『※33話 入国許可証を提示』
『※33話 入国許可証を提示』
◇上空
モチジェットは順調に飛行をし、方向は俺が出発前に世界地図を拝見させてもらい、セレスタ国の詳細な場所を把握していたから、モチジェットでの移動方向は適切な方向に向けて操作中であった。
「あら、下に馬車がいます。てことは……この方向で合っている」
「信じてくれ」
「信じろと言われても、どうやって飛行しているのか不明な乗り物に乗らされている身にもなってください」
「速いから良いだろう」
「そう言うことじゃない!」
途中でキアラは下を見ていた。
もちろんあまり見たくはないし、見ないつもりだったろう。
偶然にも見ていたから、地面を馬車が何代か走るのが見えたので、適当な方向に進んでいるわけではないのが確認されたと言うこと。
そうなると下を、下と言う言い方も変だが、地面を走る馬車からは一瞬だが、轟音とともにモチジェットが飛行し通過するのが目撃できていたはずだ。
しかしそれが何なのか、ただの見間違いなのか、幻覚現象なのか、頭が混乱した馬車の冒険者だったとしたら、悪いと思う。
冒険者達の馬車をあっさりと抜き去り飛行すると、幅の大きな川が前方に見えると、地図で確認していた川であるなと思った。
「川だ。国境線のある川と地図にあった」
「川を超えるとセレスタ国になるのよ。タケダ様、着地しましょう」
飛行を止めて、いったんは着地を提案したキアラ。
セレスタ国に入国するのだから、問題を起こさないためにも、着地してから入国許可証を提示しておくべきだと考えて言ったと聞こえた。
しかし俺はそう考えない。
「なぜ着地する」
「だって、受付嬢からも言われた、入国許可証を見せてくれと。タケダ様、ここは着地してください。そうしないと許可証を出せないです」
困ったキアラは俺に申し込む形で言ってくる。
飛行中ゆえに、言うのも難しいのに。
「そうです、ご主人様、飛行していたら、セレスタ国を通過しちゃう」
「入国許可証を提示したらいいのだろ、わかっているさ」
キアラとフェンリルにダメだと言われた俺は、入国許可証を出すと認めるも、その後、どう考えても速度は落ちていないし、着地する気があるのかと疑われる。
「あのータケダ様、全くもって速度は落ちてません!」
モチジェットの飛行速度はキアラの感じたとおり、一定で飛行していた。
このままでは国境のある川を超え、セレスタ国の領土に入るのは、確実となった。
にも関わらず俺は落ち着いていた。
こういう状況でも落ち着いて行動するのが一番で、絶対に慌てることはない。
「ご主人様、もう通過しちゃう!」
「ダメです、もう間に合わないです!」
「アイテムボックス、入国許可証」
川の上空を通過する直前にフェンリルとキアラは、絶望的な言葉を言った。
そんな絶望な言葉は俺の耳にもちゃんと届いていて、そこでアイテムボックスから入国許可証を取り出した。
入国許可証は俺、キアラ、フェンリルの三人分の許可証であり、手に持った。
「残念ですが、間に合いませんでした」
今頃出したところで、無駄に近いとキアラは残念に思う発言。
「アイテムボックス、モチガム」
「えっ、ここでモチガム?」
モチをアイテムボックスから取り出したモチガム。
すでにモチが柔らかく粘着性を増している形にしてあり、三人分の入国許可証をガムに付けておく。
入国許可証を飛行ている上空から、真下の川の辺り、セレスタ国の領土に入った場所に投げる。
モチガムは、投げると入国許可証の先の部分は真下の陸地にめがけて、凄まじい速度で伸びていく。
陸地まで途中で切れずに伸びてしまい、陸地にはセレスタ国の入国管理する警備兵士がいた。
誰も許可証無しでは通らせないとばかりに、剣、防具を身に着けて、立ちはだかるところ。
上から入国許可証が降りてきて、警備兵士の眼前に提示され、しっかりと入国許可証を提示し終えた。
再びモチガムを引き上げて、モチジェットまで取り戻した。
