『※21話 空飛ぶ馬車に』
『※21話 空飛ぶ馬車に』
「待ってくれ、俺達は馬車は必要ない」
「なぜだよ、馬車が無ければスカイ町は遠過ぎる。それとも走って町まで行く気か?」
「あははははは、農民らしい発想だ」
「デブのくせに、ご主人様を馬鹿にするか!」
「デブじゃない、狼!」
トニックは馬車が要らないと言った俺を挑発した発言にスマッシュが大笑いした。
スマッシュに怒りを出すことはなく、むしろ無視した。
しかしフェンリルが代わりにケンカする。
「タケダ、馬車は必要です。スカイ町は徒歩で行ける距離の町ではなく、馬車でも数日かかる遠い町。トニックと一緒に馬車で移動してください」
「必要ない。スカイ町の場所が描かれた地図はあるか」
受付嬢が馬車を強くすすめる。
遠いいので俺のことを思っていたのもあったけど、ブレずに断りを入れ、尚かつ地図を要求した。
なぜそこまで馬車を使いたがらないのか不思議な受付嬢であったが、ムイト国の世界地図はあったので、俺の前に置いてみせる。
「地図ならありますけど……こちらがムイト国の世界地図。ここが今居る王都、そしてこちらが目的地のスカイ町です。遠いでしょ、納得しましたか」
「納得した」
地図を詳細に眺めて、スカイ町の位置、王都からの方角、王都からの距離、目印となるものがあるか、などを確認し終え、地図を受付嬢に返却し、納得の返事をした。
「やっぱり馬車で行くのね、タケダ様。受付嬢の言うことは間違いありませんから」
心配するキアラは俺がトニックと一緒に移動するのが嫌なのだろうと思ったのだろう。
「いや、馬車は要らない。外に出ればわかる。トニック、ダイア、スマッシュも出てくれ」
「タケダ様、まだ断る!」
「おいおい、お前と徒歩はごめんだぜ」
トニックは馬鹿にした言い方で言うと、ギルドの外に出ていく。
ギルドの外に出るとアイテムボックスを使用。
「アイテムボックス、モチジェット」
ギルドの外に集まった後に、アイテムボックスからモチジェットを取り出したら、初めて見るダイアは驚く。
「なにこれ!」
「モチジェットだ。コメから作った。これでスカイ町まで移動する。トニック達も乗ればわかる」
「コメから作った物に乗って移動? あははは、農民らしい発想だ。主食のひとつでもあるコメ、そのコメから馬車を作ったとは、笑わずにいられるかよ」
トニックは笑い我止まらず、腹を抱えて笑いだす。
ダイアも続けて笑っていても、俺は無表情で笑いはしなく真剣であった。
「モチジェットは馬車と比べて比較にならないほど速い。スカイ町との距離なら一瞬で到着する」
「本当かよ、タケダがそこまで言い切るのなら、乗ってやろう、ダイアとスマッシュも乗れよ」
馬車よりも速いの説明にトニックは挑発されたと思った。
そこでモチジェットに乗り込み、ダイア、スマッシュと乗ってみせる。
もちろん、トニックはこのモチジェットがコメから作られた物としか考えてない。
そもそもコメは食べるもの食材であって、それ以外の用途はない、と頭にあったし、ダイアとスマッシュもその点は同じで三人は馬鹿にしつつジェットに乗った。
「タケダ様、乗ります」
「ご主人様、乗ります」
「全員乗れるな。それじゃあ出発する」
「本気だぜ農民タケダは!」
「タケダ様の言うことを信じてませんねトニックは」
「信じるよ!」
「その言い方は信じてません。後悔しますよ!」
「こんな乗り物が動くか」
キアラとフェンリルを加えた人数でも乗れると出発するためのモチをジェットからモチを発射させる。
地面に爆発させるとモチジェットは凄まじい勢いとおもに地面から上空に発射。
モチジェットの飛行する距離、方角はあらかじめ地図で確認したから、距離感と方向感覚でモチジェットを飛行する。
受付嬢は口をポカンと開けて見上げていた。
「嘘だろ! 飛んでるぞ!」
「タケダ様を信じるきになったか! 肉を飛ばすな!」
