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『※36話 モチレイン』

『※36話 モチレイン』




◇料理店前


 キアラはムイト国に婚姻関係にするために、馬車で向かったのに俺の協力もあり、婚姻関係を破棄してしまった。

 ハクサン国の人間には会いたくない事情があったから、お店を去ることにした。

 俺と同じく追われている身ってことだ。

 セレスタ国の国王は、冒険者だけでなく、ハクサン国にも応援要請を出していたらしい。

 それでハクサン国騎士団も応援で参加していた。

 お店を出たところでキアラは、はっとさせられる。

 扉の前にズラリと騎士団が並んでいた。

 しかもキアラを待ち構えていたようにであり、その騎士団の中に、立ちはだかる形で立っていた。

 キアラを見下すようにしていた。


「シオン!」


 シオン?

 確かシオンてのは姉だったような。


「キアラ、やっと会えたわね。探したわ。まさかこの遠征で出会えるとは思いもしなかったわ。それでなぜ婚姻関係を破棄にしたのか言いなさい。まあ今さら聞いても無駄。あなたが姉である私を裏切った。そして国も裏切った。反逆者よ」


 実の妹に反逆者の言い方をした姉は、冷たく妹を見て言っていた。

 やはり姉妹だったか。

 騎士団が周りを押さえ込むようにして逃げられなくする。

 キアラとフェンリルは後ずさりするも、後ろの店内にも騎士団が待っていた。

 入店していた騎士団も最初からキアラが居るのを知っていたのか。


「反逆したつもりはないのシオン。私をどうする気?」

「国家の反逆者は見逃せない。捕まえて牢獄に行ってもらう。それくらいわかってやったのよね」

「…………タケダ様……どうしたらいい」


 もはやシオンに見つかり、騎士団にも囲まれたのでは、逃げようもない。

 しかも捕まれば牢獄となるのは嫌だろうから俺に助けを求める。


「簡単だ、捕まらなければいい」

「相手は騎士団です!」

「下がっていな」

「はい」


 フェンリルとキアラを少し下がらせ、騎士団の前に出る。

 何者なのかと騎士団も剣を構え、シオンも見知らぬ男がキアラの仲間であるのは理解できたと思える。

 

「誰だか知らないが妹を差し出せば、お前は助けてやる。ここに居るのは我が国の精鋭の騎士団。勝ち目はない」

「俺は農民のタケダ。残念ながら嫌われ者の姉にキアラを渡せないな」


 シオンの優しい誘いにも乗らず、あっさりとお断りをした時のシオンの顔は引きつっていた。

 自国ではなく、他国のセレスタ国の中でもあるので、なるべくは大事は起こしたくないのがあった。

 最初は俺に優しく言ったのだろうが、俺の言葉にブチ切れ気味だ。

 肩はぶるぶるて震えて、顔は真っ赤に変色していき処刑してもいいと言いたそうだ。


「やりなさい、農民ふぜいに何ができる、農民タケダはこの場で取り押さえなさい。妹と一緒に地下牢に入れる!」


 すでに俺は10年入っていたから、地下牢には誰よりも詳しい。

 絶対に地下牢にキアラを入れるわけにはいかなくなった。

 一方の騎士団は確実に俺を取り押さえる準備を。

 元は勇者アマルフィなのだが、アマルフィ時代は普段はほとんど人前に姿を出すことはなかった。

 影に隠れ冒険をしていて、魔王と戦っていた。

 シオン、騎士団もアマルフィだとは誰も気づかない。

 父親のドナウ国王は俺を地下牢に入れたわけで、顔は知っているが。

 黒い過去であるわけだが、過去はいったん忘れて目の前にいる騎士団に集中する。


「アイテムボックス、モチレイン」


 アイテムボックスからモチを大量に取り出すと、騎士団は前に出れるのをちゅうちょしている。

 なぜなら俺がアイテムボックスを使えるとは思わなかったからだろう。

 アイテムボックスが、しかもこれほどのモチの量を一瞬で出した農民の俺に、下級、低ランク冒険者ではないと直感したからだった。


「何をする気だ! 農民は構わない捕まえろ!」


 騎士団は停止したが、それを無理やり俺に攻撃させる命令を下したシオンとは対照的に、俺は冷静にモチを多量に出す。

 お店の前であるが失礼して、上空にモチを放出した。

 放出されたモチは騎士団の頭上で停止。

 騎士団達は何が起きるのかわからず、そのまま俺に向かった時に、頭上にあるモチが細かく分裂した。

 分裂したモチは非常に小さく小石くらいになったら、騎士団に向かって降り注がれ、防具の上からモチが降り注がれる。

 

