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『※19話 田植え』

『※19話 田植え』



◇田んぼ


 俺が作った田んぼは見事な速さで完成し、ナエを植える作業を開始にまで至る。

 作業者はキアラとフェンリルにも手伝いをしてもらった。


「キアラ、フェンリル、田んぼの中に入るんだ。ナエを植える作業をする。初めに靴を脱いで入ること」

「はい、靴を脱ぐのですね」

「わぁっ、冷たいです」


 靴を脱いで田んぼの泥水の中に足を入れるとフェンリルは水が冷たいのを感じる。

 キアラも一緒に入り、三人で田んぼの水に足をつけると、俺はナエを数個手渡した。

 

「俺が最初にナエを植えるから見ていなさい」

「はい」


 俺が腰を下げて水の中にある泥の土にナエを植える作業をした。

 等間隔にナエを植えていくのを、じっと見守るキアラとフェンリル。

 

「俺と同じようにやるんだ」

「はい、タケダ様」


 まず最初にキアラが挑戦すると決まり、手にナエを持ち、土に植えていくのをやった。

 俺がしたように腰を曲げてナエを植える作業を開始。

 慣れないと姿勢で、キアラは苦労している。

 

「次にフェンリルだ」

「やってみます」


 フェンリルはキアラのを見ていて、自分でも簡単にできると思っていたが、やってみると難しく感じた。


「フェンリル、もっとお尻を上に上げてみなさい。その方が楽に植えられる」

「ええっ、お尻を上に上げたら……ご主人様、そんなに見ないでください……」

「見てないと植えられたかわからないだろう」

「そんなに見られたら恥ずかしいです」


 俺に向けて自分のお尻を上に上げる作業は、魔王直属のフェンリルにとったら恥ずかしい姿勢であるようだ。

 ずっと見ていると余計に意識してしまい、顔は赤くなっていた。

 しっかりとナエを植えられているかを確認しているだけであったのだが。


「腰をもっと曲げてお尻を上げてみなさい」


 あまりにも上手くないフェンリルの田植えに見ているのも辛くなり、指導が必要だと思った。

 そこでフェンリルに近づき、彼女の背後からお尻を持ち、正しい姿勢を教えるつもりだった。


「あああっ!」


 お尻を触った瞬間にフェンリルははっとして声を出した。

 自分のお尻に触れているのを感じたからだった。



「男性の手が自分のお尻に触れているのを考えてみたら、不思議な気分になっている。

過去に自分のお尻に手を置ける魔物、魔族などいなくて、魔王ハデスなら許せたとしてもハデスがお尻を触るなどするわけもないです。声を出したくはなかったのに、声が勝手に漏れてしまう」 

「ほら、もう少しお尻を上にしてごらん。その方が、楽な姿勢になる」


 体が硬直してお尻を上にさせようとフェンリルのために手を貸した。

 フェンリルが苦しいから声を出したのだろうと聞こえ、お尻を上にした方が楽になるのを教えるため、再びお尻に手を置いて、グイッと上に持ち上げた。

 これもフェンリルの体や腰の負担を考えてのこと。

 経験者である俺の思いやりだ。

 しかしその思いやりがフェンリルに逆だったか?


「あああっ!」

「頑張れ」


 タケダの親切な手にフェンリルは声を漏らし、俺の方に顔をそっと向ける。

 顔は赤く染まっていて、とてもナエを植えられる心理状態ではないか?

