『※15話 お風呂を作る』
『※15話 お風呂を作る』
グリーンスライムに大苦戦中のキアラは、俺のみつめる中、剣を振り続けたが、明らかに効果は得られないとわかる。
形は良いのに、全くダメな結果に。
指導した騎士団の人は、これを見たらがっくりするだろう。
この世界にはビデオ録画システムはないため、キアラの戦いぶりはおみせ出来ないのが、せめてもの救い。
「キアラ、キミの戦いぶりはわかった。十分にわかった。下がっていてくれ。次はフェンリルの番だ」
「残念に見てます?」
「見てない」
キアラは後ろに下げる。
「フェンリル」
「はい」
キアラは体力の消耗から苦しいと考えて、後ろに控える。
フェンリルと交代させる指示をだし、フェンリルは勢い良く飛び出した。
グリーンスライムに対して拳での打撃と蹴りをした。
さすがは元魔王幹部のひとりである。
迫力のある攻撃であった。
グリーンスライム数匹を瞬殺した。
恐らく今の一撃を見切れる者は少ないだろう。
キアラは何が起きたかわかっていない。
「いつの間にかグリーンスライムが倒されてる!」
「フェンリルの爪だ」
「速い!」
さらにグリーンスライムは迫った来たところを、爪で引き裂いた。
グリーンスライムの魔石が転がる。
無傷であるフェンリルに俺は安心感を得た。
格が違うとはこの事だろうが、対してキアラは悔しがっている。
「悔しい!」
「仕方ない。フェンリルは元が違う。キアラはこれから経験を積めばいい」
「まだ、戦えます!」
「あっ待て……」
俺が止めようとしたが、キアラはグリーンスライムの群れの中に飛び込んで行った。
無茶な戦いぶりだ。
自分のレベルを考えない無謀な行為。
キアラは必死に剣をグリーンスライムに振った。
グリーンスライムはダメージはあるものの、完全に倒すにはならず。
むしろグリーンスライムから攻撃を逆に受ける結果に。
キアラの体はジェル状の攻撃を受けると、頭からジェルでベッチャリとなった。
ダメージはないが、動きを遅くする効果だろう。
体全体に次々とジェルを巻かれてしまう。
これを見たフェンリルはキアラを救出に行くも、キアラが抱きついてきたから、フェンリルの体にもグリーンスライムのジェル状の塊がまとわり付く。
体がグリーンスライムの粘液でベトベトになり、見動きが取れなくなる最悪の展開になった。
さらにグリーンスライムが寄ってきて、体に吸い付く。
吸い付くことで体力を吸い取られる。
「ご主人様、ヤバイです…………」
「タケダ様…………私もグリーンスライムが体に吸いついてきて、取れません。これ苦手です」
二人ともグリーンスライムの餌食となり、防具の上ではあるが、何匹ものグリーンスライムが吸いついていて、大きく肩を落とすしかなかった。
フェンリルの能力からして、簡単に逃れられそうだが、このジェルが苦手らしい。
ジェルが弱点なのでキアラと一緒に苦戦。
いくら弱い魔物とはいえ、ずっとこのままにしていたらキアラとフェンリルの体力は減少してしまうから、俺が手を貸すしか、この場を切り抜ける方法はなかったため、仕方なく応援するとした。
「アイテムボックス、モチブラスト」
アイテムボックスからモチブラストを発射とした。
グリーンスライムはキアラとフェンリルの体にまとわり付いているため、強いダメージでは彼女らごと吹き飛ばしてしまうため、手から発射の力を最大限にまで落とし最小で発射した。
モチブラストは複数個、連射されてキアラの体にあるグリーンスライムに命中。
液体状のスライムは分断されて吹き飛んでいき、フェンリルのスライムも同じように吹き飛ばしてしまうと、フェンリルとキアラは疲れていた。
「ありがとうございますタケダ様」
「さすがご主人様です。まさかグリーンスライムに苦戦するとは……元魔王幹部なのに情けない」
「キアラは液体のスライムはある程度のダメージを与えれば怖い魔物ではないが、攻撃力が足りないから、液体状を分解まで出来なかったのだろう。もう少し攻撃力を上げる必要がある」
「悔しい……」
「スライムごときに……」
「フェンリルはジェルを克服しないとな」