「痛い!」

「痛い! 痛い! なんだこれは農民の攻撃だ!」


 モチレインは上空に放出したモチが破裂して細かく分裂、その分裂したモチが騎士団の体に命令していった。

 細かく分裂している分、ダメージ量も軽減されていて、受けた騎士団には致命傷までは行かない。

 歩けない、立ち上がれなくなる、苦しんではいるが話すことはできるなどの軽傷に抑えたのは配慮だった。

 モチレインは、まるで小石が雨のように降ったみたいに当たるため、避けるのは不可能であった。

 真の敵は魔物であるから、騎士団と戦う気はないためだ。

 わざとダメージ量を限りなく落としてあげたのだった。


「農民タケダとか言ったわね……覚えてなさい!」

「タケダ様、今のうちに逃げましょう」

「そうだな」


 シオンが一体なにがあったのかわからず困惑しているうちに、その場を去るとした。

 その光景を見ていた町の人は俺の強さに、どこぞの有名な冒険者なのかと噂をしていたのが耳に届いた。

 結果はこうなるのは当然であったのは、いくら剣術、魔法が使えないとはいえ、勇者であるから、この程度の差はある。

 誰も勇者だと知らなかっただけであったが、知っていたら、誰も戦いに挑まないのは確実。

 モチレインをしてシオンから距離を取った。







◇セレスタ国 城(三人称)


「国王、たった今入った情報です、シオン姫とその騎士団数十人が農民タケダと名のるものとと料理店前で争いになったと」

「ほう、農民タケダ?」

「農民タケダはキアラ姫を連れているらしいです」

「ほほほ、もうキアラ姫を捕まえたか。私がシオン姫にキアラ姫がいると教えたのだ。さすがに早いな」

「いえ……それが騎士団側が逆に何も出来ずに倒されてしまい、取り逃がしたという町の目撃情報です」

「なに! 騎士団数十人が何も出来ずに負けたと。そんなことがあるか。間違いだろう」

「農民タケダは、冒険者ランクはFランクとなっていますが、要注意でしょう」

「カナロアが言うなら信じよう」

「タケダめ……私に対する挑戦だな!」

「レーン姫、違うと思います」


 この経緯はすぐに城にいたフーリッシュ国王とレーン姫、カナロア騎士団長の耳に届いた。

 国王は騎士団の数十人が一度に倒された話に、にわかには信じられなかった。

 レーン姫はあのタケダがやったのを知り、余計にやる気が満ちているあたりは、カナロアが気にしていた。

 ハクサン国の騎士団数十人となると戦力はかなりのものになる。

 カナロアは騎士団長なのだから、それくらいの計算は想像できる。

 タケダの能力が考えていた以上に上だったのかと思わされる。

 

「タケダについて知ってる情報を言え」


 国王はタケダについてわからないのが嫌なので、カナロアに向かって言ったのを受けて、


「農民だと聞いてます。しかし農民が戦うはずない。恐らくは何かトラップを仕掛けたのかもしれません。騎士団を何らかの罠で一時的に足止めさせたと考えられます」

「つまりは実力はないが、小細工を使う農民てことか。目ざわりだな。シオン姫が不機嫌になったらハクサン国と対立する。それは困るぞ」

「タケダについては今後も調べます」


 タケダの情報が少なく、はっきりと強いのか断定できないでいた。

 

「農民なのに、私に挑戦するだけはある」

「レーン姫、馬鹿なことはお止めください」


 話を聞いていてもレーン姫は戦いたがる。


「レーンよ、お前は今回の戦いに参加するにしても、カナロアと一緒だそ、決して単独行動はするな」

「はい。お父様」

「レーン姫、お願いします」


 カナロア騎士団長が要注意人物に指定する。

 話を聞いていたはずのレーン姫は、タケダとの間で勝負をする話をしたので、父親のフーリッシュ国王は娘の言ってる意味がわからないし、また悪い癖がでたのかと心配した。






◇セレスタ国 王都付近(三人称)


 王都の付近では、騎士団の兵士が常に魔物が来た時の場合に備えて、報告をするように定められていた。

 危険がない日になるよう監視していた。

 草原は広がっていて、広大な面積に茂っていた地域に王都はあったため、周囲に魔物が来たら、直ぐに発見できる利点がある。

 一方で何もない草原は敵の魔物からは攻めやすい欠点もあった。

 騎士団は魔物の襲来に備えて、灯台を至急建造した。

 それはこれ以上の騎士団の犠牲者をなくすためである。

 交代で監視をしていた時に監視役の兵士が、遠方に魔物の影、それも大軍に近い数を発見した。


「おい、どうした?」

「大変だ、直ぐに報告をしないと魔物だ!」

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