『※28話 温泉』
『※28話 温泉』
◇温泉宿屋
男女別々ではなく、混浴風呂に入ると決まった、フェンリルはちょっと嫌ではあっても、もう決まったことなので、そのまま脱衣場へ。
脱衣場ではそれぞれの来てきた服を脱ぐわけで、俺が見ている前で、緊張して脱ぐのをためらってしまう。
俺が見たら服を着たまま風呂に入ると思えた。
「服を着たまま風呂に入るのか」
「い、い、いいえ、服を脱いで入る…………」
「それじゃ脱ぎなさい」
俺はフェンリルの裸を見るのに抵抗はなく、元魔王直属の幹部という認識であるから、女の子の裸を見ると考えていなかったわけで、早く脱ぎなさいと言った。
「ええええ! やっぱり服を着たまま入る…………」
「ワガママ言うな。尻尾を掴むぞ」
「ああああ!」
無理な注文に服を着たまま入ると言うと、フェンリルの尻尾は普段は服から出ている、もふもふとした尻尾を俺はぎゅっと掴んだ。
その瞬間に、フェンリルは思わず声を出してしまった。
尻尾はフェンリルにとって重要な器官で、普段は誰にも触らせることはない。
不容易に触ると、感情が変になる。
フェンリルは尻尾を触らせるのに耐えられないとなると、服を脱いで風呂に向かった。
「フェンリル、脱いじゃったわ…………」
「キアラもだ」
「はい…………た、た、タケダ様。向こうを向いててお願い…………」
フェンリルが先に服を脱いで行ってしまったわけで、残されたキアラは俺に脱ぐようにと言われると、フェンリルみたいに脱げないし、恥ずかしい、顔はすでに赤く染まる。
下を向きながら俺には、せめて向こうを向いていてと伝えるのが精一杯だった。
「向こうを。俺の背中が見たいのか?」
「そうです、お願いします」
向こうをと言われた俺は向き合うのではなく背中を見せろと言う風に解釈した。
なぜ自分の背中を見たいのかをと疑問に思っても、背中には何もない、当然にタトゥー的な絵も入ってはいない。
キアラが背中を見たい趣味なのかわからないが、仕方ないから振り向いて背中を見せた。
そうですと返事をし、俺が見ない状態になった時に、上着から脱いで、次に下着まで脱いのが鏡に映っていた。
フェンリルみたいに慌てて脱いだというよりも、ゆったりと脱いだ感じだった。
風呂場に入ると、湯気が充満し、ほとんど見えなくなる。
フェンリルとキアラの裸姿は見えずボヤケていた。
ボヤケていなくても俺は、じろじろと裸を見てはいないが、キアラは見られている意識は高かったから、湯につかり胸を隠した。
キアラの胸は湯に隠したとしても、大きすぎて浮いてしまい、浮力の影響もあり、隠したいが隠れないジレンマで、あまり隠すのも変な気もした。
フェンリルはまた尻尾を掴まれたらヤバいから、尻尾は湯の中につけておいた。
「気持ちいいだろう」
「はい、気持ちいいです。ちょっと熱いけど」
「温泉だから熱い。フェンリルはどう」
「熱いけど、もともと寒がりだから気持ちいい」
「体は温めるのはいいことだ」
寒がりなのは獣化するフェンリルは以前から寒さに弱かったらしい。
なるべく温かい地域を選んで、住んでいて、温泉は体が温まるから好きであったとか。
「この後はどうされますタケダ様」
キアラがスカイ町でのクエストを終えた後に、王都に帰るのかを伺った。
「王都に帰る。だがその前にベトベトを手でこねて、もんでいく。キアラには体を使ってベトベトをして欲しい。ベトベトは俺と一緒にやる。そして粘着させるがいいな」
「ベトベトの…………もんで…………一緒に、た、た、たタケダ様、な、な、な、何を言うの……」
この時、キアラに今後の予定を聞かれた俺はガイアドラゴンとの戦いでのモチ、岩を防ぐために使ったモチ、祝杯パーティーでみんなに食べてもらった分のモチ、の使用によりモチの個数は減少してた。
その減少分を補う必要があるため、コメからモチを作る過程のことを述べた。
ベトベトは正にモチのベトベトのことだったのに、言われたキアラはまたも赤くなっていた。
「嫌か」
「嫌ではありません」
断るのはタケダに失礼であるものとして言った。
「それならキアラ、頼む。直ぐに準備だ」
「直ぐに?! ここで?!」
タケダは温泉から出たら直ぐに準備をしたい、それはコメはまだ硬い精米された状態であるし、水につけておく時間もある。
それとコメを炊いて食べれる状態にしてからモチを作るので時間がかかるから、直ぐに準備をと言ったわけだ。
俺が湯を出て言った時、キアラも湯から出た。
キアラの体は、白く透き通るような肌に、果物のような柔らかく放漫な胸を揺らし、俺の背中を追うと、後ろから胸を背中にピタリとつけた。
「キアラ?」
「タケダ様…………お座りください…………」
突然のキアラの暴走な行為に俺は不思議に思っていた。
いきなり胸をつけてきたのか?