「えっ、ご主人様、まさか今ので入国許可証を提示したと言うの……嘘ですよね、そんな神業できるわけないもの。おかしいです!」
「しっかり提示した」
しっかりと提示したと断言した俺にフェンリルは、
「どうして、どうしてわかるの! 絶対にわかるわけない!」
「提示した。警備兵士がいる眼前に提示した」
嘘ではない、本当に俺の言った通りに、入国許可証は提示されていた。
警備兵士は確認していたが、警備兵士は何があったのか、まるで理解できないでいたのは、陸地にいる警備兵士の混乱ぶりから明らかであった。
上空から目視して確認している。
動体視力はこれでも、かなりいい方だから。
どこから、誰が、どうやって、入国許可証を提示したのか、それさえわからず、入国に成功した。
アイテムボックスに入国許可証を収納し、その顔には、全くあせりも、慌てる素振りもなく、やって当然といった風であった。
「ああ、タケダ様、どうか普通に振る舞ってください!」
「俺は普通にしてると思うが」
「普通じゃないです!」
俺の無茶にキアラはついていけないで、頭を抱えていた。
すでにセレスタ国の上空を飛行、王都にも直ぐ近くにまで来ていた。
地図で確認した時にこの辺りが王都だろうと予想している。
ちょうどいい感じに城壁に囲まれた町、王都であろう町が視界に入ったので、付近まで来てモチジェットを逆噴射し着地へ。
◇セレスタ国 王都
セレスタ国の王都には高い城壁があり、周囲をグルッと囲まれた形で、城塞都市であった。
ムイト国の王都と比べると、セレスタ国の城塞都市は規模が大きく、人口も多い、騎士団の数も圧倒的に多かったのが、町の外観で判断できる。
セレスタ国がムイト国よりも人口が多いからであり、大国らしい城がそびえていた。
不安だったのが、すでに王都が壊滅的なダメージを負っているのかと。
ミノタウロスや魔物に攻撃されて、人々は犠牲者になっていると思ったが、見たところまだ安全は保たれていたように思えた。
「ご主人様、もう馬車は到着しているのもある」
「緊急クエストが何日も前にも出されていたらしいな。キアラが見た時には、後半組の募集だったからだ」
「そうらしいです。あそこに馬車が集まってますから、行ってみたらどうかな」
「行ってみよう」
キアラが見た依頼のクエストは、何回目かの追加募集であったろう。
募集したところ、人数が足りないとなり、追加募集したのを受け付けをしたのと考えれば、先に到着している冒険者の姿があっても不思議はない。
余程のことがない限り、クエストの追加募集は行われないのが通例である。
今回のクエストは国家の非常事態にも近い危機感から、隣の国にまで応援を募集したようだ。
セレスタ国側からしたら、冒険者をムイト国から呼ぶのはそれだけ追加の資金がかかる。
報酬として多額の報酬を出すからで、それでも追加募集したのは、ミノタウロスの発見したという調査があったからに違いない。
セレスタ国はミノタウロスがなぜ出現したのかは、理由は不明としていた。
最悪の魔物でもあるから、緊急事態としたと思える。
すでに国内、特に王都付近には魔物が反乱しており、国の兵士である騎士団、騎士団とは国内の軍事力であって、国家の兵隊で、国のために防衛、遠征をする。
騎士団は王都だけでなく、国内の全てにおける人々を守るのが仕事なため、くまなく配置され、王都への配置が最も多い人数である。
その騎士団から犠牲者が多量に出たとなれば、フーリッシュ国王も安心はしていられない。
ムイト国からの応援冒険者の一団が到着すると、フーリッシュ国王が挨拶をしに姿を現した。
これは珍しい風景であって、平日は国王が自ら国民の前に現れるのはほとんどない。
それが現れるとなれば、いかにフーリッシュ国王が慌てているか、不安なのか、国家が滅びるのではないかまで、最悪考えていたからだ。
冒険者は国王を前に興奮しているのが俺にも伝わった。