予想していたよりも攻撃力が弱く、魔物を倒しきるまで難しいと判断するしかなかったので手を貸したわけだ。
今後は自立して欲しいと思ったのは、魔王直属クラスの魔物が現れて、魔王のペンダントを探しに来られ、出会ったら非常に困難な状況になるのは想像できた。
「これは……丸い玉がある」
「魔物の魔石だ。魔物は倒され死んだ際に、魔石を残す。グリーンスライムの魔石だが、ギルドに持ち帰ると報酬を貰える。それに魔物の部位を持ち帰ると、さらに報酬は上がる」
「タケダ様、持ち帰りましょう」
「アイテムボックスがあるから、俺が運べばいい。報酬はキアラ無しだが」
「報酬欲しい!」
俺がグリーンスライムの残した魔石を貰い受け、アイテムボックスにしまった。
経験値はキアラに入ることはなく、あまり経験にはならないクエストとなった。
◇冒険者ギルド
「お帰りなさいタケダ、早かったですね」
「魔石と部位の報酬交換を頼む」
「ありがとうございます」
受付嬢はグリーンスライムの魔石と部位を鑑定し、確認が取れると報酬分のお金を支払った。
フェンリルはともかく、キアラの最初の冒険は終えたは終えたが、成果はあまりいい成果とは言えないし、経験値も積むとは言えず、今後の課題を大きく残した結果に。
冒険と並行して彼女らを鍛える必要もあると考える。
◇家
「タケダ様、今日は疲れました。初めての魔物との戦い。想像以上に大変でした」
「騎士団の団長から教えられたのだから、基礎は出来ている。後は経験を積むのが一番だろう。魔王直属らがいつ攻めて来るかわからないので、キアラのレベルを上げておこう」
「ご主人様、私も悲惨でした。まさかスライムごときに苦戦する時がくるとは思いませんでした」
「フェンリルは仕方ない。ただ戦いの経験は豊富なわけだし、グリーンスライムが苦手だっただけだ。ステータスが下がったのは再びステータスを上げればいい」
「はいご主人様」
二人とも苦戦したのを今後の経験に活かすと約束したのはいいが、キアラは別の問題を抱えている。
「タケダ様、申し訳ないのですが、問題があります」
「なんだ?」
「このグリーンスライムの残骸が、まだ体に付いていて、液体状のがベトベトして気持ちが悪いの。どうしたら取れますかね」
「私もですご主人様。体がベトベト」
よく見るとキアラとフェンリルの防具の上から、ジェル状の液体が大量に付着していた。
透明の粘液だった。
モチブラストで弾け飛ばしたの完全に取れていなかったのが、気持ち悪いらしい。
簡単なのは水かお湯で洗い流すのが早いだろう。
「付着したのは洗い流すのがベスト」
「お風呂……タケダ様の家にお風呂はありますか。城にはお風呂がありましたが、モチで建造した家には無理かな」
「お風呂か……」
「王都にあるお風呂屋に行きます」
キアラは簡単にモチ作り技術で建造した家にお風呂を求めるのは酷だろうと考えているらしい。
普通に考えたら、王都にある風呂屋に行けばいいと思い、俺に迷惑をかけたくない考えの発言だった。
「外の風呂屋に行く必要はない。作ればいい」
「ええっ、タケダ様は、お風呂まで作れると言うの。難しいと思う……」
「ご主人様とは言え、無理なのは無理と認めてください」
二人とも俺に迷惑掛けたくないのが伝わったが、逆に俺に失礼だった。
「難しい話ではない。さっそく作ろうか。二人ともモチを出すので下がっていなさい。アイテムボックス、モチバスルーム」
家の中の広いスペースにモチを投げる準備をし、家の何もない箇所に向け、モチバスルームを発射した。
モチがいつものようにスペースに着地し四角い箱の形が形成されていく。
風呂箱の形で、さらに周りには壁も作られて、バスルーム風に。
たった数分て作られ俺的にはイメージ通りにできたと思った。
「タケダ様。これは風呂です! でもモチが並べてあり、高く積まれて出来たお風呂だと熱湯にモチが濡れてベトベトになって使い物にならないと思う」
「大丈夫だ。モチは水、お湯に耐性を持たせたモチである。100度のお湯に濡れてもベトベトしない」