スマッシュは生まれて初めて乗るモチジェットからが本当に動き出すとは考えていなかった。
しかも飛行するなんて想像を超えていて、絶叫する。
「きゃあーーーーー降ろせ!」
「もう遅いわよ。到着まで我慢!」
ダイアも同じ思いだった。
馬鹿にしていたモチジェットが平原や森の上を凄まじい速度で移動している現実に、頭が混乱して上空で絶叫した。
「……」
「ご主人様に謝罪しなさい」
「……」
「無視!」
トニックはあれ程までにタケダを馬鹿にしていたのに、いざ飛行した途端に、黙り込んでしまった。
案外、高所恐怖症なところもあったためで、モチジェットにしがみつき震えていた。
モチジェットはムイト国の上空を鳥よりも速く飛行。
吹き飛ばされないようにキアラはタケダの腕にしがみつく。
その際に大きな胸を腕に当てるも、恥ずかしいなど気にしていられないくらいに余裕はなかった。
フェンリルも腕に掴まり、必死に飛ばされるのを我慢した。
◇スカイ町
スカイ町の上空に差し掛かったあたり。
着地の準備を開始する。
出発前に見た地図の記憶から判断していた。
頭の中での距離感からこの辺りがスカイ町だろうと予想していいかな。
そして実際に予想通りの地点であったのは、距離感の正確さが証明された。
「着地する。揺れるから胸を付けろ」
「はい、タケダ様!」
「胸をご主人様に!」
着地する際は進行方向に向けて逆噴射すればいいので、前方にモチを発射した。
着地点に向けると、モチは地面に命中し爆裂したため、速度は一気に落ちる。
「うわあああああ、落下するぞ!」
「きゃあーーーーー落ちる!」
「……………………」
王都を飛行開始した時と同じ反応だった。
ダイアとスマッシュは絶叫し落下し死亡すると思った声。
実際に速度は飛行機並みかそれ以上の速度があるが、逆噴射したため速度は落ちて、スカイ町から少し離れた草原に着地した。
かかった時間はほんの僅かな時間である。
馬車なら何日もかかった距離なので、大幅な短縮に成功したのは、モチジェットのおかげと言えた。
最初から農民のパワーが発揮された形となった。
「おいトニックスカイ町に到着した……トニッ」
「…………」
着地した時にはトニックは気絶していて俺の問いかけに返事はなかった。
もしかしたら死んだのでは?
スマッシュとダイアはモチジェットから降りると足がガクガクと震えていた。
スカイ町は王都から離れた地域で、周囲は草原があるが、町を囲むような巨大な山があったのが、最初に目に入る。
あの山が崩れたらただでは済まないな。
依頼では山ががけ崩れを起こして、町に被害をだしているとのことで、山は急激な斜面があった。
町の大きさは王都と比べだら格段に小さな町の規模と言える。
のどかな農村部もあったし、人の人数は王都の比ではなく少ない。
「タケダ様、スカイ町は小さな町のようです」
「たぶん300人くらいの人の数だろう」
「山があります。あれががけ崩れのあった山でしょう。山のふもとには家が多く並んでいますが、危ないです」
「がけ崩れしていたら、家は潰れる」
「町に入りましょう」
「トニック、起きろ。置いていくぞ」
「ああっ、とんでもないなモチジェット。これが農民の移動方法なのかよ。早く言え」
「最初に言ったでしょ!」
トニックは気絶状態から目を覚ますと、モチジェットの危険さを身に染みて感じていた。
スカイ町の中に入ると、町の人は俺のことが町の外の人だと直ぐにわかって、キアラに声をかける。
「あの、あなた達は王都から来た方ですか?」
「はい。王都から来ました。がけ崩れがあるとのことで依頼を受けました」
「早い!」
「飛行してきましたから」
キアラが飛行と言うと意味不明になる。
「飛行?」
「はい」
「そうでしたか……町のギルドに来てください。そこで話をしましまょう」
待っていたかのようにキアラに話しかけた後に、冒険者ギルドへと向かった。
飛行については、キアラが頭がおかしいと思われたみたいだった。