をナンパする。

 当然にお持ち帰り可能だろう。

 または片っ端から女の名前を聞くのもあるか。

 しかし俺は何の興味もなかった。

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