 やっとの思いでナエを土に植えていった。


「キアラもナエを植えるんだ。こうして下にかがみながらやると楽だ」


 フェンリルと同じようにキアラにもお尻を持ち上げて作業するように指導をしたところ。


「た、た、タケダ様……ああ……」

「キアラも頑張れ」


 頑張れと励ましを言ってもキアラには逆に気分が高まったかわからない。

 俺の手に顔は真っ赤になっていて、ナエを必死に植えるのもやっとだった。

 田んぼはあまりにも広大なため全部にナエを植えるのは不可能である。

 暇なときにナエを植えるのが適当だろうと考える。

 それから長い時間、仕事をした。

 俺も手伝いながらキアラとフェンリルにも頑張ってもらいナエを植える農作業の仕事をした。

 農作業の大変さと重労働なのは仕事をしてみたわかるもの。

 

「ご主人様のことを今まで以上に偉大な人だと考えました」


 農作業を始めてから日は暮れてきて、夕日が空をオレンジ色にした頃にそろそろ終わりにしようかと思う。


「よし、キアラ、フェンリル、今日の農作業はここまでにしようか。かなりナエを植えられた」

「やっと終わりですね。とても疲れました」


 額には大粒の汗をかいて、髪も濡れていたキアラは、大変に疲れていた。

 終わってみてナエが植えられた風景に満足感を得ているようだった。


「ご主人様、もう植えるのは無理です。お腹も空きました」

「そうだろう。これだけ働けば食べたくなる。家に帰ったら食事にしよう」

「働く……これが働くというものなのですね。ご主人様に会い初めて働くのを知りました。魔王ハデス様の時は、従うしかなかった。しかしナエを植えるのは従うのではなく、自分から植えたいと思いました」


 働くという概念がない魔族のフェンリルは、生まれて初めて働くのを経験したと言った。

 そうなると今日は充実した日を送ったわけで、俺に出会い、魔族であっても働けると証明した日になった。


「それが農業だ。働くとその分、農作物として帰ってくる。今日の頑張った分の喜びは後になってやってくる。さぁ帰ろう」

「はいご主人様」


 ムイト国の王都からやや離れた地域に自分の農作物を収穫すべく広大な農地を作った。

 少しずつではあるが、田植えをした。







◇タケダの家


 日が暮れて王都に帰った後はモチハウスの家にそのまま帰り、晩ご飯の準備に取り掛かった。

 その日もモチやコメを中心に食卓に並べられる。

 大変な長い時間労働をしたので、ご飯の進む量が早く、テーブルの皿は綺麗になっていたので、正しいことをしたと思えた。

 キアラとフェンリルは、お互いに頑張って働いた仲となり、笑顔が絶えないのは微笑ましい。







◇ムイト国 城(三人称)


 タケダは喜んでいると、考えているのと逆の事態も起きつつあって、それは翌日のことだった。

 城でゆっくりと朝の清々しい朝日を浴びるミネイロ国王に、兵士が慌ただしく寄り報告に来た。


「大変ですミネイロ国王」

「どうしたのだ」

「王都の周辺に異常があったと報告がありました」


 兵士はミネイロ国王に膝をついて話す。


「どんな報告だ」

「周辺の平原地域に、一日で広大な土地の農作地が生まれたとの報告です。とても人の出来る技ではないと。面積でいうと、王都が軽く入ってしまう程の大きさでして、一日前には全く無かったのに一日で生まれたらしいです。あり得ません!」

「たった一日で王都よりも大きな農作地が出来ただと! そんな馬鹿な話があるか! 本当なら敵国の仕掛けたものか。それとも魔物、魔族が関係しているとか……直ぐに騎士団を向かわわせて調査をしろ!」

「はい、調査団に調査させます」


 城に報告があったのは朝であって、偶然に発見した。

 直ぐにミネイロ国王の耳に届き、ミネイロ国王はその話の内容の異常さに恐怖すら感じる。

 直ぐに調査を依頼したが、調査結果が来るまで気味が悪かった。

 もちろんタケダが少しの時間で作った農作地だとは、国王も騎士団も知らない。

 ムイト国は大混乱となったものの、タケダ本人は至って普通に朝ご飯の準備をし、温かい飲み物を飲んでいた。

 神にも匹敵する行いに、気づかないあたりはタケダのどんな時にも慌てない性格がよく現れていた。

 慌てない性格なのはタケダの良い所でもあり勇者時代には魔王城に行っても、決して慌てずにハデスまでたどり着いた。

 慌てる性格だったら、ハデスまでたどり着けなかった。

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