キアラは何か勘違いしてないか?
しかし座れと言うから、桶を置き桶の上にお尻をつけ座った。
まだ俺にはキアラが何を考えているのか、検討もつかないでいる。
キアラは覚悟を決め込んで、俺の座ったのを確認し、ベトベトをするため、自分の胸に石鹸で泡をたたせベトベトに背中に胸をこすり合わせる。
「何をしている?」
俺にはキアラが全くわからない。
何を思ってこの様なことを。
俺は頼んでもいない。
もしかしたら、ベトベトにするとかの話が影響しているのか。
体を綺麗に洗ってくれることを、やりだすので困った。
ハクサン国の第二姫であるキアラに、この様な行いをさせるのはいいのか。
体に石鹸でベトベトにしていくと俺の体は泡で包まれていく。
「タケダ様。ベトベトが足りませんか?」
足りませんかとはなんだ……とタケダは感じる。
キアラがモチの残りの個数が足りないのかを訊いたのだと思った。
それは間違いではなく実際にモチが不足してきていたが、それとこの体を洗う
のと何の繋がりがあるのか俺にはわからない。
「足りない。まだ全然足りない」
モチが足りない。
「はい…………もっと…………ベトベトします」
まだ足りないとモチの在庫の状況を説明した。
すると胸に泡をより多く出させ、背中を中心に洗ってきた。
「タケダ様…………もう限界です…………」
「限界…………これから始めるのだ」
「そんな……タケダ様、もう無理です」
俺からしたらモチの在庫分を作るのはこれから始めるので言った。
キアラは自分にはもう無理ですと良い、洗うのを終わりにした。
温泉から出た後は、ガイアドラゴンとの戦いの汗を流してさっぱりとしていた。
キアラにも体を綺麗にしてもらったのは予想外の出来事だったが。
クエストの依頼である町の保全は保たれ、安全な町に変わったから、もう長居する理由はなくなった。
「帰りましょう。王都のギルドも驚くはずです。ガイアドラゴンがいたのが理由だなんて知らないでしょうからね」
「依頼内容が違っていたのは、言っておこう」
「帰りは、ご主人様のモチジェット?」
「それが早い。アイテムボックス、モチジェット」
素早くアイテムボックスからモチジェットを取り出すと地面に置いた。
キアラとフェンリルを乗せ、出発にむけて俺も乗りこむと、スカイ町の受付嬢と民衆が待っていたらしく手を振る。
「タケダ、これもモチなのですか?」
受付嬢は不思議そうに特製の乗り物を見て言った。
「モチだ。モチを地面に発射してハクサン国へ飛行する。あと温泉は良かった」
「モチを……飛行?! 凄い能力ですこと、農民タケダの名前は一生忘れません。きっと町の歴史に残るでしょう」
「忘れ物がある」
重要なことを忘れていた。
「町に忘れ物ですか?」
「がけ崩れで壊れた家がある。修復しないと困る人もいるだろう」
「確かに壊れた家は多くあります。しかし町の大工職人が何ヶ月かかけて修復します」
「直ぐに修復できる。俺が修復する」
モチジェットから降りて言った。
大工職人だと時間がかかるので、それまで困るだろう。
俺の力で楽にさせたい。
「ええっ! 大工も出来るの?」
「ちょっとだけ時間をくれ」
俺は壊れた家の方に近づき、アイテムボックスを使用。
「アイテムボックス、モチハウス」
がけ崩れで壊れた家の部分にモチハウスを送る。
壊れた部分にモチが飛んでいき、あっという間に修復を終える。
これでこころおきなく帰れるな。
「本当に修復した!」
「農民タケダ、ありがとうございます!」
「農民タケダ、スカイ町の英雄だ!」
「出発する」
受付嬢は何がどうなっている風な顔をしていた。
民衆から手を振られてモチジェットを発射へとすすめる際に、タケダコールが呼ばれ続いた。
モチを地面に発射し、爆発させるるとジェット噴射ばりにモチジェットは上空に飛び立った。
民衆は腰を抜かして驚いていた。