農作業技術から作ったモチは水、熱湯耐性があり、耐久度は何度も使えるように何百回と叩いて粘着性を強めて固められてある。
よって熱湯や冷水を入れても、機能は損なわれることはなく、お風呂を楽しめるわけだ。
「しかし問題はどうやってお湯を中にいれるのです。お湯が無ければお風呂ではないですご主人様」
「お風呂の湯は、問題ない。入ってみろフェンリル」
「入ればいいのかしら……お湯はないのに」
魔族であるフェンリルにも風呂は知っているようだ。
「山には温泉もあり好きで入浴していたから、湯がないのに入れと言うのを変に思います」
「アイテムボックスから水を出す、入れるぞ」
「……わぁっ、ご、ご、ご主人様、冷たい!」
アイテムボックスにはお風呂で使用出来る量の水が収納してあった。
モチバスルームに注いだのは良いが、さすがにフェンリルは冷たい水に驚く。
「タケダ様。このままではフェンリルが冷た過ぎます!」
「少し待て。アイテムボックス、モチホット。このモチは超高温に熱してある状態でアイテムボックスに入れてあった。この高温のモチを冷水に入れる」
「うわぁああああああ!」
アイテムボックスから出したのは超高温に熱してあるモチだった。
フェンリルに当たるとヤケドしてしまうため、離れた位置に落としたところ、直ちに冷水は一気に熱っせられた。
沸騰するみたいに熱湯になり、熱いお風呂のお湯に変化したので、フェンリルはびっくりしていた。
「熱いです! まるで温泉みたいです!」
「熱い湯にいつでも入れる。周囲は熱湯耐性してある」
「す、凄い、お風呂ですが、ご主人様、私の服がずぶ濡れです」
熱湯にするために高温のモチを冷水に投入したのは、日本では鍋に熱い石を入れて、熱くしたまま食べる。
あの石と同じ原理であった。
冷水を一気に熱したのは良かったが、フェンリルは何も知らずに服を着たままであったため、お湯で服がずぶ濡れになっていた。
「ずぶ濡れまでは計算していなかった。どうせグリーンスライムの粘液を落とすのだろう、ちょうど良かっただろ。キアラも入りなさい」
「は、は、は、入りなさいてことは、タケダ様の前で服を脱ぐてこと……ですよね」
「普通、お風呂に入る時は脱ぐだろう。それとも国王級の城のお風呂は、着たまま入浴か」
「ち、違います……む、向こうを向いて欲しいなと…………恥ずかしいから」
キアラは俺の前で裸になるのが恥ずかしく、なかなか脱げないので、顔は赤く変色したいた。
すでにモチ作りの時などに、何度も服を脱いでいるのだが。
下を向いて見ないでと言った。
俺はグリーンスライムの粘液をどうやって落とすかしか考えていなかった。
仕方なくキアラの逆の方に顔を向けることにした。
キアラとフェンリルは熱い湯に入り、グリーンスライムの粘液を丁寧に落としてた。
「国王級のお風呂がいつものお風呂であって、まるでプールのような面積の温泉に入っていた毎日に比べると、圧倒的に狭いお風呂であっても楽しい」
「それって俺のモチバスルームを比較して見劣りしていると聞こえるが」
「はい、見劣りします」
「はっきり言うな」
キアラは見劣りすると言ったが、確かにそうなのだろう。
国王級の風呂と比較したら、どの風呂も見劣りするに決まっている。
それに俺の癒えに必要ではないのもある。
「タケダ様、とてもいい湯でした。綺麗にグリーンスライムの粘液は落ちました」
「スライムの粘液より俺の粘着は強力だから、落とすのに苦労する」
「タケダ様……の粘液……!?」
キアラは髪はまだ濡れていて、肌は粘液はなくなってちいた。
元のすべすべのキアラの体に戻る。
「ご主人様の作られたバスルームは素晴らしい。尻尾までご覧の通り綺麗になった。どうぞ触ってみてください」
「乾いている」
「ああっ……そんなに強く……」
フェンリルは自分の尻尾を乾いているのを確認させるため俺の方に尻尾を差し出した。
ふさふさした尻尾を軽く確かめようにして触ると、言われたとおりに乾いていて、毛の感触は良かった。
触った瞬間にフェンリルは強くにぎられ、思わず声を漏らした。
コメを元にしたモチでバスルームを作り、キアラとフェンリルの体は綺麗になっていた。