『※27話 コメ料理』
『※27話 コメ料理』
祝杯パーティーも終わりに差し掛かると、スカイ町の人にもコメ農家について知って欲しくなった。
他ならぬ俺のコメへのこだわりを、この町の人にもわかって欲しいからである。
先程会った料理人のところへ行くと、美味しい料理にお礼。
「料理人、とても肉料理は美味しかった」
「ありがとう」
「そこで俺から頼みがある」
「頼みが? どうぞ言ってください。町の英雄からの頼みなら何でも聞きます」
料理人は俺の突然の頼みも、素直に引き受けると言ってくれる。
モチを料理人の前に出してみせた。
「なんでしょうこれは。食材ですよね」
「コメから作ったモチだ。食材としても使えるし、ガイアドラゴンを倒して、岩を防いだのもモチだ。元はコメだから食べても美味い。祝杯パーティーの料理として出して欲しい」
「コメは町でも食べますが、モチを初めて見ました。けどコメが原料なら問題ないです、コメ料理もありますから、一緒にメニューにしてみます」
「お願いする」
俺の頼みはを受けた料理人は、モチを不思議そうに持って匂いを嗅いだり、触って確かめていて、どんな料理に使えるかを検討した。
料理人のいるキッチンから帰り、しばらくたった時に、料理人が新たなメニューを出してきた。
「皆さん、これはタケダが持ってきてくれたモチを、私が料理した一品です。どうぞお食べください」
料理人が作ったモチの料理は、モチを温めた後に、ガイアドラゴンの肉料理を挟んで、その上からもう一枚のモチを置くという料理で、肉料理をサンドしたものだった。
日本で言うなら、ハンバーガーのパンをモチに代えたと考えていいだろう。
ライスバーガーに近い出来栄えだった。
見たとこもない食材であったが、思いつきで創作したものだった。
■■■■モチバーガードラゴン肉■■■■
モチ
ガイアドラゴンの肉
トマトソース
「へえ〜〜、タケダのモチってあのガイアドラゴンを倒したモチだよな、食べれるのかな…………」
参加者は最初のうちは新たな一品に、怖かっていた。
ガイアドラゴンを倒したモチと知っていて、しかも見た目も白い四角い形で、見たこともないからだった。
余計に不安になるも、ひとりがモチのハンバーガーを手にして、とてもいい匂いがしたからで、一口食べたところ食べたこともない食感に満面の笑みとなった。
「これは美味い、絶品ですぞ!」
「本当か、俺も食べる…………うん、最高にいい!」
「モチの間に肉が挟まっていて、何とも言えない口当たりだ!」
「モチって、もちもちしていて美味いな!」
「モチは、コメ農家のタケダならではの発想だ!」
料理人の創作したモチのハンバーガーは、参加者の間で大絶賛され、俺も嬉しくなった。
特にスマッシュは何個も食べていたので、美味いのが伝わる。
「これは、タケダ様が考えたの……凄い美味いですよ」
「料理人に頼んだ。考えたのは料理人だ」
「こんどは私達でも試してみましょうよ。ご主人様の家で食べましょう」
「モチのこんな使い方があったとは俺も知らなかった。参考にしよう」
「スマッシュは食べ過ぎ!」
「だって美味いんだもん」
「だから太るのよ!」
「太る言うな!」
こうしてモチを使った料理は成功し、コメ農家の俺もコメが再評価してもらい、パーティーに出たかいがあった。
◇スカイ町
「タケダは直ぐに王都に帰るのですか。もし時間があるのなら、スカイ町の名物でもある温泉に立ち寄るのをおすすめしますよ。町に隣接した山は活火山で豊富な温泉を出すのです。温泉にぜひとも入り、ガイアドラゴンとの戦いの疲れを取るのとよろしいかと」
受付嬢が祝杯パーティーの終わりに俺へと温泉の情報を告げてくれる。
がけ崩れ以外は別にすることはなく、後は王都に帰るだけであった。
温泉もいいな。
「タケダ様。温泉はいいですね、ぜひとも入浴したいです。スカイ町に来ることも二度とあるか、わかりませんのでね」
温泉の情報を聞いたキアラは、即決で温泉に立ち寄るのに賛成した。
キアラは温泉が好きだし、それよりもパーティーで少しばかりお酒を飲んでテンションが上がっていたのもあった。
顔が赤い。
「温泉か。フェンリルはどうだい?」
「温泉は賛成、入浴しましょう。ドラゴンもいないことだし楽しみたいです」
「わかった、入浴としよう」
受付嬢から紹介された温泉のお店に立ち寄ると決まった。
そのお店は直ぐ近くにあって、店構えは温泉の看板があり、キアラが最初に入った。
「こんにちは」
「どうぞ、いらっしゃいませ、三名様ですね、あれ、もしかしてタケダ達ですか?」
「はい、タケダ様もいます」
温泉の店主の女性は、歳は30代であって、キアラにあいそよくした。
俺の活躍をすでに知っていた。
町の人は全員知っていて、店主としても突然の来客に感激している。
「どうぞこちらです。英雄であるタケダが来たのなら特別に、タケダの三名の貸し切り温泉にします。他のお客は入れませんので、三名様でごゆっくり」
「貸し切りでいいの?」
「もちろんです、タケダは町の英雄ですから、特別にします」
「ありがたいです」
店主は俺に対して最大級のもてなしをしたくなり、町をドラゴンから救った英雄なわけであるから、そんな人に安いサービスはしたくなかったよう。
貸し切りが一番のサービスだろうと思った。
俺の方は、特別に配慮をしなくても温泉に入れれば十分であったが、店主がすすめるのを断るのも変なので、ありがたく受け入れることにした。
「タケダ様。貸し切りて得した気分です」
「大きな温泉なら、尚さら得だろう」
入店して店主の女性に案内してもらうと、男女別の入り口があった、普通に男、女風呂の入り口である。
俺は男だから、男風呂に入る気であった。
「男と女風呂の両方があります、タケダは英雄なので女風呂の方にどうぞお入りください。本来は男と女風呂は別れてます」
「俺は女風呂に?」
店主から女風呂をすすめられたのは意外だった。
てっきり男女別の風呂だと思っていたし、普通に町にある温泉宿なんだから、混浴風呂は考えていなかった。
「た、た、た、タケダ様。タケダ様も女風呂に…………てことは混浴風呂てことかな」
「混浴風呂だろう」
「ええええ! やっぱり入りません」
まさかの混浴風呂でのもてなしにキアラは、声を上げてしまった。
俺と一緒に風呂に入るのが、恥ずかしいし、別々の風呂だと決め込んでいたからだった。
「ご主人様と一緒なら、私も入りません」
フェンリルも裸を見られるのに抵抗があった。
尻尾を掴まれた時から、俺に対して異常なまでに意識している。
風呂が好きなのだから、キアラとフェンリルが嫌がるのが不思議であった。
先程まであんなに風呂に入りたかったのだ。
むしろキアラの方から提案してきたのに、自分から拒否するのは変である。
店主が特別に貸し切りにしたのが失敗したかと、キアラとフェンリルの反応に考えてしまう場面も。
「すみません、やはり男女別々の方がよろしかったでしょうか…………」
「構いません。混浴風呂で」
「構いませんですって!」
「それでは、どうぞお楽しみを」
店主は俺から混浴風呂でいいと言われたのもあり、その場で姿を消した。
後はゆったりと湯を楽しんでくれたらと。
しかしキアラの心境はただごとではなかった。
俺が構いませんと言い切った点に、さらに顔が赤くなる。




